朝の目覚めは爽快ですか? たくさん眠ったはずなのに、なんだか疲れが取れない。起きた瞬間から、もう身体がだるくて重い……そのような経験はないでしょうか?

そんな「寝ても取れない疲れ」も「正しい入浴法で解消できます」と話すのは、温泉療法専門医の早坂信哉先生。今回は、お風呂に入ることで疲労が回復するメカニズムを教わりました。

  • 正しいお風呂の入り方、知っていますか?(写真:マイナビニュース)

    正しいお風呂の入り方、知っていますか?

疲労回復のポイントは3つ

「疲れを取るために大切なのは『血液循環』と『自律神経』と『睡眠』。このどれもがお風呂と密接な関係があります。シャワーだけでは血液の巡りが良くならず、血液の持つ『老廃物を回収して酸素や栄養を全身に運ぶ』という働きが鈍くなってしまいます。また、自律神経には、身体の積極的な活動を担う“交感神経”と、身体の修復やリラックス効果を司る“副交感神経”がありますが、入浴によってこのスイッチをうまく切り替えることができます。そして、自律神経が“副交感神経”に切り替わり、入浴によって一旦上がった体温が下がっていくタイミングで就寝することで質の良い睡眠が得られ、疲労回復につながるのです」と早坂氏。

一番大切なのは、毎日湯船に浸かること。しかし、自己流で間違った入り方をしてしまうと、睡眠の質が下がり、より疲れを溜めることにもなりかねないので注意が必要です。

疲れを取るための正しいお風呂の入り方は、次の5つのルールを参考にしましょう。

疲れが取れる入浴法 5つのルール

1. 温度は40℃
40℃は少しぬるいと感じるぐらいかもしれませんが、ヒートショック(急激な温度差により血圧が大きく変動することで身体への悪影響を及ぼすこと)やのぼせのリスクが低く、なおかつ十分に身体が温まって疲労回復にもつながる温度です。

2. 肩までしっかり浸かる
「半身浴」がかつてブームにもなりましたが、それではせっかくの温浴効果も半減してしまいます。まず、かけ湯をしてから、しっかりと肩まで浸かる「全身浴」で身体の隅まで血液を送りましょう。

3. 浸かる時間は10~15分でOK!
お風呂に浸かる時間は、顔や額が汗ばんでくるぐらいが目安です。我慢して長く入る必要はありません。10~15分なら心身の負担も少なく、ちゃんと身体も温まります。

4. 入浴剤でリラックス
硫酸ナトリウムが含まれているものや、泡が出る炭酸系の入浴剤なら、より血行が促進されます。柚子や菖蒲(しょうぶ)など、旬の草花を入れる“季節湯”にもリラックス効果があります。

5. 出たら身体を冷やさない
お風呂から上がったら早めに水分を拭き取って、毛布や布団にくるまりましょう。温熱効果を逃がさないようにすれば、血流の良い状態が持続します。

ほかに気を付けたいのは、しっかり「水分補給」をすること。実は、1回の入浴で約500mLもの水分が汗として失われるのだそうです。そのため、入浴の前と後で、合わせて500mLのペットボトルを飲み切るくらいの水分を摂るのが理想的とのこと。浴室に飲料を持ち込んで水分補給するのもいいでしょう。

また、多くの汗をかいたときはミネラルも同時に失われ、血液がドロドロになってしまいます。そして、血液がドロドロになると、上昇した体内の熱を放出できなくなり、浴室で熱中症を引き起こしてしまう可能性も出てくるのです。それゆえに、水分補給にはミネラル入りむぎ茶が特にオススメなのだとか。ミネラル入りむぎ茶には、血流改善効果や血圧降下作用などの健康効果も報告されていますので、安全な入浴を助けてくれます。

さらに、入浴中から就寝までは、できればスマホ禁止! テレビやパソコンもなるべく控えて、デジタルデトックスを実践してみましょう。取り入れる刺激を少なくし、リラックスした状態を保って入眠すると、より良質な睡眠が得られます。

お風呂上りにすぐ就寝するのはNG

早坂氏いわく「身体を温めるのは大切ですが、体温が高いままでは眠りの質は良くなりません。上がった体温は、お風呂から出て1~2時間で下がってくるので、この時に就寝するのが深い眠りにつけるベストタイミング。もし帰宅から就寝までに時間が確保できない場合は、体温が上がり過ぎないように短時間でさっと入浴しましょう」とのこと。

どうしても湯船に浸かる時間がない場合は、湯船や湯桶に熱めのお湯を張って、足湯をしながらシャワーを浴びるという裏技も! シャワー単体よりは血流アップの効果が望めるそうです。ぜひすぐにでも実践して、疲労回復に役立ててください。

次回は、「筋肉痛」を防ぐ入浴法をご紹介します。

監修者

早坂信哉 (はやさか しんや)

東京都市大学人間科学部教授、医師、博士(医学)、温泉療法専門医。
お風呂を医学的に研究している第一人者。「世界一受けたい授業」「チコちゃんに叱られる!」など多数のメディアに出演。著書に『たった1℃が体を変える ほんとうに健康になる入浴法』(KADOKAWA)、『入浴検定公式テキスト』(日本入浴協会)、『最高の入浴法 ~お風呂研究20年、3万人を調査した医師が考案』(大和書房)など。