ストレスがたまりやすい人は、根拠なく「自分」に自信がなく、自己否定をしがちです。先日、相談にのったストレスフル状態だったAさんもこの傾向が強く、「自分は、何もかも中途半端な人間です」としきりに口にしていました。

本人によると、「学生時代は勉強・部活も中途半端。やりきったと胸を張れるものがない」、「就職して仕事を頑張ろうと思ったけど、最初だけ。惰性で何年も過ごし、何の専門性も身についていない」、「自分を変えたくて、社労士資格取得を目指した。自分にプレッシャーをかける意味で、高額な書籍(教科書)をまとめて購入した。しかし、2週間程度で挫折し、試験も結局受けなかった」そうです。

「自分に甘いんです。もっと気合いを入れないと」と何度も口にしました。

  • 自分を否定して「人生」に迷っていませんか?(写真:マイナビニュース)

    自分を否定して「人生」に迷っていませんか?

「気合い」で自分を変えられる人は少数派

ただ、「気合いを入れる」といった精神論でこの状態を変えられる人は少数派なのが実態です。心の在り方は確かに大切ですし、土台です。しかし「心の在り方」を変えるには、自己効力感を高める必要があり、容易なことではありません。

それよりも「やり方」、言い換えると「物事の取り組み方」を変えることに意識を集中した方がはるかに効果的です。だから、「できること・できたこと」を増やす経験を作る工夫に比重をかける方が理にかなっているのです。

そもそも、なぜ、何事も「中途半端で続かない」のでしょうか。それは、心理学の「シーソーモデル」という概念で説明がつきます。「実行は『やる気』と、『負担感』の力関係の中で決定される」という考え方です。

心理学のシーソーモデル

やる気よりも、負担感の方が重い状態、つまり、「やる気<負担感」だと、人は行動に移しません。「なんだかんだ言い訳をしてサボる」「精神論で無理やりやろうとして中途半端に挫折する」という状況の多くは、この状態です。

  • やる気よりも、「負担感」の方が重い状態

    やる気よりも、「負担感」の方が重い状態

反対に、負担感よりも、やる気の方が重い状態、つまり、「負担感<やる気」だと、人は行動に移すことができます。

  • 負担感よりも、「やる気」の方が重い状態

    負担感よりも、「やる気」の方が重い状態

だとすれば、解決策はシンプルです。「負担感<やる気」の状態になるような「打ち手」を実行すれば良いのです。打ち手として、最もシンプルなやり方は、「負担になっている要素を洗い出し、取り除くこと」です。

そうすれば、シーソーですから、必然的に「負担感<やる気」になりますね。まずは何が負担になっているのか、その要素を洗い出してみましょう。

やる気を大きくする方法

Aさんに、社労士資格の勉強を挫折した理由を洗い出してもらったところ、2つの「負担になっている要素」がありました。

  • 負担になっている要素

    負担になっている要素

1の要素は、電子書籍版の書籍をダウンロードすれば、取り除けます。

2の要素は、例えば「2年がかりでの合格を目指し、1年目は週5時間の勉強時間を確保する」といったような無理のない範囲での目標に下げれば、「重さ」を取り除けるのではないでしょうか。

「気合いを入れる!」といった精神論よりも、仕組みを整える方が、はるかに効果的なのです。自分の理想通りにいっていない状態にあるのだとしたら、気持ちではなく、方法論に焦点を当て、修正をかけてみてはいかがでしょうか。

執筆者プロフィール : 阿部淳一郎氏

ラーニングエンタテイメント 
代表取締役

若手の採用・育成・定着に強い人材開発コンサルタント。早稲田大学教育学部卒。筑波大学大学院(ストレスマネジメント領域)修了。保健学修士。社会人教育を行う東証一部上場企業等を経て2004年に起業。「メンタル不調者を減らし、若者の能力を引き出す」をコンセプトに人材開発業務に従事。大企業から中小・ベンチャー企業、学校、行政まで研修登壇実績は約1500本、コンサルティング実績30社。サンフランシスコ・シリコンバレーへも事業展開中。大学での就職活動領域における講師歴も長い。『これからの教え方の教科書(明日香出版社)』など著書3冊。『NHK』『日経新聞』『読売新聞』『日経アソシエ』『週刊SPA!』など取材実績も多数。