こんにちは。ファイナンシャルプランナーの中山浩明です。近年、結婚や出産時の年齢が高くなる傾向にあります。連載『晩婚者のためのマネー術』では、そうした"晩婚化時代"に応じる形で、晩婚の方々を対象にした"マネー術"について解説したいと思います。


今回は、終身保険や終身医療保険に加入する際の注意点をご紹介します。

平成25年度簡易生命表によると、日本人の平均寿命は男性が80.21歳、女性が86.61歳ですが、長寿を違う視点でみると、90歳の生存確率は男性が23.09%、女性は約47.25%となります。これは男性の4人に1人、女性の2人に1人が90歳を超えて長生きすることを意味します。長生きすることは喜ばしいことですが、一方で病気やケガにより、長期間にわたって看護や介護が必要になりやすく、経済的負担も大きくなるのが特徴です。

このような「生存リスク」については、貯蓄で備える方法の他に、生命保険を活用する方法があります。生存リスクに備えるための保険としては、「終身保険」や「終身医療保険」が候補にあがります。

終身保険と終身医療保険

終身保険とは、万一お亡くなりになった時に、遺族に死亡保険金が支払われる保険です。保障は一生涯続くことから、死亡時には必ず保険金が支払われるため、葬儀費用の準備や相続対策として利用されます。終身保険の保険料は「掛け捨て」ではありません。積立部分が存在するので「高齢期の貯蓄」としての役割もはたします。高齢期に長期の介護や看護が必要になった場合、その費用を終身保険の積立金から捻出することが可能です。

終身医療保険とは、病気やケガで入院したときに入院給付金が支払われる保険で、一般的には掛け捨ての保険です。

終身保険も終身医療保険も、高齢期のリスクを考えると加入しておきたい保険ですが、問題は「何歳で加入すればよいか」です。結論からいいますと、「1歳でも早く加入する」のが正解です。なぜなら終身保険や終身医療保険は何歳で加入しても、一生涯に払い込む保険料総額は、ほぼ同じになるよう設計されているからです。

毎月の保険料より総額を把握する

例えば、自動車を購入した時に「月々3万円の自動車を買った」という人はいません。普通なら「200万円の自動車を、月々3万円の月賦で買った」というはずです。つまり、購入者は車体価格を200万円と認識していることになります。ところが、生命保険と住宅ローンについては、自動車でいう「車体価格」を認識していない方が大半です(住宅ローンを組むということは、住宅を購入したのではなく、住宅ローンという金融商品を購入したと考えるとわかりやすくなります)。

生命保険の場合は、「毎月の保険料が1万円の終身保険に加入した」という方がほとんどで、「保険料総額100万円の終身保険に加入した」という方はまずいません。つまり、その保険の「本体価格」を把握していないで加入されている方が多いのです。しかし、生命保険にも自動車や住宅と同じように本体価格があります。それが「一生涯で支払う保険料総額」となります。

終身保険や終身医療保険は、30歳で加入しようが50歳で加入しようが、保険料総額はほぼ同じです。例えば、30歳で加入すると保険料総額は100万円、40歳で加入すると保険料総額は110万円、50歳で加入すると保険料総額は120万円…といった具合です。むしろ若干ですが、若くして加入したほうが、保険料総額は小さくなるのが普通です。

この事実を踏まえれば、終身保障は1歳でも早く加入するのが正解です。「私は保険のしくみを認めないから、保険には一生加入しない」という人を除き、終身保障の必要性を感じる人であれば、なるべく早く終身保障に加入してしまったほうがよいのです。

加入が早いと、毎月の保険料も小さくなります。例えば保険料の払込期間を60歳までだとすると、30歳の人は100万円を30年間で按分して払うのに対し、50歳の人は10年で按分して払うため、毎月の保険料は大きくなります。実際、31歳の保険料は30歳の保険料より5%高いのに対して、51歳の保険料は50歳の保険料より10%も高くなってしまう例もあります。保険料負担が小さいほど、家計への負担も小さくなるのはいうまでもありません。さらに、身体上の理由から、加入年齢が高くなるほど保険に加入するのが難しくなっていくことも見逃せません。

保険料総額を払込期間で按分

子供の将来のために本当に入るべき保険とは?

では、究極、何歳で終身保障に加入すればよいかといえば、答えは0歳です。保険会社によっては0歳から加入できるものもあります。子供が産まれたら「こども保険」や「学資保険」への加入を検討する人は少なくありませんが、わが子に終身保障を加入させようという親はほとんどいません。

ちなみに、現在「こども保険」や「学資保険」の利回りは著しく低下しているため、貯蓄としての魅力はきわめて薄くなっています。利回りの低い時代に「こども保険」や「学資保険」に加入するくらいなら、住宅ローンの返済額を増やしたほうが、よほどお金は貯まります。A社の学資保険とB社のこども保険を比較する人はいますが、学資保険と住宅ローンを比較する人はまずいません。どちらがトクかはちょっと試算してみれば誰にでもわかることです。

話をもどしますが、可愛いわが子の将来を想うなら、子どもが産まれたらすぐに、終身保険や終身医療保険への加入を検討してみてはいかがでしょう。この時、保険料は60歳までだらだらと払うタイプではなく、10年短期払いがお勧めです。子ども0歳で加入すれば、子どもが10歳の時にはもう保険料は払い終わっていることになります。子どもが社会人になったら、保険料を払う必要のない終身保険と終身医療保険を、就職祝いに渡してあげる…社会に旅立つ子に送る「粋なプレゼント」とはいえないでしょうか。

ただし、終身保険や終身医療保険に加入する場合、加入してはいけない保険もありますので、次回はそのあたりに触れてみたいと思います。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

執筆者プロフィール : 中山 浩明(なかやま ひろあき)

株式会社アイリックコーポレーション『保険クリニック』ファイナンシャルプランナー(CFP認定者/DCプランナー) マネー関係 セミナー講師。大学卒業後、ゴルフクラブの職人、パン屋経営と異色の経歴を持つ。2000年にファイナンシャルプランナーとして活動開始、マネー関係のセミナー講師として活躍、これまで500回以上のセミナーを開催。現在『保険クリニック』教育部に所属、保険コンサルタント指導とマネーセミナーの講師担当。専門分野は年金、保険、資産運用、ライフプラン。セミナーでは、お客様の立場で「お金の使い方を知ること」の重要性を唱える。

セミナーHP→http://www.hoken-clinic.com/seminar/

『保険クリニック』HP→http://www.hoken-clinic.com/