貯金なし・配偶者なし・知識なし(でもオタク仲間あり)に、“明るい老後”はやってくるのか? 身内の介護や看取り、老後問題……介護資格をもつアラフォーのバンギャル2人が、介護業界にガチ取材し、老後を模索する体当たりルポ・エッセイ『バンギャルちゃんの老後 オタクのための(こわくない!)老後計画を考えてみた』(ホーム社)より、一部を抜粋してご紹介します。

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もはや社会問題ともいえる「高齢者の免許返納問題」。数年前にも高齢者の運転による痛ましい事故がセンセーショナルに報道されました。その影響もあって「祖父母や両親の免許をどうするか?」と考えている人は多いのでは……。前回に引き続き、高齢者の車との付き合い方を考えます。


今回の登場人物

藤谷千明:バンギャル歴約四半世紀のフリーライターで介護資格持ち
蟹めんま:バンギャル歴20年以上の漫画家・イラストレーターで介護資格持ち
並木靖幸さん:NPO法人高齢者安全運転支援研究会で、高齢者の認知機能や身体能力との関係を調査・研究し、高齢でもできるだけ永く安全運転を続けるための講習会などを行っている


安全な運転の工夫から、自主的な返納まで、高齢ドライバーとどう向き合う?

藤谷自分で返納を判断するのが理想的ということですが、どうやって自主返納の話を切り出せばよいのでしょうか。

並木さん:今の高齢者は高度経済成長を支え、車社会の発展とともに生きてきた人たちです。そういう人たちは、「免許を取って車を持つこと」自体にすごく思い入れがあるんです。ある事例では、返納に7年かかった方がいました。ずっと家族と免許について揉めていたんだけど、最後はご本人が物損事故を起こしたことがきっかけで、自主返納したそうです。

:7年! やっぱり時間がかかりますね~。

並木さん:ご家族のお迎えに行ったり、あるいは行楽に出かけたりと、ドライバーにとって車や免許には思い出や家族を支えてきた自負が詰まっていることが多いんですよ。これまでのことがまるでなかったかのように、家族から「迷惑だから運転をやめて」と言われれば、ケンカになるのは当たり前です。女性は、公共交通機関が充実しているとかで生活に困らないならば返納しようと合理的に判断する傾向にあるのですが、男性の場合、合理性だけではなかなか返納に至らないことも多いそうです。

藤谷:プライドがあるのでしょうね。

並木さん:切り出し方として、これまでの感謝を表しつつ「最近、身体の調子はどうなの?」といたわる気持ちを糸口にするのがいいでしょう。そこでもし気になることがあるなら、安全に運転を続ける解決策を一緒に考えてみましょう。

:いたわりの気持ちから入れば、ケンカにならなさそうですね。

並木さん:あるいは、通勤通学の時間帯はどうしても自動車や歩行者が増えるから、運転を避けるとか。病院に行くなら、駐車場が空いている時間帯に行くとか。いろいろな工夫が考えられます。もし持病があるなら、それに合わせた提案をするのがいいですね。白内障があるなら、太陽や夜間のヘッドライトが眩しい時間帯は運転を避けるとか。

ほかにも、ドライブレコーダーの取り付けもすすめてみましょう。客観的な事実をとらえるものですから。記録された映像を一緒に見て「ちょっと危なかったね。このときはどうしたの?」と問いかけていくと、ご本人もだんだん「危なくなってきたな」って自覚が出てくる。そこでやっと「家族もサポートしていくから、返納を考えてみようか」という話ができるのではないでしょうか。

藤谷:親との密なコミュニケーションが大事になってくるんですね。う~ん、実は私はそれがちょっと苦手で……。離れて暮らしている親とは仲が悪いわけではないものの、頻繁に連絡をとったりはしてないんですよね。そんな場合、何から始めたらいいでしょうか。

並木さん:例えば盆暮れに帰省することがあるなら、運転席側に傷がないか確認してみてください。運転席の反対側は死角だから多少こすることがある。だけど運転席側がペコペコだと認知機能が衰えているので、周囲と相談して検査をすすめてみてはいかがでしょう。連絡をとるときには、文字よりも会話のほうが相手の様子がわかるので、メールやメッセージアプリよりも電話がおすすめですよ。

それから、高齢者の事故で若い人たちと違って圧倒的に多いのはハンドル操作ミスとペダルの踏み間違いなんですが、最近(2021年11月以降)販売される新型車には、衝突被害軽減ブレーキの搭載が義務化されています。とはいえ、新車を購入するのは金銭的にちょっとむずかしいかも……とか、今すぐ対策したいなどの場合には、踏み間違い防止装置を5万~10万円くらいで後付けもできるので、新車を買うつもりのない高齢ドライバーにも、ぜひおすすめしてもらいたいです。

運転という「趣味」を諦めることになったら……代わりになるものは?

  • 画:蟹めんま

藤谷:運転自体が趣味になっている人だと、納得して返納しても喪失感はすごそう……。免許を返納して車を手放したとたん、認知症が進むケースもあるそうですし。

:私たちはこの2年以上、コロナ禍によって趣味の現場を奪われてきたので、免許を奪われたと感じる高齢者の気持ちも少しはわかるような気がします。

並木さん:免許を返納する前に「移行期間」というか、心の準備をする期間を設けるのもよいかもしれません。近場なら車ではなく電車やバスの公共交通機関や徒歩にするとか……。

:ウチの父もそんな感じでした。駅の近くに引っ越してからは「もう車いらなくない?」と 免許を返納していました。ウチの場合は運転そのものにこだわりはなかったのでスムーズでしたが。

並木さん:最近は、レーシングゲームで非常によくできたものがたくさんありますね。実在するコースを走ったりいろんなパーツがあったり、グラフィックもかなりリアルなんです。うちの団体の理事長もできるだけ永く運転を楽しみたいってタイプだから、いろんなゲームソフトを試して運転の感覚をリアルに楽しめるゲームを探していますね(笑)。

:私たちがオンラインでライブ参戦する感覚に近いですかね。100%代わりにはならないけど、選択肢があるのは救いです。

藤谷:ウチの父も「もうスロットには行かない」といって、一時期その代わりに「ドラクエ」のカジノをやっていましたね(笑)。

並木さん:教習所は私有地だから、たまに免許返納した人たちのために開放してくれるとか、あるいは自動車メーカーの私有地で運転できるような「もう一度運転を体験できる」サービスがあるといいかもしれません。

:安全な場での「再結成イベント」ですね。我々もそういう機会に多々救われていますので、そうなってくれることを願います。


どんどん進む超高齢化社会。「老後資金に2千万円」が必要と言われる昨今、キラキラ元気な老人がもてはやされる一方で、高齢者を狙う詐欺やカルトにハマる事例も……アラフォーからの“明るい老後”を模索する、体当たりルポ・エッセイの全貌は、『バンギャルちゃんの老後 オタクのための(こわくない!)老後計画を考えてみた』をチェックしてください!

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『バンギャルちゃんの老後 オタクのための(こわくない!)老後計画を考えてみた』(ホーム社)
著者:藤谷千明・蟹めんま 監修:LIFULL 介護

「老後はオタク仲間で一緒に住もうぜ!」から楽しく始まった企画のさなか、当事者として直面することになった身内の介護・看取り・老後問題。漠然とした不安だらけの世の中で、オタク女子に“明るい老後”はやってくるのか。オタク・ネットワークとユーモア、そして「趣味から得た養分」を手に、戦略を考えてみた! 老人ホーム・介護施設検索サービス大手の「LIFULL 介護」が監修し、解説も充実。Amazonで好評発売中です。