Fontaines D.C.が語る音楽的ルーツ、ロザリアとの共作秘話、新作『Dopamine Chamber』の舞台裏

米Rolling Stoneのオフィスを訪れたフォンテインズD.C.(Fontaines D.C.)のグリアン・チャッテンとカルロス・オコンネルが、自身の音楽ライブラリをシャッフルし、ランダムに再生された楽曲にまつわる思い出や影響を語る「Song Shuffle」に挑戦した。スピリチュアライズドやザ・ナショナル、エルヴィス・コステロとの出会い、メンバー同士の共同生活、そして通算5作目となるニューアルバム『Dopamine Chamber』の制作、ロザリアとのコラボレーションまで。2人が音楽への愛情と創作の舞台裏を語った。

Producer & Host: Leah Lu

スピリチュアライズド「Lay Back in the Sun」

カルロス:ダブリンの「Forbidden Fruit」というフェスティバルに関連したライブで、彼らを観たことがあるんだ。フェスの翌日に開催された、どちらかというと単独公演に近いイベントだったと思う。パティ・スミスがヘッドライナーで、スピリチュアライズドがサポートを務めていた。でも、そのときは彼らの音楽がまったく理解できなかったんだ。

―どんなところがしっくりこなかったのでしょう?

カルロス:ものすごくサイケデリックで、レーザー光線が飛び交うような音楽だったから、「なんなんだ、これは?」って感じだった(笑)。

―その日はパティ・スミスを観に行っていたわけですね。

カルロス:そう。でも1年くらい経ってから改めて彼らのアルバムを聴いてみたら、すっかり夢中になってしまった。その後、何度も一緒にライブをする機会があったんだけど、本当に素晴らしかったよ。

―パティ・スミスの作品で、音楽でも文学でも、特に好きなものはありますか?

カルロス:やっぱり『Horses』だね。あれは名盤だと思う。それから、彼女がカバーした「Hey Joe」も素晴らしい。あれはシングルだったよね? もう1曲、オリジナル曲が収録されていて……「Piss Factory」だったかな。もし曲名を間違えていたとしても、僕の人間性とは関係ないからね(笑)。

ザ・タブス「Illusion pt. II」

グリアン:ロンドンで彼女と一緒に暮らし始めた頃、彼女が教えてくれた曲なんだ。初めて聴いたとき、驚くほど説得力のあるレトロなサウンドだと思った。いや、レトロというのもちょっと違うな。自分たちの音に揺るぎない確信を持っている、そんな印象だったんだ。

ジョニー・マーの影響が色濃く感じられる一方で、ボーカルにはザ・ガン・クラブを少し思わせるような、素晴らしい声がある。彼らには独特の化学反応があって、本当に新しい音楽を生み出していると思う。この曲を聴くと、ろくに食べるものもないような時期を思い出すんだ。安ワインが血液の半分を占めているような状態で、狂ったように街を駆け回って、恋に夢中になっている。そんな感覚だね。

プライマル・スクリーム「Everybody Needs Somebody」

カルロス:素晴らしい曲だよね。初期のプライマル・スクリームには、こういうアメリカーナの影響があったんだ。一般的に知られている彼らのイメージとは、少し違うかもしれないけど。

彼らはメンフィスでアルバムを制作したんだけど、確かレーベル側はあまり気に入らなかったんじゃないかな。それで、世間がプライマル・スクリームに求めているイメージに合わせて、別の形に作り変えたんだと思う。その後、当時のメンフィスでの録音を改めて取り上げて、オリジナルの形でリリースしたんだ。確か現地の素晴らしいミュージシャンたちも参加していたはずで、聴いていると、本格的なアメリカーナのアルバムだということがよくわかる。

―フォンテインズD.C.は現在5作目のアルバムを迎えたところですが、将来、過去の作品を別のスタイルに作り直してリリースする可能性はありますか?

カルロス:うん、それも悪くないと思う。

ザ・ナショナル「Mistaken for Strangers」

グリアン:僕がさまざまな音楽に触れるきっかけになったのは、両親がお互いのために作っていた、車で聴くためのミックステープだったんだ。

子供の頃、通っていた学校が家からかなり遠かったから、車で移動する時間が生活の大きな部分を占めていた。いつも同じミックステープを繰り返し聴いていたんだけど、僕が13歳くらいの頃だったかな。その頃に出た新曲として、この曲が加わったんだと思う。

とにかく歌詞が素晴らしい。マット(・バーニンガー)が言葉を自在に操って、遊んでいるような感覚が大好きなんだ。もちろん、バンド全体の演奏も素晴らしい。この曲のドラムは驚異的だし、プロダクションも最高だよ。

冒頭のギターなんて、下水管の中を石ころが転がっていくような音がする。ああいうプロダクションやサウンドの要素は、僕らの作品にも入り込んでいると思う。例えば「Bloomsday」にも、少しその影響が感じられるんじゃないかな。

カルロス:彼は歌詞を書くことに関して、本当に並外れた才能を持っているよね。

―ソングライティングが素晴らしいし、ユーモアもある。

グリアン:そうなんだ。彼の才能は、ある意味では余分とも思えるような言葉の使い方に表れていると思う。例えば「silvery silvery Citibank」というフレーズ。あえて「silvery」を2回繰り返すところに、言葉をジャグリングするような遊び心がある。そういう表現には、すごくエネルギーが宿っているよね。

エルヴィス・コステロ「Mystery Dance」

カルロス:名盤『My Aim Is True』に収録されている曲だね。このアルバムはグリアンが教えてくれたんだ。バンドを始めたばかりの頃、僕らもこの作品から少なからず影響を受けていたと思う。

―音楽的には、どんなところに影響を受けたのでしょう?

カルロス:とにかくメロディが引き締まっていて、鋭さがあるのに、ものすごく洗練されているんだ。コステロはこのアルバムで、初期のロックンロールを形作っていたさまざまな要素を取り入れながら、まったく新鮮な音楽に仕上げている。今聴いても、本当に新鮮に響くよ。間違いなく今でも素晴らしいアルバムだと思う。

僕がコステロを知って特に衝撃を受けたのは、昔のライブ映像だったんだ。ドイツかオランダでの公演だったと思う。「Rockpalast」という番組の映像かな。演奏は信じられないほどタイトなのに、どこか制御不能な勢いがある。クリックも何も使っていないだろうし、全員が汗だくになって演奏している。コステロは眼鏡越しにカメラを真っすぐ見つめていて、顔から汗が滴り落ちているんだ。あれは史上最高にクールなライブ・パフォーマンスだと思うよ。

ドクター・ジョン「Such a Night」

グリアン:この曲を好きになったのは、トム(・コール:Dr)とアパートで一緒に暮らしていた頃だったと思う。実は、僕らはほとんど全員、あのアパートに住んだことがあるんだ。トムがダブリンに部屋を借りていて、僕らはみんな、どこかのタイミングで彼のルームメイトになっていた。

―それぞれ違う時期に?

グリアン:そう、時期は別々だよ。ただ、僕とカーリー(コナー・カーリー:Gt)は4年ほどの間、いつも一緒に行動していたけどね。

―それは微笑ましいですね。

グリアン:僕は間違いなく、トムにとって一番きれい好きな同居人だったと思うよ。それだけじゃない。一番クールで、一番いい奴で、一番親しみやすくて、一番謙虚な同居人でもあったんじゃないかな(笑)。

グリアン:それでドクター・ジョンの「Such a Night」だけど、とにかく楽しい曲なんだ。「この曲をかけながら、みんなでアパートを掃除していた」なんて言えたら素敵なんだけど、トムがほうきを持って掃除しているところなんて、一度も見た記憶がないからね(笑)。でも、本当に楽しい曲だよ。

―この曲をかけるのに最高のシチュエーションは? トムが掃除をしているときでしょうか。

グリアン:ははは(笑)。僕にとっては、すごく朝らしい曲なんだ。とにかく活気に満ちているからね。だから、朝6時になってもまだ寝ずに起きているときにかけるのがいいかもしれない。

「成功」の基準、ロザリアとの共演秘話

―前作『Romance』は大きな成功を収めましたが、新作『Dopamine Chamber』では何を一番の目標にしていましたか?

カルロス:僕にとっては、前作の成功に見合う作品を作れたと実感することだった。期待を下回るような作品にはしたくなかったし、同じことの繰り返しにもしたくなかった。その目標は達成できたと、かなり自信を持って言えるよ。

―皆さんにとって、成功の基準とは何でしょう?

グリアン:僕の答えははっきりしているよ。今でもメンバーと同じ部屋に集まって、楽器を手に演奏することを楽しめること。そして、そこから新しいインスピレーションを得られることだね。幸いなことに、今もそういう状態が続いているんだ。例えば、ほかのメンバーがただCのコードを鳴らしただけでも、自分で同じコードを弾くより、はるかに面白く感じる。なぜだかわからないけどね。

―新作の中で、ファンに聴いてもらうのが一番楽しみな曲は何ですか?

グリアン:ロザリアとのデュエットかな。

―そのコラボレーションは、どのように実現したのでしょう?

グリアン:特に僕ら2人は、ずっと前から彼女の大ファンだったんだ。確か『Romance』を制作していた頃から、彼女に声をかけてみようかという話はしていたと思う。実際に連絡したのは、アルバムのミックスがほぼ終わって、マスタリングを迎えようとしていた頃だったね。

カルロス:マスタリングの4日前だった。

グリアン:そう、4日前。カルロスから電話がかかってきて、「ここで思い切って声をかけて、興味があるかどうか聞いてみないと、きっと後悔すると思う」って言われたんだ。彼女が僕らの音楽を気に入ってくれているらしい、という話も耳にしていたからね。

それで4曲を送ったんだ。すると彼女から「Where Is Gone?」に興味があるという返事が来た。そのわずか1日か2日後には、ボーカルの録音が丸ごと届いたんだよ。しかも、その録音のクオリティが信じられないほど高くて、本当に驚いた。

―「Where Is Gone?」は、誰かと対話するような形がよく似合う曲だとも感じます。

グリアン:そうだね。誰かが加わることで、曲にもうひとつの次元が生まれるんじゃないかと思っていた。でも、実際にはそれ以上だったよ。2足す2が5になるような、そんな化学反応が起きたんだ。

―フォンテインズD.C.のアルバムで、ほかのアーティストを迎えてデュエットするのは初めてですよね? その最初の相手がロザリアというのは、すごいことですね。

グリアン:本当に最高だよ。

―皆さんもほかのアーティストの作品に参加していますよね。グリアンはKneecapやHindsとも一緒に歌っています。

グリアン:僕はギャラが安いからね(笑)。

【関連記事】Fontaines D.C.が語る『Dopamine Chamber』──現代最重要バンドの音楽的変革、混沌の世界で「光」を探し求めて

From Rolling Stone US.

フォンテインズD.C.

『Dopamine Chamber』

発売中(2026年10月16日リリース)

国内盤CD:解説書・歌詞対訳付き/ボーナストラック追加収録

詳細:https://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=15975

Fontaines D.C. JAPAN 2027

2027年1月28日(木)東京・SGC HALL ARIAKE

OPEN 18:00 / START 19:00

チケット:アリーナスタンディング 11,000円 / スタンド指定席 11,000円

2027年1月29日(金)名古屋・DIAMOND HALL

OPEN 18:00 / START 19:00

チケット:スタンディング 11,000円(ドリンク代別)

2027年1月31日(日)大阪・なんばHatch

OPEN 17:00 / START 18:00

チケット:1Fスタンディング 11,000円 / 2F指定席 12,500円(ドリンク代別)

チケット情報

オフィシャル先行予約(2次):2026年10月16日(金)12:00〜10月25日(日)23:59

一般発売:2026年10月31日(土)10:00〜

公演詳細:https://smash-jpn.com/live/?id=4784