全国各地で勃発する嫁姑問題。Twitterでは3人の男の子を子育て中の秋山さんの義母ツイートが話題を呼んでいる。「孫の誕生日プレゼントは水ようかんの空き容器」「手土産にお菓子よりも現金を要求する」......そんな衝撃的な義母との終わらない戦いに挑む秋山さん。今回は「義母の誕生日会」の話をお届けしよう。

  • お義母さんが喜ぶプレゼントは現金

    お義母さんが喜ぶプレゼントは現金

8月は義母の誕生日

今年も8月が過ぎようとしている。8月と聞いて連想するもの。夏、花火、セミの鳴き声、プール、ひまわり、かき氷……総じて楽しく明るい雰囲気のものが多く出てくる。しかし私にとって8月は結婚以降最も憂うつな月となっている。

その連絡は6月から7月にかけてやってくる。

「今年の私の誕生日会ですが―――」

自身の誕生日を祝う会を開いてくれという連絡。私はこのメールを受け取ると(お、今年ももうそんな時期か)と夏の訪れを感じる。夏、花火、義母からの誕生日会強要メール。毎年一つずつ数字が増えていく「〇歳を祝う会について」というタイトルをタップする。

本文 : 今年の私の誕生日会ですが、都合はいかがですか?
日時 : 2020年8月16日(日)9 : 00集合
場所 : 〇〇ホテルの中華(次点で〇〇のイタリアンも可)(希望)
今年は自粛のムードもあるので密にならないようパパ(※義父)とアキちゃん(※夫)家族のみでお祝いできればと思います。孫ちゃんたちに会えるのを楽しみにしています。私自身はまた一つ年を重ねるにあたって2つの目標を立て(以下抱負が続く)

大体毎年こんな内容なのだが、まず「いかがですか」と書いてはいるが必ず出席しなければならない。そのためのスケジュール調整は4月に済ませてある。「共働きだし日曜が1番集まりやすいでしょう?」と言い毎年日曜に開催してくれる点にも注目したい。

そもそも表向きは私たちのためというようなことを言っているが、お義母さんは基本的に平日旅行で家を空けることが多い(なぜなら平日に自治体のクーポン等を使って旅館に安く泊まる)ので、単に土日に暇を持て余しているという見方が大きい。

私が姑の立場だったら平日は仕事で疲れているのだから日曜のお休みの日くらい家族でゆっくり過ごしてほしい、と思うのだが、そもそもそんな考え方の人は自分の誕生日会を自分で企画したりしない。

搾取と苦労の誕生日会

老人の朝は早い。誕生日会当日は9時に義実家に集合し、そこから場所を移し会食をして夜に解散となる。ほぼ1日拘束される地獄の耐久レース。我が家の場合、子どもが3人いるので準備する時間も相当にかかる。もろもろの時間を考え逆算していくと朝は6時に起きなければいけないだろう。0歳にミルクをあげるタイミングや、1番大変なイヤイヤ期の3歳の機嫌を損ねないために、ありとあらゆる手だてを講じる必要がある。

会食の場所についてもお義母さんから指定される。今年であれば中華を食べたそうにしていることがメールから読み取れる。この文面で注意しなければならないのは(希望)の部分である。文字通りお義母さんは「食べたい」と希望しているだけで、この時点で店に予約の電話はしていない。ではいつ予約をするのか、誰かが予約を取るのか、このメールを受け取った私たちである。大体夫か義弟がその役を担うのだが、今年は義弟がお呼ばれされていないので、必然的に私たちが電話をしなければいけないだろう。ここでもお義母さんの配慮により、中華がダメだった時のために予備のイタリアンが後ろで待機している。

これが仕事ならば賃金が発生するので喜んで企画し出勤するのだが、なんとこのイベント、無給どころかお金を取られるのである。

Twitterで長くフォローしてくれている人はご存じかもしれないが、お義母さんの誕生日には現金を持参する決まりになっている。6回目の誕生日会の時に私があげたプレゼントが気に入らなかったのか、そもそも過去6回とも気に食わなかったのかは分からないが、とにかく7回目の誕生日会からは現金にしてほしいと言われて以降せっせとお金を包んで渡している。

ここまでくると誕生日会なんだか集金イベントなんだか分からなくなってくるのだが、当の本人はのし付きの袋を大切そうに受け取ると1年で1番の笑顔を見せる。お義母さんの口から「ありがとう」が聞けるのはこの日だけ。それを見た私は(ああこの人は本当にお金が大好きなんだな……)と謎の感動を覚える。笑顔の義母、死んだ目の嫁。まさに現場は混沌を極める。

今年の結論

しかし誠に残念ながら2020年に限っては新型コロナウイルスの影響でどう考えても集まれる環境ではなかった。夫と相談し、泣く泣く「乳幼児もいますので参加できません。また改めてお祝いさせてください」という返事をするに至った。メールには黄色い顔のキャラクターが右目から涙を流す絵文字をつけて無念さを演出してみたが、実際夫があの場にいなかったら私はメールを送信直後にスマホを放り出して高笑いしていただろう。

結婚後初の開催中止。面倒なホテルの予約も現金のプレゼントも、食事代の負担も1日拘束もされない。「健康に気を付けてお元気で」なんて思ってもいないことも言わなくていいし、メールに書かれていた抱負をもう一度本人の口から聞くようなこともしなくていい。こんな嬉しいことがあるだろうか。授乳期じゃなかったら強めの酒を浴びるほど呑んでいただろうし、この喜びを誰かと分かち合いたかったがさすがに夫に「イエーイ!」とハイタッチを求めることはできないのでグッと堪えた。

お義母さんから返事はすぐに来た。

タイトル : 分かりました。
本文 : 祝う会は延期とします。年内に開催できるといいのですが、プレゼント(※現金)だけは先にアキちゃんに持たせてくれませんか?

「こわ……」とだけ口から洩れた。