稟議書は「会社の規模」「所属する部署」「立場」など、さまざまな要因で我流になりがち。実は、通らない稟議書と通る稟議書、その差は比べてみると一目瞭然です。わかっているようでわかっていない通る稟議書の書き方について、実際の具体例を見ながら学んでみましょう。
監修は、ビジネススキル研修事業の責任者である、リクルートマネジメントソリューションズの河野洋士(こうの・ひろし)氏です。
通る稟議書を書くための3つのポイントとルール(おさらい)
あなたはこの稟議の決裁者です。この稟議書を読んで、承認のサインが書けますか?
この稟議書、一見するとよくまとめられているように感じますが、決裁者目線で読んでみると、全体的に漠然としていて「??」と思うところがいくつもあると思います。手戻りというのはこうして起こるのです。
3つのポイントを解説
通る稟議書を書くためのポイントは大きく3つあります。
決裁者の立場に立って書く
決裁者は、必ずしもあなたのことやあなたの仕事のことを十分に理解しているわけではありません。つまり、何も知らない赤の他人が読んでもわかるように書かなければならないのです。
では、どこをどう直したら通る稟議書になるのでしょうか。修正すべきポイントは以下となります。
・承認事項の内容を正しく表現できていない
・一文が長過ぎる
・具体的なエビデンスがない
・項目をつくり、詳細な内容を予告し、承認者を導く
・箇条だけにすると伝わりにくい。項目をつくり理解を促す
・タイトルと研修名の表現が合っていない
・同じ内容が繰り返されている。「モチベーションがあがる」だけで十分
・承認者の立場に立ち、想定されるリスク等あれば記入する
こうして指摘されると、納得できると思います。これらは、通る稟議書を書くための3つのポイントの、残りの2つに基づいたものです。
必要な項目を抜け漏れなく網羅的に書く
<稟議書に必要な6つの項目>
(1)承認事項
(2)目的・背景・理由
(3)エビデンス
(4)費用
(5)リターン・利益
(6)想定されるリスクと対処
正しい日本語、読みやすい文章で簡潔に書く
<伝わる文章を書くためのルール>
(1)一文を短くする(50文字以内)
(2)主語と述語を近づける
(3)修飾語と被修飾語を近づける
(4)専門用語をそのまま使わない
(5)「単語のみ」「体言止め」を使わず、正確に表現する
しっかりとした論理構成が重要
では、この稟議書を、指摘に沿って修正してみましょう。
いかがでしょうか。これなら、件名を見ただけで何を承認してほしいのかがよく分かり、その目的や背景、承認事項の具体的な内容と狙い、それによって期待できる成果まで、書類を上から下へと読み進めるだけですらすらと頭に入ってくると思います。
また最後に、「これにかかる費用が予算内である」という、承認者にとっての安心材料が記載されているところも大きなポイントです。こんな稟議書なら、あなたも決裁者として、難なく承認できるのではないでしょうか。
この比較例からも分かるように、通る稟議書は、論理構成がしっかりとしています。だから、読み手である決裁者に時間的、精神的負担がかからない。結果、通る稟議書となるわけです。
通る稟議書を書くのに才能は必要ありません。ポイントを押さえ、ルールに従えば、誰にでも書けるもの。できるビジネスパーソンとして一歩抜きんでるためにも、スキルアップに励んでみてください。
監修者
河野洋士(こうの・ひろし)
リクルートマネジメントソリューションズ
事業開発部 スキルデザイングループ
マネジャー
米国ビジネススクールにて経営学修士(MBA)を取得。卒業後、大手経営コンサルティング会社を経てリクルートマネジメントソリューションズに入社。営業担当として数々の営業表彰をうけ、そのかたわら、「営業モデルの構築」や「中途入社者の育成モデルの構築」などをプロジェクトとして経験し、大きな成果をあげる。2014年、東日本支社長に就任。2016年4月より現職。