ところが、相手の反応を読むことに長けた弥生にも、思いどおりにできない人物がいる。自分が当選へ導いた雅だ。

雅は、自ら立ち上げた議連に人が集まらず、無所属で物事を進める難しさに直面する。そこで選んだのが、それまで拒んできた父の勧めを受け、国自党へ入る道だった。「父に負けるようで嫌だ」という感情と、「何もできずに終わりたくない」という目的を、自分なりに整理した結果である。

その選択が正しいかどうかよりも、ここでは雅が自分で答えを出したことに注目したい。第2話では、弥生が雅の見せ方を組み立て、選挙に勝たせた。しかし、候補者として演出できても、その人物の意思まで自由にできるわけではない。弥生の切り札は、自分で次の一手を選び始めた。

これが気に入らない弥生は、雅に内緒で「ウッシー」のアカウントを作り、ポンズネクストと国自党のつながりを動画で明かす。秘書として本人の意向に従うより、自分の筋を優先する。仕事はできるが、指示どおりには働かない。雇う側にとっては、なかなか難しい人材である。

ただ、この扱いにくさこそ、弥生の魅力でもある。相手とは冷静に取引できるのに、自分が納得できないことは飲み込めない。計算高い泥棒の中に、計算だけでは片づかない意地がある。その意地が作戦を大胆にし、同時に、彼女の行動を読み解く手がかりにもなる。

そして、雅が自分で考えた末に選んだ道にも、将門の仕掛けが潜んでいた。助言者として現れた宇都宮みさきは、実は将門による罠だったのだ。

弥生が雅の決断に反応して動いていたとき、将門は、その決断に至る道筋へ先に手を伸ばしていた。この時間差に、相手の手強さが表れている。

見え方を操る女に「見え方」の反撃が来る

もちろん、弥生も無防備に動画を投稿したわけではない。休日のポンズネクストへ忍び込み、そこから発信する。発信元をたどられることを見越し、相手の会社を投稿場所に選ぶ念の入れようだ。さらに、金もごっそり持ち去っている。

将門に疑われた際には、自分たちの会話を誰かに聞かれたのだと、慌てたふりまでしてみせる。調査、侵入、盗み、演技。いくつもの技が一つの作戦としてつながり、今回も弥生が一枚上手だったと思わせる。

だからこそ、その後の反撃が効く。

ポンズネクストの社長を別人に置き換えた動画が、大量に拡散される。弥生が調べ上げた事実に、別の像がかぶせられていく。証拠をつかんで公開すれば優位に立てるはずが、公開されたものの見え方そのものを変えられてしまうのだ。

第2話で弥生は、雅の英語力や懸命に走る姿を使い、人々の視線を操った。今回は、その弥生が「どう見えるか」をめぐる反撃に焦る。自分が得意とする勝ち方を、相手も使える。この対称性が、化かし合いを一段面白くしている。

ここで弥生の有能さが損なわれないことも大切だ。彼女は十分に調べ、先を読み、追及への備えまで用意していた。それでも押し切れないから、対する将門の存在が大きくなる。主人公のうっかりで生まれる危機とは違う、手練れ同士の勝負の緊張感がある。

弥生は会社へ忍び込み、金を盗んだ。一方、将門の仕掛けは、頼れる助言という顔で雅の懐へ入り込み、その選択にまで影響を及ぼしていた。鍵を破って入る泥棒と、相手に扉を開けさせる仕掛け人。侵入の手際では、どちらも負けていない。

札束を持ち帰ったのは弥生だ。だが、その間に雅の進路へ手をかけていたのは将門だった。盗みに成功することと、勝負に勝つことは同じではない。戦利品を数えている間に、こちらの切り札まで動かされている。この化かし合いで次に弥生が奪い返すべきものは、金ではない。作戦の“主導権”であろう。

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