ボーネルンドが2024年に大阪・うめきた公園内にオープンしたフリースクール・アフタースクール「PLAY CUBE」は、あそびを通じて子どもの好奇心や探究心を育む施設です。子どもがあそびの中で自分の「やりたい」を見つけながら学ぶ過程には、ときに大人の想像を超える成長や変化があります。

「自分が自分を生きる」を理念にするPLAY CUBEで過ごす子どもたちの様子について、PLAY CUBE共育アドバイザーの岩﨑千佳さんと、プロジェクトリーダーの池田健二さんに聞きました。

自分のやりたいことをカタチにできるように

――PLAY CUBEでの1日の過ごし方はどのように決めるんですか?

岩﨑 朝の「みんなタイム」で、各自の1日の予定を決めます。「選択タイム」で自分がやりたい活動に取り組みます。1日の終わりにある「未来タイム」では、「次に何をしたい?」を聞いています。そうすると、自然に今日を振り返ることになります。そして、「次はスライムを作りたいから材料を持ってこよう」と、次のわくわくにつながっていきます。

――1日をただ遊んで過ごすのではなく、振り返りながら次のことを考えるんですね。

岩﨑 というよりも、次何をしたいか、一歩未来のことを考えようとすると、自然と今日やったことを振り返ることになる。そして「次こんなことしたい!」というイメージが広がっていく。この繰り返しこそが、自分で自分の人生をつくることにつながると思っています。

  • 手を使って素材に触れる活動の様子

    手を使って素材に触れる活動の様子

――そんな環境の中で過ごした子どもたちには、何か変化が見られましたか?

池田 PLAY CUBEがスタートした当初は、長期間家から出られなかった子や、癇癪を起こしてしまう子もいました。特に、大人に対する警戒心が強く感じられました。スタッフを名前で呼ぶ子もいませんでした。物を投げたり大声を出したりと、今までためこんできた感情を爆発させる子どももいました。

でも、私たちはそれを止めませんでした。見ているのはもちろんつらいですが、子どもが感情を出し切るまで待ちました。すると、少しずつ変化が生まれてきたのです。

――どんな変化でしたか?

池田 Aさんは大人が苦手で、当初、大人との関わりに少し慎重な様子も見られました。そんなAさんが変わるきっかけになったのは、大阪万博でイタリア館の企画に参加したときのことでした。子どもたちが本物のアートにふれ、自画像を描いてみる機会があったんです。もともと絵を描くことが大好きだったAさんが描いた作品を見て、その場にいただれもが驚き「すごいね!」と声をかけました。

PLAY CUBEに戻ってからも、スタッフたちが「私の絵も描いて」と頼むようになり、絵を描くことが彼の表現手段になっていったんです。やがて、屋外に「似顔絵描きます」と書いた看板を立てて、お客さんの呼び込みを始めました。今ではTシャツにアートを描いたり、自分の絵のLINEスタンプを作って販売したりしています。最初のころの大人アレルギーはほとんどなく、自分のやりたいことをどんどん形にしています。

子どもの未知の姿を恐れる大人たち

  • あそび道具を手にする子ども

    あそび道具を手にする子ども

――そうした子どもたちの変化を見て、保護者の方々はどんな反応をされるのでしょうか。

池田 ボーネルンドが預かり型のスクール事業を始めること自体、一期生の保護者にとっては未知の挑戦だったと思います。でも子どもの変化を見ながら、「自分ももっと人生を楽しもう」「自分らしく生きよう」と感じてくださる方もいらっしゃいました。

一方で、子どもの変化が、必ずしも周囲の大人にとって理解しやすいものとは限りません。PLAY CUBEで過ごすうちに、少しずつ心を開き、自分の感情を率直に表現するようになったり、ときには家庭でも、以前とは違うやんちゃな一面を見せるようになったりすることがあります。そうした変化が、保護者の方には「PLAY CUBEが注意をせず、好き勝手にさせているからではないか」と映る可能性もあります。子どもの成長や変化をどう捉えるかは、大人にとっても簡単なことではないのかもしれません。

岩﨑 今のような話は、ここに限ったことではありません。私が勤めていた小学校でも、以前立ち上げたオルタナティブスクールでも、同じようなことがありました。子どもが自分らしさを出し始めると、大人はまず「荒れてきた」と捉えるんです。大人の言うことを聞かないからしつけがなっていないという話になり、それを正そうという流れになります。

大人は子どもの未知の姿を恐れてしまうんだと思います。自分たちが想像できない選択をすることを怖がっているんですよね。けれど、子どもの成長は決して「点」で語れるものではありません。私は、かつて国立の附属小学校で未来そうぞう科という新しい取り組みをした当時、たくさん批判を受けました。ですが、そのときの子どもたちが大学4年生になった今、「あの時の教育があったから今の自分がある」と言ってくれています。

自分らしさを大事にすることの価値がわかるまでには、時間がかかります。だからこそ、大人の見方を変えていく必要があると思っています。

  • さまざまな絵が描かれた黒板

    さまざまな絵が描かれた黒板

自分らしさを守り、他者をリスペクトすること

――とはいえ、「自分らしさ」と「自分勝手」を間違えてしまうこともありそうです。

岩﨑 そうですね。「何でもかんでも自由でいい」ということではありません。あるとき、校外学習へ行く途中で、駅という公共の場で走り回ってしまうような場面がありました。そこで、子どもたちと一緒に考えたのは、他者へのリスペクトを欠くような行動は、自分らしく生きることなのか、ということです。

PLAY CUBEでは、「自分が自分を生きる」という理念とともに、「自分を愛し、他者をリスペクトする」ことも大切にしています。

私たちは子どもを制御しようとは思っていませんが、他者をリスペクトするという軸から外れるときには、一緒に考えます。そして他者をリスペクトすることの大切さを体感できるように、月に一度は校外学習を行っています。社会との接点を持つことで、「自分だけじゃなくて、相手も大切にするのはどういうことか」を経験の中から学んでいくんです。

――ここで育っている子どもたちに、どんな未来を歩んでほしいと思っていますか。

岩﨑 「自分を信じて進んでほしい」と伝えたいですね。これから先、自分のあり方について周囲からいろいろ言われることもあるかもしれません。私たちの学びは、一般的には伝わりにくいかもしれません。でも、伝わらないということは、次世代のことをやっている証拠だと考えています。いずれ時代が追いつくときが来ますから、自信を持って進んでほしいです。

池田 ここでの子どもたちの過ごし方を見ていると、明日にでも起業できそうな行動力を持っていると感じます。これから生きていくなかで、「空気を読めない」「変わっている」と言われることもあるかもしれません。でも、行動し続ける力さえあれば、何度でも立ち上がれるはずです。

やりたいことに向かって進み続けている限り、それは挑戦の途中。道を変えても、つまずいても、立ち止まらずに歩き続けていてほしい。その力は、もうすでに育ち始めていると思います。いつか大人になって、みんなの挑戦が実を結んだときには「最初は俺の名前を呼んでくれなかったよな」なんて笑いながら、一緒にご飯でも食べられたらうれしいですね(笑)。