約10カ月わたって連載してきた"知らないと損する本格的アメリカ旅行術"ですが、とうとう最終回となりました。今回はいくつか旅行プランを提案しつつ、コラムのおさらいをします。ちなみに、すべて車を利用することが前提のプランです。

ここだけは押さえて! グランド・サークル5日間

グランド・サークルとは、アリゾナ州・ユタ州・ニューメキシコ州・コロラド州の国立公園が集中したエリアのことを指す。5日間の旅で全部の国立公園に行くことはできないので、走行距離が比較的短く、見て欲しい場所ばかりを取り上げてプランを作成してみた。

グランド・サークル・ドライブの拠点は、やはりラスベガス。まずはフリーウェイI-15を北へ。2時間半ぐらいで、グランド・サークルのオアシス的国立公園とも言えるザイオン国立公園に到着する。ザイオンはトレッキングのメッカなので、トレッキングを楽しみたい人はゆっくりし、さっと見学したい人は園内をシャトルバスで観光をしよう。夕方、東口から公園を抜け、ハイウェイUS89を北上。約1時間半ドライブし、ブライス・キャニオン国立公園に到着。その日は、ブライス・キャニオンのゲート近くのモーテルに宿泊して、翌日の朝日見学に備えよう。

2日目、早起きをしてブライス・キャニオン国立公園へ。この地特有のフードゥーと呼ばれるオレンジ色の尖塔群が密集したインスピレーション・ポイントで朝日を見学。その後、公園内を回ろう。時間がない人は、北側のビューポイントだけで十分だ。見学が終わったら、今度はUS89を南下しレイク・パウエルへ。約2時間半のドライブだ。

ブライス・キャニオン国立公園にて朝日を見物。私たちの大好き公園1位

3日目、レイク・パウエル近くのアンテロープ・キャニオンへ。アンテロープ・キャニオンンとは、水によって岩肌が削り取られた渓谷。横幅は狭く、天井が少しか開いていないので、昼頃しか光が入ってこない。この少しの光が渓谷の壁にあたり、幻想的な雰囲気を醸し出す。そのため、アンテロープ・キャニオンには天井から光が入る12時~14時ぐらいまでに行かなければいけない(写真の撮り方はミニコラム参照)。そうしてアンテロープ・キャニオンをしっかり見学したら、US89→US160を経て、モニュメント・バレーへ向かい、そこで1泊しよう。所要時間は約3時間。どちらの近くにもいいレストランはないので、この日はスーパーなどでできた料理を買ってくるといいだろう。

4日目は9時頃からモニュメント・バレー内を見学。バレー内は自家用車でも入れるが、ツアーに参加する方が時間の節約にもなるし、モニュメント・バレーを管理しているナバホ自治区のガイドさんから岩の謂れなど面白い話を聞くことができるのでオススメだ。この日はできるだけ早めに行動し、14時ぐらいにはグランド・キャニオン国立公園へ向けて出発しよう。ルートはUS160→US89→AZ64を通り、約4時間。夕方のグランド・キャニオンはとても美しいので、夕日の時間に間に合うように、夕日のポイントであるホピ・ポイントやモハーベ・ポイントに到着しよう。

グランド・キャニオン国立公園。サウス・カイバブ・トレイル、約1時間地点

5日目、いよいよ最後の日だ。まずは早起きをして、マーサー・ポイントやヤバパイ・ポイント、ヤキ・ポイントに行こう。太陽が昇るにつれてグランド・キャニオンの壁が黒から金、赤、オレンジに変化するのが、とても神秘的。その後シャトルバスを利用し、園内を見学。ここからラスベガスまではAZ64→I-40→US93を経て約5時間なので、ドライブの時間を考慮して、スケジュールを決めるといいだろう。出発時間が早ければ、古きよき時代の面影を今もなお、色濃く残す伝説の道、ルート66沿いの街・セリグマンに立ち寄ってみるのも面白い。

もし1週間以上時間が取れるのなら、グランド・キャニオンとモニュメント・バレーにもう1泊し、トレッキングをするのがオススメだ。全体で10日ぐらい時間が取れるのなら、上のプランのブライス・キャニオンの後、北上し、キャピタル・リーフ国立公園、ゴブリン・バレー州立公園アーチーズ国立公園、キャニオン・ランズ国立公園を経て、モニュメント・バレーに行くといいだろう。

アーチーズ国立公園。ダブルアーチの迫力はすごい! インディー・ジョーンズ3のオープニングに出てきます

上級者向けアメリカ南部エリア6日間

こちらのプランは、グランド・サークルはある程度回ったので、他の場所に行きたいをいう人のためのルートだ。

拠点はアリゾナ州の都市フェニックス。I-40で北上し、スピリチュアル&パワースポットのセドナへ。地球のパワーが出ていると言われているボルテックスを見学し1泊。もしかしたら、夢で不思議な体験ができるかも……。

セドナ。レッド・ロック・クロッシング。最近CMで見かけますね

2日目、セドナを後にしI-40を東へ進み、巨大隕石孔メテオ・クレーターへ行ってみよう。約2時間のドライブだ。入場料が15ドルもするので、時間がない人や興味のない人は通過し、さらに約2時間ドライブをして化石の森国立公園へ。木の化石がゴロゴロと転がっている。化石の森は2時間もあれば全部見て回れる。この日、南部のゲートシティ的都市ニューメキシコ州のアルバカーキぐらいまで行けるとベストなのだが、走行距離があまりにも長くなってしまうので、I-40沿いの比較的大きなルート66の名残のある街、ギャラップに宿泊して。

3日目、この日は4時間以上のドライブになるので、早めに出発して少しずつ休憩しながら、ニューメキシコ州のホワイト・サンズ国定公園まで進もう。ホワイト・サンズは、夕日の時間がとても美しいので、必ず日が落ちる前に到着するようにしよう。ガイドさん引率のサンセット・ツアーなどに行ってみると、ホワイト・サンズのことをより深く知ることができるのでオススメだ。ちなみにツアーは無料。

ホワイト・サンズ国定公園。ブライス・キャニオンと並んで大好き公園1位

4日目、まずは開園と同時にホワイト・サンズへ行き、朝日を浴びたホワイト・サンズを写真に収めよう。そして、10時前にはカールズバッド洞窟群国立公園へ向けて出発。US82→US285で約3時間だ。早く行けば、ガイド引率の有料ツアーに参加することができる。ルートやプログラムはいくつかあるが、狭い鍾乳洞の中を這って進むような場所に行くものもあるので、アドベンチャーをしたい人は十分に楽しめる。そしてこの日は、国境の街エル・パソまで行き宿泊するのがベスト。

カールズバッド洞窟群国立公園。ビッグ・ドーム・ルート

5日目、午前中に歩いて国境を渡りメキシコのファレスへ。パスポートさえあれば、簡単に行き来できるし、アメリカとは全く違う雰囲気を味わえてかなり面白いだろう。午後、サワロ国立公園に向けて出発。I-10をひたすら西へ行く。この日は移動だけになってしまうので、サワロ国立公園の最寄りの街、ツーソンで宿泊。

6日目、ツーソンからサワロ国立公園へ。フリーウェイを通らず20分ぐらい運転すると、サワロという巨大サボテンがたくさん見えてくる。1、2時間滞在を楽しんだら、I-10を通り、フェニックスへ。

全体で10日ぐらい時間が取れるなら、ギャラップ近くのネイティブ・アメリカンの街、アコマ・スカイ・シティで人々の生活を覗いてみたり、アルバカーキから北上し、アートの街サンタ・フェでアートギャラリーを見学したり、ネイティブ・アメリカンが今も変わらず昔の生活を保っている世界遺産タオス・プエブロで、ネイティブ・アメリカンの人たちと触れ合ってみたりするのもいいだろう。また、ホワイト・サンズから2時間程度で行けるUFOが落ちた街ロズウェルなどもオススメだ。

それでは、今回で私たちのコラムは終わりです。読んでいただいた皆様、ありがとうございました。このコラムが皆様の旅行のお役に立てることを願っています。また会える日まで。Have a nice trip!

フォトアーティスト飯富崇生のミニコラム:アンテロープ・キャニオンでのベストショット撮影術
アメリカ国立公園に詳しい人なら、アンテロープ・キャニオンと言うと、赤い洞窟に天井から一筋の光の柱が差し込む写真を誰もがイメージするだろう。旅行ガイドブックでも、あるいは現地のアンテロープツアーでも、またギフトショップのポストカードでも、必ずこのような幻想的な写真が使われている。なので、訪れた人は皆、こんなにかっこいい写真を自分で撮ってみたいと思うだろう。

アンテロープ・キャニオン。一般的にこんな色の写真がいつも使われています

だが実を言うと、この写真は機材とタイミングさえあれば、誰でも難なく撮ることができる。まずは機材。三脚が必ず必要だ。渓谷で中が暗いため、三脚がないと絶対にブレてしまう。次にタイミング。このキャニオンは天井にスリットがある150メートルほどの短い渓谷である。そのスリットから光が差し込むのは12時~14時ぐらいの僅かな時間帯のみ。だから、その時間にアンテロープ・キャニオンにいる必要があるのだ。しかし、当然他の観光客も同じ時間帯を狙ってきているため、訪問のピークと重なる。その中で、いかに人のいない場所で三脚を立ててじっくりと撮影できるかが、撮影のポイントなのだ。この三脚とタイミングさえ揃えば、後は特別な技術なく天井から光が差し込むあの幻想的な写真が撮影可能だ。皆さんも試してみて。
アクセス情報
最寄りの国際空港:マッキャラン国際空港(ラスベガス)
日本からの直行便は2008年1月現在なし。アメリカ西海岸まで約10時間、それから乗り継ぎで約1時間。ロサンゼルスから車で約5時間。
フェニックス国際空港
日本からの直行便はないので、アメリカ西海岸まで約10時間、それから乗り継ぎで約1時間。