近年、着るだけで疲労回復を促す衣類の人気が高まっている。特に、2023年2月に発売を開始した一般医療機器「Recoverypro Lab.(リカバリープロラボ)疲労回復ウェア」は、「出版社が作ったリカバリーウェア」として話題を呼び、売り上げ数はシリーズ累計で95万着を突破!

  • 「「Recoverypro Lab.(リカバリープロラボ)疲労回復ウェア」販売の様子

    「「Recoverypro Lab.(リカバリープロラボ)疲労回復ウェア」販売の様子

この大ヒットを支えているのが、宝島社のリカバリーウェア事業部部長の天野真里花さんだ。もとは雑誌編集者だったという天野さんが、ヘルスケア領域でヒットを支えてきた背景には何があるのか? そこには、読者を第一に考える商品づくりがあった!

  • 宝島社リカバリーウェア事業部部長の天野真里花さん

    宝島社リカバリーウェア事業部部長の天野真里花さん

飲み会で社長に直談判。その後、事業部部長に就任

――まずは、天野さんがリカバリーウェア事業部の部長に就任された経緯をお聞かせください。

私はもともと、ファッション誌『InRed』の編集部で編集者として勤務していました。その後、産休と育休を経てマーケティング局へ異動となり、自社ECサイトの「宝島チャンネル」で販売や新規事業の立ち上げなどを担当していたのです。そして、その頃に新規事業の企画がありコンペに提出したのですが、残念ながら不採用になってしまい……。そんな時期に社内で飲み会が行われ、社長の隣の席に偶然座ったことから、社長に企画への思いを伝えました。

――社長に直々に、どのようなことをお話になったのですか?

「この企画の何がダメだったんですか?」とお聞きしました。そして、「私は会社の売り上げや利益に貢献したいです」と。宝島社のおもしろいコンテンツを作るという文化が最高に好きなので、その文化を大切にしながらも、利益に貢献したいとお伝えしたのです。そしたら、その数ヶ月後にリカバリーウェア事業部が発足し、私が専任で業務を任されることになりました。

――直談判が功を奏して、部長職に抜擢されたのですね。

いえいえ。飲み会での発言で熱意を伝えられたことは大きかったのですが、それ自体が直接の決定打ではなく、以前からECサイトでリカバリーウェアの販売に関わっていましたし、雑誌『大人のおしゃれ手帖』の読者の会である「ミモザ会」と編集部の共同開発の商品を担当していた背景もあります。

ですので、今回の場合は、そういったマーケティング局でリカバリーウェアに携わった経験が、今の事業部での仕事につながったのだと感じています。

――宝島社には、楽しみながらモノづくりに取り組むという社風があるからこそ、新たな試みとしてリカバリーウェア事業部が発足したのでしょうか。

そうだと思います。出版社の取次店は、従来は書店やコンビニのみです。その販売経路に対し、リカバリーウェアは書店以外にも展開できるというメリットもあり、事業部化されました。また、社内には「これまで培ってきたノウハウを活かして新しいことを始めよう」という雰囲気がありますし、この変化に柔軟な社員が多いのも特長です。

  • 「Recoverypro Lab.(リカバリープロラボ)疲労回復ウェア」公式サイト

    「Recoverypro Lab.(リカバリープロラボ)疲労回復ウェア」公式サイト

――初めてのことにチャレンジしやすい会社なのですね。

そうですね。そもそも、リカバリーウェアの通常商品を最初に開発したのは編集者です。着心地の良い生地に仕上げるために、日頃お世話になっているスタイリストさんやモデルさんなどファッションのプロの方々にも意見をもらいながら、こだわり抜いて作り上げました。

弊社はファッション業界とのつながりが深いことに加え、雑誌の付録作りを継続して行っていることで、キャラクターの権利元とは長年のお付き合いがあります。その関係性をもとにキャラクターデザインの商品を開発しやすい利点もあります。

書店販売を開始するや否や、反響が急速に拡大!

――事業部が発足してからの歩みと、販路拡大を行ったプロセスを教えてください。

事業部には現在8名の女性が在籍しているのですが、発足当時は私を含め2名でした。初めはECサイト「宝島チャンネル」で販売をスタートさせ、初期のポップアップストアでは、編集部出身のメンバーが図面を引き、販促物や商品の見せ方まで手作りで準備しました。 雑誌の誌面制作で培った「キャッチコピーの立て方」や「見やすいレイアウト」といった経験が、店頭でのディスプレイに非常に役立ちましたね。その後、百貨店などでも店舗展開を広げてきました。

――当初は、宝島社の社名を前面に出していなかったとお聞きしました。

そうなんです。一般医療機器である疲労回復ウェアを出版社が手がけることに対して社内で慎重な見方もあり、あえて社名を伏せて展開していました。ところが、展示会で「実は宝島社で作っている」とお伝えすると、「あの宝島社が?」という意外性と安心感から、非常に好意的に受け止めていただいて。

そこから「出版社が作ったリカバリーウェア」として打ち出す方針に切り替えたところ、より多くの方に興味を持ってもらえるようになりました。そして、生地のなめらかさや着心地の良さという機能面でも、「ずっと着ていたい」などの高い評価をいただくようになるのです。

――その後、書店での販売もスタートさせたとか。

はい。出版社ならではの既存ネットワークを活用して、スピーディーに展開店舗数を増やすことができました。また、百貨店での出店でも、お客様の列ができるなど予想を超える反響をいただきました。

  • 百貨店での催事出店の様子

    百貨店での催事出店の様子

  • 百貨店での催事出店の様子

    百貨店での催事出店の様子

読者の悩みに寄り添う「編集者視点」の商品を届けたい

――商品企画において、特に意識されているポイントは何ですか?

読者やお客様の「生の声」を聞いて、皆さんの日々の悩みが解決できるよう提案をすることです。『InRed』の編集部時代、女性の悩みに寄り添う「冷え性特集」や「少ない服での着回し企画」などを考えていた経験がベースにあるので、女性のニーズのキャッチは得意なほうだと思います。

宝島社は、女性誌が9誌あり、ムックなども女性向けに開発される商品が多く、公式ECサイト「宝島チャンネル」の会員も女性がほとんどです。ですので、編集者が企画するリカバリーウェアも、自然と、女性が日常で取り入れやすく、ハッピーになれるデザインのものが多いと思います。

――女性が前向きになれる商品に仕上げるために、具体的にはどのような工夫をなさっているのでしょうか。

たとえば50代以上の女性向け雑誌『大人のおしゃれ手帖』の読者会である「ミモザ会」の参加者からは、「部屋着でも上品に見せたい」「急な来客時にそのまま対応できるルームウェアが欲しい」「家事がしやすいデザインにしてほしい」などのご意見をいただきました。

そこから、品のある絶妙なグレージュの色味や、顔周りが明るく見えるパープルのウェアを開発したり、水仕事の際に腕まくりしやすいよう袖口をリブ仕様にしたりと、品の良さと実用性の両立を目指しました。また、店頭で寄せられた声をもとに、身幅にゆとりを持たせながら丈感を短めに調整した「ゆったりM」というサイズ展開も開発しました。

  • 「大人のおしゃれ手帖監修 上品だからおしゃれ着にも! 体型カバーが叶う疲労回復ウェアRecoverypro Lab.プレミアム」(1万4,900円)

    「大人のおしゃれ手帖監修 上品だからおしゃれ着にも! 体型カバーが叶う疲労回復ウェアRecoverypro Lab.プレミアム」(1万4,900円)

  • 「Recoverypro Lab. 疲労回復ウェア/長袖クルーネック・ロングパンツ・パープル」(長袖 4,950円、ロングパンツ 4,950円)

    「Recoverypro Lab. 疲労回復ウェア/長袖クルーネック・ロングパンツ・パープル」(長袖 4,950円、ロングパンツ 4,950円)

大ヒットに驚き! これからも「喜んでもらう」を軸に

――今後の事業展開についてご教示いただけますか?

リカバリーウェアの規模拡大だけを目的にするのではなく、読者やお客様の悩みを解決できるような、宝島社らしい新しいカテゴリーの商品展開も視野に入れています。10月14日には弊社の雑誌4誌とのコラボ商品を発売予定で、腹巻付きのウェアなどを、各編集部が主軸となって作り上げました。これからも、出版社の強みを活かしてお客様を飽きさせないものを発信していきたいです。

――それでは最後に。天野さんは、編集者、そしてマーケティングのお仕事を経てリカバリーウェア事業部の部長に就任なさいました。これまでのご自身のキャリアを踏まえたうえで、将来のビジョンをお聞かせください。

私自身は、偶然の出会いによって今に至っていると考えています。ヒット商品を届けるというゴールを見据えていたわけではなく、自然な流れのなかで事業を進めてきました。ですので、ここまで大きなことになるとは、私だけでなく会社のみんなが予想しておらず、全員であたふたしているところです(笑)。

これからも、編集者として培った「読者に喜んでもらいたい」という気持ちを軸に、たくさんの人に、リカバリーウェアを届けていく仕組みづくりや、商品の企画提案をしていきたいと思います。

  • 将来のビジョンを語る天野さん

    将来のビジョンを語る天野さん