こんにちは。ファイナンシャルプランナーの中山浩明です。近年、結婚や出産時の年齢が高くなる傾向にあります。連載『晩婚者のためのマネー術』では、そうした"晩婚化時代"に応じる形で、晩婚の方々を対象にした"マネー術"について解説したいと思います。
晩婚世帯の場合、住宅ローンを組める期間が短くなるのを気にして、住宅購入をあせる人も多いですが、住宅ローンを組む年齢はさほど重要ではありません。住宅ローンは詳しくなれば相当にお金が浮いてくる(つまり貯蓄が増える)分野なので、構造をしっかりと理解しておくことが有効です。
住宅ローンを組む前に…
住宅ローンを組む前に、毎月きちんと返済できるかどうかを確認するためにキャッシュフロー表を作成します。キャッシュフロー表とは「人生の資金繰り計画」のようなもので、「年間収支」と「貯蓄」の推移を確認するために作成するものです。
まずキャッシュフロー表を作成し、貯蓄の推移を確認します。住宅ローン完済まで貯蓄が底をつかなければ、そのプランは完済できる可能性が高いですが、途中で貯蓄が底をついてしまう場合は、住宅ローンを完済できないことを意味します。対策として、「借入額を減らす」「世帯収入を増やす」などを検討する必要があります。中には「生活費を節約してください」とアドバイスする専門家もいると思いますが、家計の節約だけを前提とした返済プランは破綻しやすいでしょう。業績不振で世帯主の収入が激減した、教育費や生活費などの支出が急増したなどの場合、すでに家計を目一杯絞った状態だと、それ以上の節約は難しくなります。むしろ、家計に余裕を持たせた状態でプランを検討したほうがよいでしょう。
住宅ローンで重要なのは「いつ借りるか」よりも「いくら借りるか」です。ローン金利が多少高く借りたとしても、当初の借入額が大きくなければ利息額も大きくなりません。当初の借入額が大きくなると返済期間も長くならざるをえず、将来の返済は厳しくなります。特に住宅購入の際には500万円の金額差を大きくないと考えてしまう傾向にありますが、実は当初借入額500万円の差が明暗を分けることがあるので注意が必要です。
実際にモデルケースで検証してみましょう。
モデルケース
夫(世帯主)31歳、妻29歳
2年後に第一子、4年後に第二子を授かり、7年後に住宅を購入する
夫の年収500万円(※1) / 妻の年収なし
生活費340万円(※2)
子どもの教育費(※3) :すべて公立教育機関とする
住宅ローン:固定金利1.76%(※4)、元利均等返済
(※1 可処分所得は年収の8割、賃金上昇率を1.6%とする)
(※2 物価上昇率を1.0%とする)
(※3 費用は学校納入金のみとする。塾や習い事代は含まない)
(※4 フラット35(手数料定額型)東京都の平均金利(2015年6月2日現在))
プランA:住宅ローン1,500万円のケース
ほとんどの時期で収入が支出を上回ります。第二子が高校進学する51歳から54歳まで支出が収入を上回りますが、貯蓄は底をつかないので住宅ローンを完済できる可能性は高いです。ただし、塾や習い事代は含んでおらず、公立教育機関しか利用しない前提のため、子どもの教育にお金を掛けすぎると貯蓄は吹き飛んでしまいます。プランAは夫の会社の業績が好調で、夫の健康状態も問題なしという条件付きですが、返済プランとしてはぎりぎり合格ラインです。
プランB:住宅ローン2,000万円のケース
住宅購入後は収支トントンの状態が続きます。貯蓄も横ばいで増えず、第二子が高校進学する51歳から貯蓄が底を抜けてしまいます。住宅ローン返済を優先するなら教育資金は400万円ほど借入しなければなりません。また、退職金を1,500万円ほど受け取ったとしても、老後資金としては十分といえないレベルです。
プランAとプランBは借入額が500万円の差ですが、何気に増やした500万円の借入が将来の明暗を分けるケースです。一般勤労世帯においては、2,000万円の住宅ローンと2人分の教育資金は両立しえないのが普通なので、教育費と住宅のどちらを優先させるかを夫婦でよく話し合っておくべきです。
どうしても、2,000万円の住宅ローンを組まざるをえない場合は、収入を増やす必要があります。例えば、妻37歳(第二子が幼稚園に入園)から10年間、年間50万円のパート収入を得るだけでも500万円の収入増加(つまり貯蓄増加)につながるので、プランBでも貯蓄は底をつきません。妻が働くことで500万円の貯蓄を増加させるのは容易ですが、家計の節約や資産運用で500万円の貯蓄を殖やすのは容易でないことは想像しやすいでしょう。
執筆者プロフィール : 中山 浩明(なかやま ひろあき)
株式会社アイリックコーポレーション『保険クリニック』ファイナンシャルプランナー(CFP認定者/DCプランナー) マネー関係 セミナー講師。大学卒業後、ゴルフクラブの職人、パン屋経営と異色の経歴を持つ。2000年にファイナンシャルプランナーとして活動開始、マネー関係のセミナー講師として活躍、これまで500回以上のセミナーを開催。現在『保険クリニック』教育部に所属、保険コンサルタント指導とマネーセミナーの講師担当。専門分野は年金、保険、資産運用、ライフプラン。セミナーでは、お客様の立場で「お金の使い方を知ること」の重要性を唱える。
セミナーHP→http://www.hoken-clinic.com/seminar/
『保険クリニック』HP→http://www.hoken-clinic.com/