三井住友海上火災保険は10月22日、滋賀大学彦根キャンパスにて「自転車安全運転セミナー」を開催。自転車に乗るときは道路交通法やルールを守るよう、あらためて学生に呼びかけた。
自転車の事故ゼロを目指して
琵琶湖の東岸、彦根城に隣接する滋賀大学 彦根キャンパス。城の玄関口、大手門の前を通る内堀に沿った舗装道路は交通量も少なく、学生にとっては安心して大学に向かえる通学路になっている。
「自転車安全運転セミナー」は、三井住友海上火災保険が安心・安全な地域社会づくりの一環として実施したもので、滋賀大学、彦根警察署が協力。当日は、滋賀大学の1回生約200名が参加した。
冒頭、彦根警察署 交通課の巡査部長が講師となり近年の交通事故の状況、および道路交通法について説明した。警察庁の調べでは、直近の5~6年間において自転車関連事故件数は7万件前後で横ばいが続いている。注意したいのは、ここ数年で自転車対歩行者の事故件数が増加傾向にあること。巡査部長は自転車乗用中の死亡・重傷事故の約4分の3では、自転車側にも法令違反があることを紹介し、交通ルールを守る重要性を説明した。
2024年11月1日施行の改正道路交通法により、自転車の「ながらスマホ」の罰則が強化され、酒気帯び運転も新たに罰則の対象となった。特に、ながらスマホ(運転中の通話や画面注視)で交通の危険を生じさせた場合は、1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金となる。また酒気帯び運転および幇助(ほうじょ)も厳罰化された。運転者は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金となり、酒類の提供者、自転車の提供者、自転車の同乗者にも厳しい処罰が科される。
続いて、2026年4月1日から自転車にも適用された交通反則通告制度、いわゆる「青切符」について説明した。「16歳以上の自転車運転者が対象です。113種類の違反行為に、反則金が科される時代になりました。だからこそ今、青切符の制度を学び直しましょう」と巡査部長。
最後は、ヘルメットの重要性について。「ヘルメットは自転車運転者にとって究極の自己防衛手段です。よく“努力義務だから”と言われますが、非着用時の致死率は着用時の約2.3倍に跳ね上がります。アスファルトから自分の命を守るため、ヘルメットを着用してください」と呼びかけた。
続いて三井住友海上火災保険の担当者が登壇し、滋賀県内で実際に発生した自転車事故の事例を教材として取り上げた。発生日時は令和5年11月午後8時頃のことで、40代男性が自転車で帰宅途中にY字路交差点を直進しようとしたところ、対向車線から右折してきた自動車と正面衝突した。男性は無灯火でヘルメットも着用しておらず、一命は取り留めたものの高次脳機能障害、四肢麻痺が残る結果となった。この場合、自転車側にはどのくらいの責任が問われるのだろうか?
担当者は「信号機により交通整理の行われていない交差点における事故で、自転車が直進、四輪車等が右折の事故における責任割合は『四輪車:自転車=90:10』ですが、このケースでは自転車運転者がヘルメット着用の努力義務を果たしておらず『四輪車:自転車=85:15』となりました」と説明。担当者によると、この事例では自転車側の過失割合が15%とされ、損害額1億7,300万円に対し、賠償額は2,595万円減額されたという。
同様に、滋賀県内で昨春に10代の高校生が横断歩道を自転車で斜め横断してトラックに跳ねられた事故事例を紹介。高校生は一命は取り留めたが視覚認知が低下、健忘症候群が残存するなどして、現在もリハビリを続けている。この事例でもヘルメット未着用が考慮され、自転車側の過失割合は20%とされた。損害額1億800万円に対し、賠償額は2,160万円減額されたという。
ここで担当者は、警察庁の令和7年6月の調査を紐解き「ヘルメットの着用率は全国平均が21.2%で、1位の愛媛県は70.3%です。でも滋賀県は14.2%で30位と、まだまだ着用率が低い状況です。自分の未来を守るため、ヘルメットを着用してください」と呼びかけた。
セミナーの終了後、2人の学生に話を聞いた。普段は学校やバイト先に向かう際に、10分ほど自転車に乗っているという。これまでにヒヤッとした経験があるか尋ねると「商業ビルのガラスに映る自分の姿を見ながら走っていたら、クルマと衝突しそうになりました」「立ちこぎするような急な坂道で、こぐことに集中していたら横道からクルマが飛び出してきてヒヤッとしました」と振り返る。
今回のセミナーで初めて知ったことについては「自転車が歩道を走ることが認められている場所では、自転車は左側通行も右側通行も許されることを初めて知りました」、「ヘルメット未着用が賠償額の減額に影響する場合があるとは知りませんでした」と話す。
セミナーでは、滋賀県ではヘルメットの着用率が低い、というデータも紹介した。これについて聞くと、学生は「私も高校生の頃までヘルメットを着用していたんですが、滋賀大学に進学したら周りがしていないので、自分もしなくなりました」と明かす。ただ、今回のセミナーでその重要性を再認識し、明日からまたヘルメットを着用するという。もうひとりの学生は「自転車も軽車両なんだ、という意識が芽生えました。これからは一時停止もしなくちゃ、と思います」と話した。
このあと、三井住友海上火災保険の担当者に話を聞いた。「肌感でもここ最近、10~20代の学生が関与する自転車事故が増えているように感じます。若者の間では、クルマと衝突しても自転車側には責任が問われない、と思い込んでいる人までいるようです」と話し、自転車側にも過失が認められる事例があることを、啓発していく必要性を強調した。
どうやったら学生たちの心に残るセミナーになるか、伝え方も工夫したという。「自転車による交通事故についてピンときていない学生も多いことが予想されたので、身体に障害が残る大事故につながることや、事故による経済的な影響の大きさなどをお話ししました」と担当者。
滋賀県でヘルメット着用率が低い理由については「これはひとつの推論に過ぎませんが、滋賀県はクルマ社会なので、自転車に乗る人の大半は学生さんです。皆さん、頭が蒸れるから、髪型が乱れるから、ヘルメットのデザインがいまいちだから、と様々な理由で着用をしていないんだと思います」と話す。ちなみにヘルメットの着用率が高い県では、教育機関や県警などが連携して、大規模な交通安全キャンペーンを行っているそう。そこで今後、三井住友海上としても教育機関、県警察と連携した啓発活動を行っていけたら、と意欲を示す。
最後に、三井住友海上火災保険 滋賀支店長の武田英輝氏にも聞いた。今回のセミナーにより、学生たちにどのような変化を期待するか、という問いには「自転車は、免許がなくても乗ることができる乗り物です。いまの学生たちも、子どもの頃はなんの気なしに近所で自転車を乗り回していたと思います。けれど今春から、青切符の制度が始まりました。そこで今日のセミナーを良い機会に、いま1度、自転車の乗り方について考えてもらいたいです。セミナーでは、具体的な事故の事例も紹介しました。まずは学生さんに、これを自分ごととして捉えてもらえたらと思います」と武田支店長。
今後の展開については「やはり交通安全に向けた啓発活動は大事な取り組みのひとつです。教育機関、県警察と連携した取り組みを続けていければ」と話す。ちなみに直近では(滋賀県が発祥とされる)子どもに交通安全を呼びかけるキャラクター「とび太くん」の看板を小学生たちがペイントし、自分たちで町中の交通危険エリアに設置する活動を予定しています、とのことだった。















