見慣れた段ボールが、人を乗せて進む船に!? 広島県尾道市で、小学生と保護者が段ボールボートを作り、プールで漕いでレースに挑戦するイベントが開かれた。

  • 完成した段ボールボート

    完成した段ボールボート

参加したのは子どもと保護者、計51名。船体の組み立てから飾り付け、乗船まで、親子で一日かけて取り組んだ。

この記事では、50名以上の親子が参加した船づくりから、プールで行ったレースまでの様子を紹介する。

まずは船の話から。親子で一日の挑戦がスタート

10月4日、尾道市向島町B&G海洋センターで開催された「親子で作ろう 段ボールボートで君もキャプテン!」。海事都市尾道推進協議会(事務局:中国運輸局・尾道市)と中国地区内航船員対策協議会が主催した。

小学4〜6年生とその保護者らを対象とした教室で、定員を上回る応募が。参加者は抽選で選ばれ、当日は51名が会場に訪れた。

午前のオープニングでは、これから作る段ボールボートの概要に加え、船の種類や船員の仕事についての説明も。ただ人を乗せて移動するだけではなく、貨物や燃料の運搬といった私たちの生活に欠かせない船の世界が紹介された。

今回の体験には、船を動かす人たちの仕事を知ってもらいたいという思いもある。中国運輸局海上安全環境部の渡邉調整官は、教室の目的について「段ボールで船を作ることはもちろん、実際に船に乗ってみる体験を通して、船員の仕事に興味を持つきっかけとしてほしい」と話した。

5班に分かれて船体づくり。飾り付けも自分たちで

船の話を聞いた後は、いよいよボートづくりへ! 参加者は5班に分かれ、段ボールを加工して船体を組み立てる。製作は午前から始まり、昼休憩をはさんで午後も続いた。

プールで参加者が実際に乗船する時間を確保するため、段ボールは事前にスタッフが大まかなカットといった下準備を実施。

とはいえイベント前の段ボールはまだまだ「普通の箱」に見えるが、ここから一体、どんな船ができるのか……??

まずは段ボールを切り、パーツをそろえるところから。各班にはイベントにかかわる団体のスタッフも配置されており、子どもや保護者、スタッフが協力しながら作業を進めていく。

ボンドやテープも使いながら、確実にそれぞれの部品がつながるようにじっくり作業。子どもはもちろん保護者も熱中し、あっという間に、身長を超える大きな船体が……!!

ボートは強度を高めるため、二重にしたり、中に小さく切った段ボールを詰めるのもポイント。最後にポリシートで隙間なく覆うことも、浸水を防ぐための大切な工程だという。

船体が完成したら、飾り付けや命名も! 舵輪(ハンドル)を付けたり、フィンを付けたり、サメのような顔を描いたり……。参加した子どもからは「船を飾り付ける作業が楽しかった」という感想も聞かれ、各班の個性が光るボートが完成した。

なお、水に浮き、人を支えるイメージとは遠い段ボールだが、今回作ったボートの最大浮力は約500kg。一度に2人が乗れる構造で、子ども2人はもちろん、のちに移動したプールでは大人も実際に乗船した。

完成した船でレース! 班ごとのタイムアタック

ボートが完成すると、体育館から同施設内のプールへ移動。自分たちで作ったボートが入水して水に浮くと、参加者からは歓喜の声が!

班ごとに順番で船に乗り、まず漕ぐ練習を実施。オールを使い、2人1組で息を合わせて船を前に進めていく。

直進だけでなく、プールの端から端まで漕いだ後にはターンもあり、「漕ぐ力が想像より必要だった」と話す参加者も。子どもたちは笑顔を見せながら、自分たちで作った船を漕ぎ進めていた。

練習の後は、タイムを測るレースに挑戦。各班が1周するごとにタイムを計測し、これを3回行って記録を比べる形式で実施された。すべての子どもが参加できるよう、1周ごとにメンバーを変えて行っていく。

プールサイドには、自分たちの班のメンバーはもちろん、他の班のメンバーも応援する子どもの姿も。レースでありつつ、会場一体となって乗船の時間を楽しむ様子が見られた。

イベントの最後には、景品が参加者に贈られた。レースで上位の班から順に希望のものを選べるスタイルで、お菓子やギフトカードなどが用意されている。

レースの後には希望する保護者と子どもでボートに乗る時間もあり、保護者も積極的に船に乗る体験に参加していた。

船を作る人、動かす人。尾道にある海の仕事

尾道市には、船を造る「造船」、船で人や貨物を運ぶ「海運」、エンジンや舵など船に使う機器を作る「舶用」など、船に関わる産業が集まっている。

参加した子どもたちからは「また参加したい」との声もあり、今回のイベントが印象に残った様子がうかがえた。

尾道市産業部商工課商工振興係の小野主事は、尾道市が造船・海運・舶用といった海事産業が豊かなまちであることに触れ、「こうした体験で、地元にはこんな産業があると、子どもや保護者の方に知ってもらえたら」と話している。

中国地区内航船員対策協議会の永見事務局長も、「内航海運をはじめとした海事産業に、こうした体験で興味を持ってほしい。まず知ってもらうことから始めたい」と語った。

なお、内航海運とは、日本国内の港から港へ船で貨物を運ぶこと。鉄鋼や石油、セメントなど、生活や産業に欠かせない物資を運んでいる。 私たちの生活を、深く支えている船の仕事。次に港で船を見かけたら、何を運び、どんな人が動かしているのか、親子で話してみるのも面白いのではないだろうか。