Yu Seki & Yohji Igarashi、初ワンマンで生み出した規格外の熱狂──King Gnu勢喜遊とクラブシーンの異端児が切り拓く新たな可能性

King Gnuの勢喜遊とプロデューサーのYohji Igarashiによるユニット、Yu Seki & Yohji Igarashiが初のワンマンライブを開催。Watson、新井和輝、寺久保伶矢、Cota Mori、HANATANIら豪華ゲストを迎え、重低音と生ドラムが交錯する圧巻のステージを繰り広げた。10月28日、Zepp Shinjuku(TOKYO)で行われた東京公演初日の模様をレポートする。

生ドラム×電子音楽、二人が追求するライブの真価

Yu Seki & Yohji Igarashi(以下、YY)が活動の核に据えているのはライブだ。電子音楽の精緻なサウンドデザインと、ドラマーの身体性から生まれるグルーヴの融合は、ステージ上でこそ真価を発揮する。

昨年のフジロックとRISING SUN、今年のサマーソニックと大型フェスへの出演を重ねてきた二人が、ついに初のワンマンライブ「1st ONE-MAN」を開催。10月23日・24日の大阪公演を経て、28日・29日に迎えた東京公演の舞台は、新宿・歌舞伎町の東急歌舞伎町タワー地下に位置するZepp Shinjuku(TOKYO)だ。深夜に大型ナイトクラブ「ZEROTOKYO」としても稼働するこの空間には、海外のクラブシーンを意識して導入されたAdamson製のサウンドシステムをはじめ、360度LEDビジョン、レーザー、多数のムービングライトが備わっている。重低音と光、映像が一体となってフロアを包み込む、ダンス・ミュージックとの親和性が極めて高いベニューである。

Yohjiは以前、筆者が行ったインタビューで、勢喜遊はファッションセンスやアティチュードも含めて、クラブシーンの新たなスターになりうる存在だと語っていた。King Gnuのドラマーとして巨大なステージを経験してきた勢喜と、国内クラブシーンの異端児として頭角を現したYohji。それぞれのフィールドで培ってきた個性が、ライブハウスとクラブの機能を併せ持つ空間で交錯する。そこで二人が生み出したのは、フロアを揺さぶり熱狂の渦へと巻き込む、圧倒的な音楽体験だった。

場内が暗転すると、早くも絶叫に近い歓声で沸き立つなか、不穏な重低音が響き渡り、勢喜とYohjiが姿を現した。それぞれの楽器や機材を取り囲むように、三重の円形フレームがそびえ立つ。昨年のフジロックで初披露して以来、この近未来的なステージセットはYYのトレードマークとなっている。

勢喜遊(Photo by Takao Iwasawa)

Yohji Igarashi(Photo by Takao Iwasawa)

幕開けを飾ったのは、初のワンマンライブに向けて制作されたという新曲「techwav_1」。図太いキックが開演の号砲となり、凄まじい音圧がオーディエンスの腹まで響き渡る。そこにハイハットの細かな刻み、深いリヴァーブをまとったスネアが重なり、勢喜は祭囃子のごとくタムを乱打。レーザーで作り出された 歪な”Y”の光がスクリーンを駆け巡り、Yohjiが繰り出すベースサウンドが唸りを上げる。

Photo by Shohei Kashima

Photo by Takao Iwasawa

YYのショーは視覚的にも鮮烈だ。照明や三重のリング、フロアを取り囲むLEDビジョンが二人の演奏とシンクロし、光と映像が目まぐるしく変化しながら空間を彩る。序盤3曲はBPM140前後をキープ。ストイックなサウンドで、じわじわとフロアの熱を高めていく。2曲目「ID_01」では、飛び交うボイスサンプルに呼応するように左右のリングが交互に点灯し、楽曲のミニマルな魅力を際立たせていた。

そこからシームレスに「ID_02」へと移行。カラフルなシンセの旋律が幾重にも重なり、ユーフォリックな音世界が広がる。天井のミラーボールが輝くなか、四つ打ちのビートに乗って反復するフレーズが、フロアを陶酔感で包み込んでいく。

メロディアスな音像に浸っていると、演奏が突如スピードアップ。それまでステージ前面を覆っていた紗幕が落ち、何本もの赤いレーザーが飛び交うなか「SUPERMARKET」へと突入。狂犬さながらのドラムが炸裂し、凶暴なワブルベースが唸りを上ると、客席からも威勢のいい「Oi!」コールが巻き起こる。数曲を費やしたビルドアップを経て、一気に解き放たれる痛快なドロップ。その爆発的な勢いをさらに加速させ、「DBID_01」「DBID_02」「I Gotta Feeling」と未発表曲を3連投。BPM174の高速ビートでアクセルを踏み込み、巧みにギアを切り替えながら疾走する。

Photo by Shohei Kashima

豪華ゲストが次々登場、ジャンルを越える化学反応

すでに凄まじい熱気だが、そのピークをさらに押し上げるべく、中盤はゲスト陣が入れ替わり登場。トップバッターを飾ったのは寺久保伶矢だ。新世代ジャズシーンの旗手は、勇壮なトランペットだけでなくボーカルでも存在感を発揮する。「HYH」は後半で大きく表情を変え、フレッド・アゲインとカトリエル&パコ・アモロソによるアンセム「Beto's Horns」を彷彿とさせる展開に。勢喜が『THE FIRST TAKE』でカトパコと共演したことや、前述のインタビューでYYがフレッド・アゲインへの共感を語っていたことも思い起こさせる。ホーンのリフに合わせて、「踊れ!」とフロアを煽る勢喜。ゲスト陣へのシャウトアウトを除けば、これがこの日唯一のMCだった。

寺久保伶矢(Photo by Takao Iwasawa)

寺久保伶矢(Photo by Takao Iwasawa)

さらにそこへ、King Gnuの盟友・新井和輝がジョイン。ヒーローの風格を漂わせながら、弾力に富んだベースラインで会場の空気を塗り替える。新井と寺久保を交えた「RAW」は、フライング・ロータスやLAジャズシーン周辺にも通じるスピリチュアルな音像をまとった、曲名どおりの生々しいファンク・ナンバー。かつて勢喜や新井が腕を磨いたセッションシーンを思わせる、フィジカルで即興性に満ちた演奏が繰り広げられた。

新井和輝 & 寺久保伶矢(Photo by Takao Iwasawa)

新井和輝(Photo by Takao Iwasawa)

新井和輝(Photo by Takao Iwasawa)

そんな粘り気のあるジャムから一転、「AVNYVIBES」でPERIMETRONのCota Moriが割って入ると、一気にパンキッシュで直線的なノリへと変貌。アジテーションさながらに言葉を吐き出し、カメラを奪って自らの顔をスクリーンに映し出したかと思えば、円形セットの隙間をよじ登る。やりたい放題のパフォーマンスで、ステージに混沌をもたらした。

Cota Mori(Photo by Takao Iwasawa)

新井和輝 & Cota Mori(Photo by Takao Iwasawa)

新井和輝 & Cota Mori(Photo by Takao Iwasawa)

続いて登場したのはHANATANI。勢喜がロンドン留学中の語学学校で知り合ったという謎多きラッパーは、「BAMBOO」「wagwan」の2曲で低くダークな声を響かせ、グライムにも通じる切れ味鋭いフロウを繰り出す。共演者それぞれの個性を引き出しながら、ジャンルの垣根を軽々と越えていく。この拡張性や懐の深さも、YYの大きな魅力だ。

HANATANI & Cota Mori(Photo by Takao Iwasawa)

HANATANI(Photo by Takao Iwasawa)

Watsonも登場、怒涛の後半戦

怒涛の後半戦へ。アグレッシブかつトリッピーな「BAD」を経て、2ndシングル「Tombo feat.Daichi Yamamoto」のリミックス・バージョンを投下。原曲に参加したDaichiのラップを切り刻み、ハーフタイムの重厚なビートを前面に押し出す。大胆に解体・再構築したアレンジは、新しい学校のリーダーズ「Pineapple Kryptonite」のEDMリミックスも手がけたYohjiの真骨頂だろう。続く「ID_03」では一転して四つ打ちへとなだれ込み、YY流のロウ・ハウスとでも呼びたくなるサウンドを展開する。

ここで満を持して、勢喜と同じ徳島出身のラッパー・Watsonが登場。初ワンマンの開催直前、10月21日に滑り込みでリリースされた新曲「Stones feat. Watson」を披露する。何気ない日常のワンシーンを、独自のユーモアと言語感覚でパンチラインに変えてしまうのが彼の持ち味。飄々とした様子で登場すると、〈スキルで出す威圧感/稼げてねぇなら気が向かん/中学校の時着たプーマ/お下がりならいいや言った〉とリアルな言葉を吐き出し、颯爽と去っていった。

Watson(Photo by Takao Iwasawa)

Watson(Photo by Takao Iwasawa)

音楽の快楽を知り尽くした二人、熱狂のその先へ

いよいよフィナーレ。「Last Dance」では、VJが映し出す幾何学模様がカラフルに明滅し、三重のリングを光が駆け巡る。音と映像が渾然一体となり、フロアをトランス状態へといざなっていく。そこに叩き込まれる勢喜のドラムソロ。Yohjiは以前、勢喜のドラムには起承転結があり、有機的なうねりを感じさせると語っていた。楽曲が求めるビートを驚異的な精度で刻み続け、時にはドラムだけで音楽を成立させてしまう。そのプレイは離れ業としか言いようがない。

ラストを飾ったのは、YYにとって始まりの曲「Say Less」。アンセミックなイントロが鳴り響くと、この日一番の大歓声が巻き起こる。再び登場したHANATANIもフロアを煽り立て、演者も観客も最後の一滴までエネルギーを振り絞り完全燃焼。勢喜はスティックとタオルを客席に放り投げると、可愛らしく一礼してステージを後にした。

Photo by Takao Iwasawa

Photo by Takao Iwasawa

ほぼノンストップ、息を呑むような約70分の一本勝負。楽曲ごとに強力なフックが用意されているだけでなく、DJセットさながらに全体の「流れ」を緻密に計算し、巧みな緩急でフロアを掌握。グルーヴの快楽を知り尽くした二人ならではの構成力も見事だった。

何より驚かされたのは、国内のライブとは思えないほどの興奮が渦巻いていたこと。思えば近年のKing Gnuも、観客にこれでもかとシンガロングを促し、日本のライブシーンにおける「熱狂」の常識を塗り替えようとしてきた。かたやYYが追い求めているのは、クラブ・ミュージックだからこそ生み出せる、揉みくちゃになって踊り狂うような熱狂空間だ。

「いろいろやってみたいことはありますけど、まずはアルバムを出さないとって感じですね」と勢喜は語っているが、この日披露された数々の未発表曲は、二人の可能性がさらに広がっていくことを予感させた。King Gnuが結成10周年イヤーを迎えようとするなか、勢喜とYohjiの挑戦からも目が離せない。

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Photo by Shohei Kashima