補償範囲が広く、保険料が手軽なことなどから、自転車事故への備えとしてもおすすめされることの多い個人賠償責任保険。「すすめられたから……」ではなく、しっかりと内容を把握することで、自分にとって本当に必要かどうかの判断がしやすくなります。そこで今回は、個人賠償責任保険についてさらに詳しくご紹介していきましょう。

個人賠償責任保険で備えられること・備えられないこと

「個人賠償責任保険」とは、自転車事故に限らず、日常生活のなかで他人の身体やモノに損害を与え、法律上の損害賠償責任を負った場合に備える保険です。

現在、兵庫県をはじめ、各自治体で自転車保険への加入義務化が進んでいます。義務化されているのは「他人への損害賠償補償」に関してなので、自転車保険にわざわざ加入しなくても、個人賠償保険に加入することでも備えることができます。

賠償限度額については、もちろん無制限であれば安心ですが、これまでの自転車事故での賠償事例などを考えると、1億円を最低基準として考えるといいでしょう。

個人賠償責任保険が補償するのは他人への損害に対してです。ただし、人から借りているモノや業務上の損害、同居親族への損害などについては補償対象外なので、注意が必要です。また、自分自身のケガや入院に備えることもできません。自分への備えについては、医療保険や傷害保険で別途備えるか、保険へは加入はせずに貯蓄で備えるか、といった判断も必要になります。

1人が入れば家族みんなが安心! 補償対象を確認

個人賠償責任保険は、

  • 保険契約者本人、配偶者、本人または配偶者と生計を一にする同居の親族
  • 生計を一にする別居の未婚の子

がその補償対象となります。

つまり、家族のうち1人が個人賠償責任保険に加入すれば、基本的には家族全員が補償されます。

  • 個人賠償責任保険の補償範囲

一部の保険会社では、認知症の親を介護する別居の子を補償対象としたり、同性パートナーを配偶者として補償対象に含めたりするなど、対象となる人の範囲を拡大しています。保険会社によって対象範囲が異なる場合があるので、確認が必要です。

自転車保険の場合、その補償は基本的には契約者本人に限られます。家族全員が加入する場合、それぞれが加入するか、家族型の保険に加入することになります。その点、個人賠償責任保険では、1つの契約で家族全員分の備えができるので、保険料の負担や管理の手間が軽くなる場合が多いと言えます。

もうすでに加入済みかも!? 重複加入に要注意

個人賠償責任保険は、自動車保険や火災保険、傷害保険などの特約として付帯するのが一般的です。そのため、すでに加入していることを知らずに、重複して加入するケースが多くあります。損害保険会社の多くは、パンフレットやホームページなどでも重複加入について注意を促しています。

先に述べたように、個人賠償責任保険は1契約で家族全員分の備えができる保険です。そのため、重複加入していないかの確認は、自分が加入している保険だけではなく、家族全員の加入保険を確認する必要があります。

では、もし、重複加入していた場合はどうなるのでしょうか。

例えば、補償限度額が1億円の個人賠償責任保険に重複して2本加入していたとします。賠償額が1,000万円の場合、それぞれから1,000万円の保険金が支払われるわけではありません。損害保険は実損払いを基本としているため、損害額を超えて保険金を受け取ることはできないからです。つまり、1本だけの加入でも、2本重複して加入していた場合も受取額は同じ1,000万円ということになります。

重複加入している場合、

  • 補償限度額
  • 示談代行サービスの有無
  • 主契約保険の加入継続性

などを比較検討した上で、加入内容を見直しましょう。

個人賠償責任保険は、保険料が割安なこと、特約として付帯することが一般的であることなどから、知らずに重複加入しがちです。割安とはいえ、大切なお金を必要のない保険に使うことは避けたいですよね。まずは、家族全員の保険加入内容を確認することから始めましょう。

これまで、自転車事故への備え方について、いろいろとご紹介してきました。次回は、ケース別の自分に合った補償の選び方についてご紹介します。

筆者プロフィール: 長谷部敦子

ラーゴムデザイン代表 長谷部敦子 ファイナンシャルプランナー、マスターライフオーガナイザー、メンタルオーガナイザー。父親の看取り介護、自身の結婚を通して、「心」と「お金」の整え方を知ることの必要性を感じ、学びを深める。2012年・2014年の出産を経て、2015年に「しなやかな生き方をデザインする」をコンセプトに起業。家計・起業・扶養などに関わるお金の悩みや、働きたい女性のメンタルについての相談・講師業を中心に活動。働く母の目線で、日々のくらしを快適にする仕組みづくりについての執筆も行っている。「生き方デザイン.com」