国内の港から港へ、石油製品などを運ぶ内航タンカー。燃料や物流を支える仕事のひとつであり、私たちの日常にも深く根付いている業界だ。

  • 学生たちが見学した内航タンカー「鳳伸丸」

    学生たちが見学した内航タンカー「鳳伸丸」

2026年6月25日、長崎港で船員の養成学校である国立口之津海上技術学校の学生を対象に、内航タンカー「鳳伸丸」の見学会が実施された。あわせて出島メッセ長崎では、全国のタンカー船会社27社が参加した説明会も開催されている。

本記事では、見学会で実施された甲板やブリッジ、機関室の見学・説明や、食堂での質疑応答の内容をレポートする。

約80名の学生が現場へ

  • 国立口之津海上技術学校の学生たち

    国立口之津海上技術学校の学生たち

今回の見学会は、全国の海運会社約450社が加盟する全国内航タンカー海運組合が主催したもの。学生が船員の仕事を具体的にイメージし、就職後のミスマッチを防ぐことを目的としている。

参加したのは、国立口之津海上技術学校の1〜3年生と教職員。学生たちは2つのグループに分かれ、長崎港小ヶ倉ふ頭でのタンカー見学と、出島メッセ長崎での合同説明会を午前・午後で入れ替えながら体験した。

見学船となった「鳳伸丸」は、一度に約2,000klを積載できる白油タンカー(ガソリンや軽油などの石油製品を運ぶ専用船)。

2,000klは一度に自動車約4万台分の燃料タンクを満タンにできる量であり、扱う量の大きさからも内航タンカーの仕事に求められる責任の重さがうかがえる。

甲板、ブリッジ、機関室へ。実際の船で設備を学ぶ

見学会は甲板、ブリッジ、機関室、食堂を巡る内容で、鳳伸丸の運航を担う旭タンカー株式会社の社員が学生を案内。主催者・関係者による挨拶の後、3班に分かれての見学が始まった。

甲板では、パイプラインやバルブといったタンカー特有の設備について説明があり、学生がその取扱量の大きさに驚く場面もあった。

  • 甲板では、油の積み下ろしに使う設備について説明が行われた

    甲板では、油の積み下ろしに使う設備について説明が行われた

続いて向かったブリッジは、船の操船や航海の判断を行う場所。鳳伸丸の船長や船員、旭タンカーの社員により、電子海図をはじめとする最新設備や航海作業についての説明がなされた。

ブリッジでは2名体制で当直にあたり、操船やログブック(航海日誌)、海図への記入などを分担して行うという。レーダーや目視で漁船、反航船(反対方向から接近してくる船)など周囲の船の動向を確認しながら、安全に航行していく。

  • ブリッジでは、航海を支える設備や人員体制について説明を受けた

    ブリッジでは、航海を支える設備や人員体制について説明を受けた

見学中には、学生と船長らによる夜間航行についての会話も。映画では明るい光を点けたままで航行する船の様子もみられるが、実際は安全のために夜間は船内の光をほぼすべて消し、真っ暗な状態にするという。映像作品で見る船の印象とは違う、実務としての航海の一面が伝わるエピソードだった。

  • 船長と旭タンカー社員、学生による質疑応答も

    船長と旭タンカー社員、学生による質疑応答も

「学校の練習船と全然違う」最新設備に驚く学生たち

機関室と機関制御室では、船を動かすための設備を間近で見学。機関長によってエンジンを始動する様子も披露され、学生からは「学校の練習船と全然違う」と驚きの声が上がった。

学校で基礎を学んできた学生にとって、実際に稼働する内航タンカーの設備を目にすることは、授業で得た知識を現場の仕事と結びつける機会になったようだ。

  • 船を動かすための設備を間近で見学した

    船を動かすための設備を間近で見学した

ネット環境やオーバーワーク防止も。最新の船上生活

船員の仕事と聞くと、「長い期間、外の世界と切り離される生活」を想像する人もいるかもしれない。しかし今回の見学会では、現在の船上生活が以前からは大きく変化していることも紹介されていた。

船内にはネット環境が整備されており、居住スペースも快適に過ごせるよう工夫されているという。働き方の面でも、オーバーワークを防ぐための調整が行われているそうだ。学生からは「ごはんは美味しいか?」「おかわりはできる?」など、身近な生活面に関する率直な質問も挙がっていた。

  • 食堂では、船内生活や待遇についての質疑応答も行われた

    食堂では、船内生活や待遇についての質疑応答も行われた

食堂でも質疑応答や、今回の見学会のまとめを実施。どのように学び続けるのかや、船の仕事のキャリアについて、教科書だけではわからない点についても多く言及されていた。

旭タンカーの社員によると、今回見学した鳳伸丸にレギュラーガソリンを積んだ場合、10億円単位のお金が動くことになる。扱う量が大きいからこそ責任も重く、その責任が船員の待遇にも反映されていくという。

  • 内航タンカーは、国内のエネルギー輸送を支える役割を担っている

    内航タンカーは、国内のエネルギー輸送を支える役割を担っている

また同日、出島メッセ長崎では、船会社が参加する合同説明会も開催された。学生にとっては船の見学で仕事の現場を知り、合同説明会で複数の会社の話を聞ける機会となっており、現場理解と就職情報の両方に触れられる点も特徴だった。

現場を見て、将来へ

  • 現役の船長や船員から、航海や船内設備について直接説明を受けた

    現役の船長や船員から、航海や船内設備について直接説明を受けた

今回の見学会では、学生が船長と機関長を含めた船員や旭タンカーの社員から、航海の工夫や船内設備について直接説明を受けていた。実際に船の世界で働く人の説明だからこそ、設備の仕組みだけでなく、それをどう扱うのかまで伝わるのだろう。

最新の通信環境や個室など、船上の暮らしが変化していることも紹介され、従来のイメージとの違いを感じる場面もみられた。

同校の生徒会長は、見学を終えて「学校の授業で習っていたことを実際に見ることができました。学校の練習船とも違うところがあり、実際の船の機器やエンジン、バルブなどを見ることができて、勉強になりました」と話した。

  • 見学を終え、お礼を伝える学生たち

    見学を終え、お礼を伝える学生たち

教室で学んだ知識を、現場の設備や人の声と結びつける。今回の見学会と合同説明会は、学生が内航海運やタンカーの仕事を知り、将来の進路を考えるきっかけになったのだろう。