Anamanaguchiが語る、パンクとチップチューンの交差点、初音ミクとのコラボ曲

ファミコンなどのゲーム音楽由来のチップチューンと、パンクをルーツとするライブバンドならではの演奏を融合させ、独自のサウンドを進化させてきたAnamanaguchi(アナマナグチ)。10月13日には、12年ぶりとなる来日公演を渋谷duo MUSIC EXCHANGEで開催した。そのライブ翌日、ピーター・バークマン(ギター/プログラミング)とアリー・ワーナー(ギター/プログラミング/ボーカル)の二人にインタビュー。昨年のアルバム『Anyway』や『スコット・ピルグリム』シリーズとの出会い、新曲の制作など、様々な話を聞いた。

―昨夜のライブでは、サポート・アクトがCHIP TANAKAでしたが、どのようにしてあのレジェンドとの共演が可能になったのですか?

ピーター:シンプルにこちらからお願いしただけなんだ。ちょうどオープニングアクトは誰がいいかと聞かれて、「CHIP TANAKAはどうですか?」って答えたんだ。そしたらわずか30分後に、彼から「出演します。ドラマーも連れていきます」という返事が来たんだよ。あのドラマーは、僕がこれまで見てきた中でも最高のドラマーの一人だったと思う。

―ライブ中に「EIGHT MELODIES」(任天堂のゲーム『MOTHER』、『MOTHER2 ギーグの逆襲』に登場する名曲)へのオマージュもやりましたよね。

ピーター:あれは2010年に僕たちが『スコット・ピルグリム』のゲーム(『Scott Pilgrim vs. the World: The Game』)のサウンドトラックを制作したことを踏まえてる。そのゲームのサウンドトラック自体が、数多くのクラシックなビデオゲームの音楽や、昔のエモやパンクへの大きなオマージュにもなってるんだ。『UNDERTALE』の作曲家、トビー・フォックスは知ってる?

―彼の曲もカバーしましたよね?

ピーター:そうそう。彼が『UNDERTALE』のサウンドトラックの楽譜を公開した時に、「Hopes and Dreams」という曲の脚注があって。僕たちの音楽からインスピレーションを受けた、と書かれてたんだよ。それを見た時に、「これはカバーしなきゃいけないね」ってなって。それで、「EIGHT MELODIES」、『Scott Pilgrim』の「Another Winter」、「Hopes and Dreams」をやって。最後は、今年リリースされたゲーム『Scott Pilgrim EX』のアルバムの曲「United by Fate」で締めくくった。すべてを一つにつなぎ合わせるようなオマージュにしたかったんだ。

―ライブではドラムがスゴくタイトだったし、低音もかなり効いていて。何よりもバンド4人だけであの音を出しているのに驚きました。それは、もっとデジタルを導入してやるのかなと想像していたからで。元々、最初からこういうライブのスタイルだったのですか? 

ピーター:ずっと同じだよ。僕たちは全員、それぞれ違うタイプのパンクとかエモとかのロック・バンドで演奏してきた。それで、初めて僕がチップチューンという音楽に出会った時に、「これを使って、自分のバンドのために曲を書いてみたい。作曲のツールとして使いたい」って思ったんだ。でも、「待てよ、これ自体がちゃんとした曲じゃないか」ってなって。そこからすぐに、「これとギターを組み合わせて、ライブで演奏しよう」という考えになったんだ。だって、その方が演奏しててもっとワクワクするからね。僕たちはいろいろ試しながら、遊び感覚でやってきたと言えるね。

―最初に夢中になった音楽は何でした?

ピーター:たぶんマイケル・ジャクソンだね。両親は車の中でいつもビートルズを聴いてたよ。あと、パンクも大好きなんだ。子供の頃、ランシドやNOFXを聴いてたし、日本のHi-STANDARDも聴いてた。「Love Is A Battlefield」がいいね。HAWAIIAN6も好きだ。僕たちの曲「My Skateboard Will Go On」は、そういうバンドからの影響でできた曲なんだ。それで高校に入ると、サニー・デイ・リアル・エステイトやアット・ザ・ドライヴインのようなサウンドを目指すようになった。

アリー:最初はニルヴァーナみたいな音楽が好きだった。8歳の時、ベビーシッターがダフト・パンクの『Homework』をかけてくれて、「こういうサウンド、かなり好きかもしれない」って思ったんだ。そこから、そういった音楽を組み合わせるまでに、10年くらいかかったと思う。

―チップチューンとかゲーム音楽に惹かれるようになったきっかけは?

ピーター:僕が高校生の時、バンド練習を地下室でやってたんだけど、休憩中に古い任天堂のファミコンを持って、『ロックマン2』をプレイしてたんだよ。そこでゲームの音楽を聴いた時に、「あれ、何か似てるところがいろいろあるな」って思ったんだ。アルペジオの感じが、自分がギターで弾くフレーズに似てるなとか。そういう共通点にスゴく興味を持つようになったんだ。だから、僕が惹かれたのは、音そのものだったんだと思う。パンクの話に戻るけど、僕はパンクの音がスゴく歪んでいるのに、同時にスゴくクリアでもあるところが大好きで。とてもシンプルだけど、そこに適切な表現や個性を込めたら、本当に意味のあるものになるんだ。そういうところにスゴく惹かれたんだと思う。

―アナマナグチの音楽って、良いメロディ、ギターのリフやコード進行だけでなく、8ビットのメロディが際立っていますよね。曲を作る時は、どちらから先に生まれるのですか?

アリー:トラッカーを使った音楽制作では、プログラミングを通じて、人間が演奏するような表現を再現することが重視されてると思う。声やギターを実際に人が演奏してるように聴かせるために、プログラミング上のちょっとした工夫を見つけていくんだ。一方、コンピューターで音楽を作る場合、必ずしもそうしたアプローチが取られるわけじゃない。例えば、ピアノを人間が演奏する時の感覚や、音を滑らかにスライドさせるような表現を再現しようとするとは限らない。ギターで弾くような音域や、人が歌うような音域を使うことも、必ずしも意識されてるわけじゃない。でも、僕はそうした要素を取り入れるだけでも、他の多くのエレクトロニック・ミュージックとは、聴こえ方も感じ方も変わってくると思ってて。もちろん、それもエレクトロニック・ミュージックなんだけど、人間ならではの自然な表現が生まれるんだ。

ピーター:僕はMacBookを、1000本の弦が張られたギターだと想像するのが好きなんだ。それに対して、ゲームボーイやチップチューンは、5弦ギターとか6弦ギターみたいなものだ。僕としては、そっちの方が簡単に扱えるからね(笑)。

―なるほどね。

ピーター:ただ、曲作りの順番という意味では、いろいろあってね。今、僕たちが作ってる曲は、プログラミングから始めて、それに自分たちがついていけるように演奏を習得していく、そういう方向に向かい始めてると思う。

アリー:僕たちの最新曲「Yeah I Guess」もそうだね。あの曲は、ルークがゲームボーイをいじりながら適当に遊んでたところから始まったものだ。そこからメロディを作って、曲ができていった。それを後になって、「よし、これをもっと発展させよう」ってなったんだ。

ピーター:そこから、「これをどうやって演奏できるようにしようか?」って考えるんだ。「ルーク、そのコードは何?」とか聞いて。

アリー:何をどう演奏するか、適切に選ぶことも大切なんだ。例えば、全く同じフレーズをそのまま弾けばいいのか、それとも別のフレーズを探して、元の音に合うように弾いた方がいいのか。そういうことも考えるんだ。

ピーター:でもやっぱり、バンドのいいところは、メンバー全員が同じ部屋に集まって、一緒にアレンジを考えることに尽きるね。

―「Yeah I Guess」は、バンド・サウンドと8ビットのメロディが、最高のバランスで融合していると思いました。アナマナグチ独自のスタイルが、ここに来てまた新たに確立されてきたのではないですか。

アリー:確かに、いろいろな要素に触れてるというか、僕たちがこれまでやってきたことが、あの1曲の中に少しずつだけど、全部入ってるような感じがするね。

―それに、歌詞もいいんですよね。人々は、ある意味でデジタルの世界に支配されているわけだけど、そこから自分自身を解放して、自分の人生を生きよう、というメッセージで。

ピーター:まさにそうだね。今の時代というのは、スゴく興味深くて。こういう状況の中で、どうすれば自由でいられるのか、みんなが考えてるわけだから。だからMVでは、ルンバに乗ったネズミを使って、そのメッセージを表現してみた。ネズミは最も実験の対象にされてきた動物なんだけど、あのネズミは自由なんだよ。

―「Yeah I Guess」はある意味、アルバム『Anyway』からの進化形という感じがするのですが、『Anyway』自体は、以前よりもライブ感のあるバンド・サウンドにしたかったわけですか?

ピーター:あのアルバムをああいう形で作った大きな理由の一つは、コロナ禍の影響もあって、お互いに一緒に過ごす時間が恋しくなったことなんだ。

アリー:ちょうど、以前よりも生楽器を使って曲を書きたいと思ってたんだ。同じタイミングだったんだよ。

ピーター:ちょうどその頃って、『Scott Pilgrim Takes Off』(『スコット・ピルグリム』のNetflixアニメ版)のサウンドトラックを作り終えたところで。

あれは完全にリモートでの制作で、みんなで同じ部屋に集まって作ったわけじゃなかった。それで、僕たちは「もうその時期が来たよ。みんなで集まらなきゃいけない」と強く感じてた。それに、アルバムに収録するよりも多くの曲を書いてた。「これはちょっと複雑すぎる」と思うような曲もあったけど、次の作品のために取っておいて、今回のアルバムはシンプルにしようと思ったんだよね。子供たちがギターを手に取って、最初のリフを弾けるような作品にしたかったから。

―制作場所にアメリカン・フットボール・ハウス(アメリカン・フットボールの1stアルバム『American Football』のジャケット写真に使われた一軒家)を選んだのはなぜですか? しかも、ヴィンテージのアナログ機材を使って、テープ録音で制作したんですよね。

ピーター:そうそう。アメリカン・フットボール・ハウスでの制作は、実は何年もかけて少しずつ形になっていったものなんだ。もちろん、アメリカン・フットボールは好きだし、特にドラマーのルークは、キンセラ兄弟が関わった、Cap'n JazzとかOwlsを聴いて育ったからね。

アリー:僕たちはPolyvinylっていう、アメリカン・フットボールと同じレーベルに所属してる。そういうつながりもあるからね。

ピーター:それに、Polyvinylが30年も続いてる、アメリカの素晴らしいインディペンデント・レーベルだということも大きい。僕たちがアルバム『USA』をリリースする時、作品自体はすでに完成していたものの、心から尊敬できるレーベルを選びたかった。それがPolyvinylだったんだ。彼らがあの家を見せてくれたんだけど、僕たちは家の前で写真を撮って、「ああ、いいね」なんて話してた。その後、コロナ禍になった時に面白いことがあって。2020年にNETHER MEANTっていう、Minecraft内で開催されたオンライン・フェスティバルがあったんだけど、NYの会場「Elsewhere」を仮想的に再現した場所があって。そこで行われたバーチャル・ライブのステージには、アメリカン・フットボール・ハウスをバーチャルで再現したものが設置されてたんだよ。出演アーティストたちは、Minecraft内で自分のアバターを使って、パフォーマンスをして。僕たちもそこに出演してたし、ドージャ・キャットも出演してた。

アリー:アメリカン・フットボールも出演してたんだ。

ピーター:あの家で制作するということについては、僕らから説得したんだ。「僕らを信じてよ。絶対にいいアイデアだから」って。最初は「何なの?」っていう反応だったけど、その後、彼らは「この家のことを本当に大切に思っている人たちが、こんなにいるんだ」って気づいたんだと思う。それで、レーベルのオーナーであるマットが他の人たちとも協力して、その家を買い取ったんだ。もう完全にボロボロで、取り壊しが決まってたからね。それでマットが、「もしそこで曲を書きたいなら、家は使える状態にしておくよ」と言ってくれたんだ。それで、僕たちはあの家でデモを作って、それから別の家に移動して、デイヴ・フリッドマンと一緒に制作した。デイヴは、フレーミング・リップス、MGMT、テーム・インパラなどを手がけてきた伝説的なプロデューサーなんだ。

―あのアルバムのギターの音は歪んでいて、ファジーな音で、いいですよね。もちろん、アナマナグチはニルヴァーナの「Territorial Pissings」をカバーしてるぐらいだから当然なのですが、まさにあのサウンドを思い出しました。それから、Crassを彷彿とさせる音だなとも思いました。

ピーター:間違いないね! 昨日、ルークはサウンドチェックの時に、CrassのTシャツを着てたぐらいだよ。あと、G.I.S.M.の「Endless Blockades for the Pussyfooter」のギターの音も最高だよね。

―『スコット・ピルグリム』についても聞きたいのですが、これまでに3作品を手がけてきましたよね。かなり大きな仕事ですが、そもそも最初はどうやって声がかかったのですか?

ピーター:当時、僕たちは大学生で、ある日メールが届いたんだ。そこには「ユニバーサルの今後のゲームのために音楽を作ってほしい」と書かれてて。「わかりました」と返事をしたんだけど、その後、半年くらいそのことを忘れてて。友達のバンドと一緒に、アメリカ中をツアーしてたんだ。ある晩、ケンタッキー州レキシントンにいて、Al's Barという小さな会場でライブをした後だった。僕たちは、その日のオープニング・バンドのメンバーの家に泊まることになって。僕は寝ようとしたんだけど、テーブルの上に『スコット・ピルグリム』のコミックが置いてあるのに気づいたんだ。それを手に取って読んでみたら面白くて。「これ、まるで自分と友達のことみたいだ。最高だな」って思ったんだ。それで翌日、バンに乗って次のライブ会場へ向かうんだけど、以前メールを送ってきた人から電話がかかってきて。「あのユニバーサルの作品というのは、『Scott Pilgrim vs. the World』なんです」って言うんだ。僕は「えっ、あれのこと? ああ、わかりました」って答えたんだけど、もしその電話が前の日だったら、作品のことなんて全く知らなかったわけだからね。……でも、本当の理由を言うと、『スコット・ピルグリム』の作者ブライアン・リー・オマリーが、かなり初期の頃から、アナマナグチのことを知っててくれて。ゲームの制作が始まった時に、彼はアート担当にポール・ロバートソンを選び、音楽は「アナマナグチを起用しなきゃいけない」って言ってくれたんだよね。

―初音ミクとのコラボレーション曲「Miku」は、どのように生まれたのですか?

ピーター:2015年のAnime Expoで、僕たちはポーター・ロビンソンのオープニングを務めたんだけど、初音ミクを生み出した会社、クリプトン・フューチャー・メディアも会場に来てたんだ。その時にミーティングもセッティングしてくれてね。毎年、ミクにはアンセムとなる曲があって、HATSUNE MIKU EXPOのテーマソングを作るんだ。それで、曲のデータを渡すから、リミックスしてくれないかって言われたんだよ。でも、そこでアリーが「リミックスじゃなくて、ミクのために曲を書かせてもらえないかな? ソフトを渡してくれたら、自分たちで曲を作るよ」って言ったんだ。向こうはスゴく驚いてたよ。それで話し合いになって、「ソフトを渡すので、是非ミクの曲を作ってほしい。それでツアーで一緒にやりましょう」ってことになった。僕たちは、2016年に北米で開催されたHATSUNE MIKU EXPOで、ミクのオープニングアクトを務めることになってたんだ。ちなみに、あのメロディはアリーが夢の中で思いついたものだよ。

アリー:曲の最初の部分だね。それを僕がピアノで形にしたんだ。メロディがスゴく変わってるし、かなり独特な雰囲気があるよね。

―今後の予定や、次の目標について聞かせてください。

アリー:まず、マデオンとのツアーだね。もうすぐ始まるんだ。

ピーター:新曲もたくさん控えてる。「Anyway For Real」って呼んでる企画があって、『Anyway』の続編というか、その次の章にあたるものなんだ。「Yeah I Guess」と、他に3曲のシングルもリリースされる予定だ。数週間後に1曲リリースされて、その後も次々と新曲が出る。どれもかなりいい曲だから、楽しみにしてるんだ。それから、『Anyway』の収録曲の別バージョンをいくつか出すかもしれない。それらをひとまとまりの企画として考えてるんだ。

アリー:すでに『Anyway』の世界から少し離れた曲も2曲くらいできてる。まだ片足は『Anyway』の世界に残ってて、あの時のレコーディングの感覚も引き継いでるんだけど、もう片方の足は次のステップに踏み出してる、そんな感じの曲になってる。

<リリース情報>

ANAMANAGUCHI

「YEAH I GUESS」

配信中

https://silentrade.ffm.to/anamanaguchi-yeah-i-guess

<ライブ情報>

Anamanaguchi ツアー日程

10/28 - オクラホマシティ(オクラホマ州) - Tower Theatre !

10/29 - ダラス(テキサス州) - South Side Ballroom !

10/30 - ヒューストン(テキサス州) - House of Blues !

10/31 - オースティン(テキサス州) - ACL Live at The Moody Theater !

11/04 - ナッシュビル(テネシー州) - Brooklyn Bowl !

11/05 - アトランタ(ジョージア州) - The Eastern !

11/06 - ローリー(ノースカロライナ州) - The Ritz !

11/07 - ワシントンD.C. - Echostage !

11/10 - ノーフォーク(バージニア州) - The NorVa !

11/12 - フィラデルフィア(ペンシルベニア州) - Franklin Music Hall !

11/13 - ボストン(マサチューセッツ州) - Big Night Live !

11/14 - ブルックリン(ニューヨーク州) - The Great Hall at Pacha NYC !

11/19 - トロント(カナダ) - HISTORY !

11/20 - デトロイト(ミシガン州) - The Majestic Theatre !

11/21 - シカゴ(イリノイ州) - Radius !

* = Covet & Drook と共演

# = Covet & sueter7 と共演

! = Madeon's Victory Live Tour

Official HP:https://anamanaguchi.com/