「この仕事を続けていいのか『不安』です」 「転職を考えている企業がブラック企業ではないのか『不安』です」 「異動した部署のメンバーとうまく仕事をしていけるか『不安』です」―― 人材育成や、就職や転職の相談にのる仕事をしていると、「不安」という言葉を耳にする機会がとても多くあります。

  • なんとなく不安を感じることはありますか?

不安の意味とは

あなたは不安という感情が頻繁に湧き上がってくるタイプの人ですか? それとも、あまりそういう感情を抱くことはないタイプでしょうか?

そもそも論になりますが、人間の持つ感情にはそれぞれ意味があります。不安の意味はリスク予防。この感情があるからこそ、人は、危険を回避する確率を高められます。だから、あながち悪いものだともいえません。

しかし、強すぎる不安感情は、ストレスを溜め込むことにつながり、やる気ダウンやメンタル不調、体調不良を引き起こします。だから、特に不安症な人ほど、その不安を解消するすべを知っておくことに意味があります。

不安を解消する2つの方法

不安解消術には、「リフレッシュ術」と「根本解決術」の2種類があり、両者をハイブリッドして行うことを私は勧めています。

リフレッシュ術

リフレッシュ術とは、簡単にいえば、ガス抜きです。

  • 睡眠を取る
  • お風呂に入る
  • 自然に触れる
  • 音楽を聴く
  • 自分の好きなことにお金と時間を使う
  • 適量の範囲でお酒を飲む
  • コーヒーを飲む
  • ヨガや瞑想を行う など

「何をやるか」は、人それぞれ、自分スタイルで構いませんが、内にこもってアレコレ思慮を思いめぐらせすぎるのはよくありません。意図して何か「ガス抜き」を行う時間をつくるようにしましょう。

根本解決術

しかし、リフレッシュ術はあくまでも対症療法であり、根本的な解消にはつながりません。根本から不安を消すための打ち手も必要になります。具体的には、以下の要領で、2つのステップに分けて実践してみましょう。

STEP1:不安なことを書き出す

「この仕事を続けていいのか」という"漠然とした不安"をもっていたAさんの例で考えてみましょう。なぜ不安を感じるのか。その要因を書き出してもらったところ、以下の4つが出てきました。

  • そもそも何の専門スキルが身に付かずに、つぶしが利かないのではないか?
  • 立ち仕事だし、年齢が上がっていくに連れて、肉体的にも厳しくなるのではないか?
  • 今の仕事を続けたところで将来的に、給与を上げることは難しいのではないか?
  • 他の仕事に転職するなら早いタイミングがいいのではないか?

STEP2:どうすれば、その答えが得られるか? を考え、実践する

「人材紹介サービスを提供する会社に登録し、転職コンサルタントに相談をする」

Aさんの出した結論はシンプルにこのようなものでした。なぜなら、不安要素を書き出し、可視化してみたところ、全ては、紹介会社のコンサルタントに相談すれば、解決できるものだったからです。

Aさんは、情報の精度(意見が同じか、割れるか)を高めるため3社に登録し、相談。今後のキャリアプランが固まり、不安もなくなったそうです。

「え? そんなこと?」と拍子抜けした方もいるかもしれません。けれど、そんなことなんです(笑)。

不安を感じるメカニズム

人間の脳は「見通し」が立たないときに、ストレス(不安)を感じる仕組みになっています。心理学辞典では「不安:自分を脅かすような破局や危険の漠然とした予感」と定義されています。つまり、漠然としていて、どうしたらいいかわからなく「見通しが立たない」状態だからこそ、ストレスフルになるわけです。

だとしたら不安は、「何が原因なのかがはっきりせず、モヤモヤしている状態」を打破してあげれば減るということになりますね。だから、「モヤモヤ」を整理して可視化し、その対処策を考えればよいのです。

不安が強すぎる場合は、「何が要因なのか?」を書き出すことから始めてみましょう。

執筆者プロフィール : 阿部淳一郎氏

ラーニングエンタテイメント 
代表取締役

若手の採用・育成・定着に強い人材開発コンサルタント。早稲田大学教育学部卒。筑波大学大学院(ストレスマネジメント領域)修了。保健学修士。社会人教育を行う東証一部上場企業等を経て2004年に起業。「メンタル不調者を減らし、若者の能力を引き出す」をコンセプトに人材開発業務に従事。大企業から中小・ベンチャー企業、学校、行政まで研修登壇実績は約1500本、コンサルティング実績30社。サンフランシスコ・シリコンバレーへも事業展開中。大学での就職活動領域における講師歴も長い。『これからの教え方の教科書(明日香出版社)』など著書3冊。『NHK』『日経新聞』『読売新聞』『日経アソシエ』『週刊SPA!』など取材実績も多数。