
今回は恒例の人気企画第6弾として、普段はなかなか紹介しきれないリスナーからの多彩なメッセージやお悩みに、村上さんがユーモアと独自の人生観を交えて温かく答えました。息子との関係に悩む父親へのアドバイスや文章を書くコツ、失恋時に飲むべきウィスキー、母校・早稲田大学の校歌にまつわるエピソードまで、等身大の語り口で展開。モダネアーズやブラザーズ・フォー、ウィルコといった村上さんならではのこだわりの選曲とともに、軽妙なトークが響き渡る充実したひとときとなりました。
この記事では、前半2曲について語ったパートを紹介します。
「村上RADIO」
◆Bobby Rydell「The Cha-cha-cha」
米食bakerさんからのメールです。お米を食べるパン屋さん、なんですかね? よくわかんないけど、42歳男性、栃木県の方です。
「こんにちは。いつも夫婦2人で楽しく聴いております。村上さんに相談です。私たちは訳あって大阪から栃木県に移住したのですが、どうしても関西出身者として、コミュニケーションにおいて馴染めないところがあります。例を挙げるなら、誰も笑ってないところで自分だけ笑ってしまう。怒ってないのに怒っていると言われる、などです。同じ関西出身者として村上さんは、関東で生き抜くにおいて、気をつけておられたことはございますでしょうか?」
はあ、そうですか。そうですよね、生粋の大阪人が北関東で生きていくのは、何かとご苦労が多いことでしょう。「逆もまた真であろう」という気もしますけど。
僕も関西生まれの関西育ちなので、東京に出てきて文化的に戸惑うことはいろいろありました。とくにユーモアの感覚というのは、関西はちょっと特殊なんですね。関西にはとりあえず「人を笑わせないとうまくやっていけない」という風土があります。
関西弁で言うと「笑かす」ということですね。僕も小説を書きながら、そういう気質を自分の中に感じることもあります。ついなんかちょっと笑えることを書いてしまうんです。時には笑うべきじゃないところでもね。
今更そういう気質を変更するのは無理でしょうから、いっそ開き直って「もっと笑かしたろか」と思って生きていくしかないんじゃないかな。逆に「怒りっぽい人だ」と思われたりするかもしれませんが。
Bobby Rydellの「The Cha-cha-cha」を聴いてください。ボビー・ライデルといえば「Forget Him」だろうというのが通り相場ですが、僕はこの曲がけっこう好きなんです。
◆The Modernaires「April In Paris」
ルナままさん、東京都の93歳の女性からメールをいただきました。今回いただいたメールの中では最高齢の方になります。
「毎回楽しく聴かせていただいております。ジャズからクラシックまで様々なジャンルの音楽を、今では入手困難なモノラル盤までを交えて、柔らかい村上様のお声と、わかりやすい語り口で、本当に至福の時間です。93歳の私には自分の来し方を振り返る時間でもあります。命ある限り聴きます」
はい、お褒めにあずかりまして、痛み入ります。そう言われると、僕も命ある限り頑張ってこの番組を続けなくてはいけないという気持ちになりますね。がんばりましょう、猫山さん(ニャア)。
もう1通、こちらは打って変わって悩める19歳の青年からのメールです。京都府の「あらら」さん。
「バイト先で嫌なことがありました。帰り道に『村上RADIO』を聴きました。僕は傷つきやすく、繊細で多感な青年です。村上さんは10代の時、どうやって精神的な痛みに向き合っていましたか?」
はい、僕も10代の頃はちゃんと傷つきやすい多感な青年でした。ほんとに。まあその年代、いろいろつらいことはあります。よくわかります。でも頑張って耐えて生きていれば、そしてうまくいけば、そのうちにそれほど傷つかない、それほど多感でもない、普通のおじさんになれます。そんな日々を楽しみにしていてください。
モダン・コーラス・グループの草分け、モダネアーズが歌います。『パリの四月』。カウント・ベイシーのこの曲の、名高いアレンジをそっくりなぞっています。
<番組概要>
番組名:村上RADIO~マイ・フェイバリット・ソングズ&リスナーメッセージに答えます6~
放送日時:10月25日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/