千葉地区「海の月間」行事の一環として実施される千葉港まつりの「港湾施設見学会」が7月27日に開催された。港湾施設の見学を通じて、子どもたちに海の大切さや港の重要性について理解を深めてもらうために企画されている本イベント。一般参加者らとともに、RORO船や千葉港信号所を見学した。

全長約180mのRORO船を見学するツアーへ

北は市川市から南は袖ケ浦市まで6市にまたがり、2万4800ヘクタールという日本一広い水域面積を持つ千葉港は、全国に18港ある国際拠点港湾のひとつ。海岸線延長距離は約133kmに及び、1954年の開港以来、京葉工業地帯の重要な物流拠点として成長を続け、千葉港の海上出入貨物の取扱量は24年連続で全国第2位となっている(令和7年速報)。

そんな千葉港を舞台に毎年実施されている港湾施設見学会は、子どもたちに船や港の仕事に触れてもらい、その魅力を感じてもらうためのイベント。近隣の自治体の小学4年生〜中学生とその保護者を対象に、公式サイトや自治体の広報誌などで一般参加者を毎年募集している。

過去には冷凍倉庫の施設見学なども行われていたそうだが、2023年からはRORO船や千葉港信号所といった港湾施設を貸切りバスで巡る、2時間余りの見学ツアーになっている。

RORO船はローリングオン・ローリングオフ型船舶の略称で、貨物を積んだシャーシや完成車を自走で積み下ろしする方式が特徴の船。一般の船のようにクレーンで貨物を積み下ろしする必要がなく、効率的な荷役作業を行うことができる。

長距離を大量輸送するため大型船が多いこともRORO船の特徴で、今回乗船した「第五はる丸」はトレーラーシャーシ約160台、乗用車約250台を乗せられる国内最大級のRORO船だ。

大王海運では全長179.90mの「第五はる丸」「第六はる丸」と、ひと回り小さい「第三はる丸」という3隻のRORO船で、千葉港、堺泉北港(大阪府)、宇野港(岡山県)、三島川之江港(愛媛県)の4港を週2往復で結ぶ航路を運航している。

職人技が光る車両の積み込み作業

CO2排出量の削減や長距離ドライバーの省力化の観点などから、貨物輸送を鉄道や船舶へと切り替えるモーダルシフトの要のひとつとして、RORO船による輸送需要は今後さらに高まると予想される。

四国中央市に本社を置く大王海運は陸上輸送と海上輸送を組み合わせたRORO船輸送サービスを2002年より開始。モーダルシフトを背景に、その先駆けとしてRORO船事業を拡大してきた。

参加者たちは早速「第五はる丸」に乗船し、車両の積み込み作業や固定作業のデモンストレーションを見学した。

限られたスペースになるべく多くの貨物を積むため、職人技による精密な駐車が行われる。ドライバーはサイドミラーを畳んだ状態で、誘導員の笛やジェスチャーの合図を頼りに次々と車両を駐車していく。また、海上での大きな揺れに備え、車両を船に連結させる固定作業も並行して行われていた。トレーラーの中には飲料・食品といったさまざまな生活用品や建材・鋼管なども積まれていた。

続いて見学者は2つの班に分かれ、船を操縦する船橋(ブリッジ)などの施設へ。「第五はる丸」は外洋などでは20ノット以上のスピードで航行可能だという。

「第五はる丸」は貨物倉の各層が立体駐車場のようにスロープでつながった4層構造で、最後に向かった自動車専用倉の4番デッキは、喫水線よりも低い海面下に位置する最下層。自動車メーカーのSUBARU(スバル)は大王海運の主要な取引先のひとつで、群馬の工場で製造されたスバルの自動車は千葉港まで陸送され、大阪・岡山・愛媛へと海上輸送されている。

混雑する東京湾・千葉港の安全を支える仕事

一行は再びバスに乗車し、国際条約「SOLAS条約」(海上人命安全条約)で一般の立ち入りが制限された千葉中央ふ頭コンテナターミナル付近の区域を移動。千葉港信号所へと向かった。

「SOLAS条約」は9.11同時多発テロ事件を機に強化された、港湾・船舶のセキュリティに関する国際ルール。この日は警備員がバスに乗り込み、スタッフも含めて名簿とあらかじめ見学者らに発行されたビジターカードとの照合が行われた。

東洋信号通信社は関係各所から収集した船の入出港の情報をもとに、船舶の航行の安全と港の効率的な活用のために設置されているポートラジオの運営事業を行っている会社。同事業を全国的に展開する日本唯一の会社として、港湾関係者の中では広く知られた存在だ。

全国の港湾管理者からその運営業務を受託する同社だが、1969年に千葉県が免許人となって開設された千葉ポートラジオも設置当初から運営している。

ポートラジオの主な仕事は、レーダーやAISなどの機器を駆使して港の状況を的確に監視・把握しながら、VHFという無線通信機で船舶や関係各所とコンタクトをとり、適切な注意喚起と誘導を行うこと。シフト制による24時間365日体制でポートラジオオペレーターが働いており、見学時は3名のオペレーターが実務に当たっていた。

非英語圏の中国籍・韓国籍の船長などとも、英語でやり取りすることになるため、東洋信号通信社には外語大卒者や留学経験者なども多いという。基本的な英語力が必要な一方、専門用語やフレーズ、無線特有のコミュニケーション方法などを学ぶことも大切なようだ。

港によっては海上保安部がポートラジオ業務を行っている場合などもあるそうだが、ポートラジオ事業を展開する民間企業は国内で東洋信号通信社のみ。公務員ではないが、委託元は千葉県などの自治体・行政のため、安定した勤務先だという。

千葉港では広域なため監視カメラなども複数設置。東京湾内は千葉港をはじめ東京港や横浜港、川崎港や横須賀港などに入出港する船で混雑するため、陸上の道路や信号機と同様、千葉港の海上には航路や管制信号が設けられている。オペレーターの執務室に備えられた双眼鏡からは遠く離れた管制信号も確認できた。

ちばポートアンバサダーの感想は?

信号所の見学を終え、参加者たちは最後に出発地の千葉ポートタワーへ戻り、4階の展望フロアで13時頃に自由解散となった。

千葉ポートタワーは千葉県民500万人突破を記念し、日本一の面積を誇る千葉港のシンボルタワーとして1986年に開設された。日本で初めて免震装置のダイナミックダンパー(動吸振器)が採用・設置されたとされる高さ約125mのランドマークで、天候などによっては展望フロアからは東京湾越しに富士山や千葉港を出入りする貨物船などを一望できる。

この日、ガイド役を務めた千葉港親善大使2026ちばポートアンバサダーの2人は、「管制塔みたいな施設が海の世界にもあると知らなかったので、海の安全がどのように守られているのか知れて、とても勉強になりました」(市原さえらさん)「RORO船のような船に乗船できて、とても貴重な機会だなと。新車を積み込むデモも、船橋もアニメでしか見たことないような雰囲気で新鮮でしたね」(石川桜子さん)と、それぞれ印象的な場面を振り返った。

なお、千葉港では取り扱う貨物量の増加や船の大型化への対応のため、2030年代前半を目標に埠頭を再編成する千葉港港湾計画が進められている。同計画では千葉中央ふ頭と出洲ふ頭の間の水域を埋め立ててヤードを拡張し、岸壁の増深・延伸を実施することで荷役作業のさらなる効率化を図るという。