一般乗客から見ればコクピットは「聖域」にも見える

ピーチ・アビエーションが夏場の2,000便以上を、バニラエアが6月までに150便以上をそれぞれ欠航すると発表した。さらに6月から就航予定だった春秋航空日本も、8月からに延期するという。これらの理由はすべてパイロット(機長)不足だ。

不足の理由に他社からの引き抜きも

LCCのパイロットが足りなくなる理由のひとつが好条件での引き抜き。つまり、「今より高い年収を約束するからおいでよ」と他社から誘われ、より高い給料を求めて転職していくわけだ。では、LCCのパイロットの年収はそんなに安いのだろうか?

例えば、ピーチは年収700万円だと言われている。この金額を低いと思うか、十分だと考えるかは人それぞれだろう。日本のLCCでは相場としては平均か、やや低いくらいといったところだろう。

大手だと年収が2倍以上になることも

かつてスカイマークやフジ・ドリーム・エアラインズなどの新興エアラインが続々と誕生した頃、「こんな収入ではやってられない」と言いながら辞めるパイロットが出て問題になったことがある。彼らが辞めた理由は、JALやANAといった大手の年収がその2倍以上だから。ほとんどの日本人パイロットは大手の出身者だから、あまりの金額の違いに戸惑うのだろう。

例えばアメリカの場合、日本より一足早くパイロット不足に陥っているにも関わらず、転職すると200万円~300万円という日本より圧倒的に低い年収からスタートするケースも多い。その後の上がり方は日本以上になることもあるが、それでも日本のパイロットはかなり厚遇だといえるのだ。

「ハドソン川の奇跡」のパイロットの年収は?

よく、「人の命を預かる職業だから、たくさんの給料をあげるべき」との声を耳にする。だが、その理屈でいえば、「高い給料をもらわないと真剣に働かないのがパイロット」だということになりかねない。かつて「ハドソン川の奇跡」とうたわれ、バード・ストライクによってエンジンが停止した機体を水面に見事に不時着させ、乗客全員を救ったUSエアウェイズのパイロット。彼の年収は500万円~600万円程度だったと記憶している。

働く日数によって収入額が変わることもあるが、パイロットとは収入に関係なく責務をまっとうするプロフェッショナルであるはずだ。