病院に行くほどではないけれど、日常生活に支障をきたすさまざまな不調。例えば、冷え性や肩こり、腰痛に眼精疲労など、程度の差こそあれ、これらの症状に悩んでいるという方は多いのではないでしょうか。しかし、そんな不調も入浴時のちょっとしたポイントに気を付けるだけで改善できる可能性があるのだそうです。
今回は、それぞれの不調を改善する入浴時のコツを、温泉療法専門医の早坂信哉先生に教わりました。
冷え対策に熱いお湯はNG!
特に女性に多い「冷え性」。冬場などは手足の先まで冷えきって、アツアツのお湯に浸かりたくなりますよね。しかし実は、熱すぎるお湯に浸かることは冷え性にとっては逆効果なのだとか。
「人間の身体は急に体温が上がると、汗をたくさんかいて急速に体温を下げようとします。結果として、時間が経てば体温は下がっていくので、冷えの症状は改善しません。そこで、冷え対策には40~41℃程度のお湯に10分間浸かることをオススメしています。入浴直後に関して言えば、42℃以上のお湯に浸かった場合のほうが体温は高くなります。しかし、1時間後には、41℃のお湯に浸かった場合のほうが、身体がより温かい状態に保たれているのです」(早坂氏)
肩こりには「40℃のお湯に10分」がオススメ
パソコンを用いた長時間のデスクワークを強いられることも多い現代人が、どうしても慢性的に悩まされがちな「肩こり」。筋肉の緊張で血流が悪くなることが主な原因ですが、精神的なストレスによって引き起こされる場合もあります。
「肩や首のこりに悩む方は、まずしっかり肩までお湯に浸かって温めて、緊張した筋肉に血液を巡らせることが大切です。お湯の中で肩や首をゆっくり回したり、硬くなった場所を温めたりしながらゆっくりほぐすのも効果的です。お湯の温度は40℃、時間は10分がベスト。ぬるめのお湯にじっくり浸かることで副交感神経が優位になり、心身がリラックスして緊張をゆるめることができます」(早坂氏)
腰痛には温熱効果&浮力効果がダブルで効く
日本人の8割が経験するという「腰痛」は、立ち仕事の方も座り仕事の方も発症しやすい生活習慣病のようなもの。“腰は身体の要”とも言われるように、痛みが続くと大きなストレスになってしまいます。
「腰痛にはさまざまな原因がありますが、筋肉の緊張が続くと発症するケースが多いようです。お風呂の温熱効果で血流が良くなれば、筋肉疲労が取れて症状が緩和します。また、お風呂の中では、浮力効果によって腰にかかる負担が劇的に減ることも、症状の改善に役立つ理由のひとつ。リラックスして、40℃のお湯に15分ほど入ってください」(早坂氏)
目の周囲の血流をアップさせて眼精疲労を軽減
いまや私たちの生活に欠かせないパソコンやスマホ。仕事中はもちろん、移動中もスマホをいじりっぱなしの方も多いはず。そのため、目の疲れ(眼精疲労)を訴える方が近年急増しているそうです。夕方になると目がかすむ、なんてことはありませんか?
「眼精疲労の原因のひとつは、目の周囲の血流が滞ること。38℃~40℃のお風呂に15分ほどゆっくり浸かりながら、蒸しタオルなどを目に当てて温め、目の周囲をマッサージしましょう。血流をアップさせ、疲労物質を取り除くことができます。または、42℃程度の熱めのシャワーを目の周囲に当てるのも効果的で、疲れ目によって一時的に落ちた視力が回復するという声もあります。もうひとつの工夫は、入浴中の照明を優しいものにすること。浴室の照明を目に優しい電球色(オレンジ色)に変えてみたり、浴室の電気は消して、脱衣所の明かりだけで入浴したりするのもオススメです」(早坂氏)
どれもすぐに実践できそうな手軽な方法ばかり。ぜひお試しください!
次回は、「低血圧・加齢臭・二日酔い」に効く朝風呂の入り方をご紹介します。
監修者
早坂信哉 (はやさか しんや)
東京都市大学人間科学部教授、医師、博士(医学)、温泉療法専門医。
お風呂を医学的に研究している第一人者。「世界一受けたい授業」「チコちゃんに叱られる!」など多数のメディアに出演。著書に『たった1℃が体を変える ほんとうに健康になる入浴法』(KADOKAWA)、『入浴検定公式テキスト』(日本入浴協会)、『最高の入浴法 ~お風呂研究20年、3万人を調査した医師が考案』(大和書房)など。