Barkが語る、BAD HOP解散後に広がる表現と川崎への愛「今は自分が正解を決める」

BAD HOPとしての活動を経て、ソロアーティストとして自身の表現を広げるBark。1stアルバム『South Side Story』では川崎で育んだ感性や、自身の内面を、今年リリースしたミックステープ『Bling 2 Tape』ではクラブで響く熱量を形にしてきた。

【画像】Barkアーティスト写真

10月11日には、クラブツアーの最終公演となる初のワンマンライブを地元・川崎のCLUB CITTAで開催。「チッタを大きなクラブにする」と語るその日を前に、音楽のルーツから制作の過程、飾らない言葉に込めた想いまで、これまでじっくりと語られる機会の少なかった、ソロアーティストとしてのBarkの音楽性に迫った。

BAD HOPで磨いた声とラップ

ー子どもの頃はどんな音楽を聴いていましたか?

Bark:小さい時は、それこそORANGE RANGEとか聴いてました。ヒップホップを聴き始めたのは中1くらいで、溜まり場でラップが流れていたのがきっかけです。

ーBAD HOPのメンバーと一緒にいた場所で?

Bark:そうです。別の友達と溜まっていた場所でも、同じでしたね。T-Pablow(以下、Pablow)たちもみんなラップを聴いていたので。Pablowは、日本語ラップを聴いていたけど、T.I.とか(アメリカの)サウスのラップなんかもすごく聴いていたイメージで、自分も、Young Jeezyの「My President」とかをめちゃくちゃ聴いて、影響を受けました。あと、Benjazzyは”ヒップホップお兄さん”という感じで、当時からすごくおしゃれで音楽の知識もあって、いろいろ教えてもらっていました。「今、流行っているトレンドはこれ」みたいなことも。逆に詳しすぎて「これ、聴いた?」と聞かれると「これってマウント? 俺、試されているのかな?」って感じるくらい(笑)。

ー「自分もラップをしてみたい」と思うきっかけになった曲やアーティストを教えてください。

Bark:ANARCHYさんですね。あと、初めて川崎のCLUB CITTA(以下「チッタ」)に行った時に、ライブを観たのがオジロさん(OZROSAURUS)で、影響を受けたと思います。食らいすぎて。

ーちゃんとレコーディングを始めたのは、何歳くらいだったのですか。

Bark:18歳くらいですね。PablowとYZERRの家が溜まり場だったので、みんなでお金を出し合ってPro ToolsとApolloのオーディオインターフェースを買いました。その前からクラブには行っていて、川崎の「KING & QUEEN」(現在は閉店)によく行っていたんです。そこにKM-MARKITさんが来ていて、ラップを教えてもらいました。KM-MARKITさんはめちゃくちゃラップがうまくて、「ラップ講座」みたいなことをしてくれて。当時は韻の踏み方も分からなくて、「ケツの母音だけ合わせればいいんだ」という認識だったんです。でも、深く掘っていくと単語の母音をある程度、合わせていく方法があることも知った。そこで「ラップって、めちゃくちゃ難しくない?」って(笑)。

ー座学というか、基礎的なところからしっかり教えてくださったんですね。

Bark:そうです。そこからみんなでクラブの手伝いをするようになって。夜、クラブが終わったあとは、みんなでフリースタイルをしてました。その時からPablowのフリースタイルはすごかったですね。クラブが終わってから夕方くらいまで、ずっとマイクを離さずにフリースタイルしていました。「そろそろ帰らない?」とまで思うほど。

ーそうやってBarkさんも、その場でどんどんラップに触れていったんですね。

Bark:そうですね。Jojo(Tiji Jojo)が機材の使い方を覚えて、エンジニアのようなことをやってくれたんです。そうやって最初に『BAD HOP ERA』という作品(コンピレーションアルバム)を出しました。レコード会社を通さず全部自分たちで作って販売して、(あまり流通していなくて)もう幻と言ってもいいくらい。自分は「I Go」という曲に入ってるんですけど、下手くそすぎて今は聴けないですね。当時からJojoやBenjazzyはすでにラップスタイルが完成されていて。俺らがクラブに行き始めた頃、Jojoは少年院に入っていたんですけど、たぶん、そこを出てからPablowがラップを教えていたんだと思います。Jojoが初めて書いた曲の時点ですごくうまくて、俺は負けたと思いましたね。

ーBAD HOPとして活動しながら、自分の役割や「こういうところを見せたい」という意識はありましたか?

Bark:音楽面では、YZERRが「声はもっとこう出せ」とか「フロウはこうやってリズムをとる」とか、師匠みたいにディレクションしてくれていました。「短所を消すのではなく、長所を伸ばせ」という感じで、たとえば俺は声が低いし、歌えなかったので「この低い声だったら、自分はこうしよう」と工夫していったんです。当時はスキルがないので、下手なことをすると大事故が起きちゃう。インプットはできても、アウトプットができないんですよね。人に曲を聴かせるのも怖いくらいでした。やりたいこと、やれること、できないこと。その3つの間で、ずっと戦っていたというか。ビートを聴いてアイデアはいっぱいあるのに、できることはひとつしかない。本当はこっちをやりたいのにできなくて、結局、何も形にならないんです。俺でいうと、一番分かりやすいのはメロディのある曲ですね。そういう曲を作ってみたくても、作ったものを聴かせられない。だから、BAD HOPでは必然的に、みんなが自分のできること、やるべきことをやるという認識で曲を作っていたと思います。ある種、制限がある中で正解を見つける。その格闘でした。

ー解散後は、その制限がなくなったわけですが、逆に戸惑いはありましたか。

Bark:戸惑いはなかったです。逆に、自分の幅を広げる作業というか。BAD HOPでの経験を通して、ある程度の土台は作ってもらったので。制限がなくなって自由になって、自分で答えを決められる。それが今、音楽を作っていて新たに感じる楽しさです。昔は正解を見つける作業だったんですけど、今は自分が正解を決める。あと、あまり事故らなくなってきました(笑)。何百曲も作ってきたので、「これはやったら駄目だな」「このままだと事故るな」というのに、早い段階で気づけるようになりました。

ーソロでは、他のメンバーが担当していた歌やメロディにも挑戦していますよね。難しさはありませんか。

Bark:難しいです。でも、もともとそういう音楽も好きで、インプットはあるんです。もちろんJojoみたいな高い声で歌えないと分かっているので、自分にできる範囲のメロディを考えています。ヒップホップだからと言うと変ですけど、必ずしも美声で歌い上げる必要はないというか。「伝えたい」という気持ちが大切だと思っています。

「俺らのこと」から「自分のこと」へ

ー普段は作品に向けて制作するんですか。それとも、毎日ルーティンのように曲を作っているんでしょうか。

Bark:以前はタイプビートを探すことが多かったんですけど、最近は海外からも日本の人からも定期的にビートが届くようになって。聴いて、いいビートがあればフロウを入れる。常に曲を作っているという感じですね。アルバムやミックステープは、「次はこういうものを出したい」という大体のイメージはあって、「いいな」と思う曲ができたら「こういう作品にするなら、1曲目はこういう感じかな」と考えていく。あとは自分の中ですごくキャッチーなことをやったら、逆に一番コアな曲も入れる。難しいんですけど、そうやって作品の中でバランスを取っています。ただ、曲を作るのが速いタイプではなくて、俺は曲を作るのに、めちゃくちゃ時間がかかります。

ー「Don't Judge Me」の〈お前らのために始めたんじゃない〉〈俺でいるため握ったマイク〉という言葉が好きで。ラップしている時が、一番素の自分だと感じますか?

Bark:曲を作っている時は、新たな自分の感情に気づけるんです。深層心理というか。普段は意識していないけど「俺、本当はこういうことを思っているんだな」と。今はリリックを書かずにマイクを通して作っているので、自分のふとした感情に、より気づくことがあります。

ー作ることで、逆に気づくんですね。

Bark:そうです。一人で家で夜に曲を作っていると、エモーショナルな気持ちになったり、何かを思い出してむかついてきたりする。いろんな感情を一人で客観視していくんです。その結果がリリックになっている感じです。

ー自分との対話のようなことが起きているんですね。

Bark:曲を作っている人は、みんなそうだと思います。セルフセラピーのような感じです。

ー最初のソロアルバム『South Side Story』は、何かテーマを決めて作り始めましたか。

Bark:制作は、BAD HOPの最後のアルバム『BAD HOP』(2024年)の制作と同時進行でした。あの頃が一番燃えていたというか。本当に寝ずにずっと曲を作っていたので、自分の人生の中で一番クリエイティブな時期だったと思います。その時に作った曲が、ファーストアルバムにも5、6曲入っています。

あの時は、すごくエモーショナルで特別な感情もあったので、作った曲を聴きながら「この曲をアルバムに入れるなら、どういう作品になるだろう」という順番で考えました。BAD HOPの解散は大きな区切りでもあり、新たな自分のストーリーの始まりだという気持ちもあって。それで『South Side Story』というタイトルがいいかな、と。

ーBAD HOPの時はYZERRさんなどがディレクションすることが多かったかと思いますが、ソロの作品を作り始めてからどうでしたか。

Bark:自分で作った曲をJojoに聴かせたりしていました。ゲーム友達なので、コミュニケーションを取る時間が一番多かったんです。Jojoもよく曲を送ってくれて、ゲームをしながら「この曲、アルバムに入れようと思うんだけど」「いいじゃん、もっとこうしたら?」みたいに、お互いにアドバイスをしていました。制作中にすぐ相談できたのは、Jojoでしたね。

ー「Sorry for Mama」では、ご自身の家庭や内面についてもラップしています。

Bark:BAD HOPの時はメンバー全員、個々の人間性や内面はそこまで出していなかったと思うんです。BAD HOPの曲は「自分のこと」というより、「俺らのこと」。みんなでひとつの脳みそを使って作っていたような感覚でした。ソロになったので、自分の内面やパーソナリティを出そうと思って作りました。「こういう環境に鍛えられた」ということを伝えたい気持ちが一番強かったですね。

クラブの熱量を形にした『Bling 2 Tape』

ー対して今年の6月にリリースされたミックステープ『Bling 2 Tape』はどうやって制作されましたか?

Bark:ミックステープに関しては、ツアーを回ることを念頭に、1stアルバムでライブをしていて足りないなと思った部分を考えて作りました。。クラブでお客さんと近い距離で熱量を伝え合うことをイメージしたので、クラブ向けの曲が多いんです。実際に、今回は自分たちで『Bling 2 Tape』を引っ提げたクラブツアーを組んで、全国を回って。その最後が、川崎のCLUB CITTAでのワンマンライブになるんです。

ーミックステープは客演の顔ぶれも広がっています。DeechさんやCandeeさんは後輩としてのつながりもありますし、JP THE WAVYさんもBAD HOPの頃から共演していますが、「P.O.P」でのMIKADOさんとLunv Loyalさんとの組み合わせは意外でした。きっかけは?

Bark:MIKADOくんは、もともとすごく好きだったんです。『Re:Born Tape』も聴いていたし、『ラップスタア』に出ていた時から好きで、こちらからオファーしました。もともと仲がよかったわけではなくて、曲を作って、MVを撮ってそこでちゃんと話しました。その中でMIKADOくんの人間性も知ることができて良かったです。Lunvくんも個人的にファンでした。昔、SEEDAさんが『CONCRETE GREEN』でラップのうまい人を募集した時にフィーチャーされていたのがLunvくんだったんです。その時からずっと好きでした。

ーCOBE JさんとMoney Jackさんも、以前から注目していたのですか。

Bark:最初に知ったのは(YouTubeチャンネルの)03- Performanceです。『Ten Toes For The Block』という作品を聴いて、「めちゃくちゃかっこいいな」と思って。インタビューで「最近気になっている若いアーティストはいますか」と聞かれた時に、2人の名前を出したんです。そうしたらたぶんそれを見てくれて、DMで「名前を出してくれてありがとうございます」と連絡が来た。そこで「チャンスだな」と思って。「今度、曲を作ろうよ」と話して、早速制作しました。そのあと、(ファッションブランドの)BREATHの撮影にも出てもらって、3人で飲みに行ったらめっちゃ仲よくなりました。

ー1stアルバムを経て、今回ミックステープという形を選んだのは、なぜだったんでしょうか。

Bark:スタイルの提示というか。正直、ストリーミングができてから、ミックステープとアルバムの壁はほとんどなくなったと思うんです。もはやバイブスやテンションの違いでしかない。ただ、自分のスタイルやヒップホップの好きなところを振り返ってみると、かつてのミックステープには自己紹介みたいに「俺の音楽を聴いてくれよ」という主張があったと思うんです。自分も、(ミックステープのポータルサイト)DatPiffでめっちゃダウンロードして聴いていましたし。アルバムとはまた違う空気で、こういう感じを体現しているものがいいな、と。

ーリリース前には、ミックステープの世界観を模したCD型のNFCカードを川崎駅東口の広場で無料配布するイベントを実施して、すごい行列ができていましたね。

Bark:俺らも昔はCDに音源を焼いて、自分たちのミックスCDを配っていたんです。地元のクラブに先輩が来た時や自分たちがイベントを任された時には、「どうぞ」と言ってCDを配っていたんですけど、誰も受け取ってくれなくて。

ーそれが、今はあれだけの列になった。感慨深いですね。

Bark:あの日は天気もすごく悪かったんですけど、250人くらいが集まってくれて。遠方だと大阪や北海道から来てくれた人もいました。前に同じ場所でゲリラライブをやったこともあったんですけど、その時はすぐに止められちゃったんです。だから今回はちゃんと警察にも許可を取って、途中で中止にならないよう連携も取りました。川崎市も協力してくれましたし。混み合って通行人に迷惑を掛けたらどうしようと思っていたんですけど、みんなきっちり並んでくれて。

ー実際にファンの方たちと交流して、いかがでしたか?

Bark:まず、楽しかったです。こうやって直接みなさんと話す機会はあまりないので、すごくいい経験でした。熱量もすごかったですね。

「お前らも、最後は俺の街に来いよ」

ー「Family & Block」では、もっとラップが上手くなりたい、憧れのラッパーの前では子どものようになる、と歌っています。今でもそういう気持ちになりますか。

Bark:なりますね。BAD HOPで活動してきて、ソロで初めてライブをした時、一人でステージに立つのは、たぶん高校生ぶりくらいだったんですけど、悔しさしかなかった。「まだ、こんなに悔しい思いができるんだ」と思いました。

ー確かに、今まではみんなが一緒だったんですもんね。

Bark:「全然下手くそだし、まだまだだな」と思い知らされました。俺らは8人だったので、最初のほうはお客さんがいなくても、友達と一緒にステージに立っているから、そこまで食らわないんです。「やばくね?」と言い合ったり、ステージ上で身内ノリができる。でも、一人だとやっぱり食らいますよね。

ー実際に全国のクラブで『Bling 2 Tape』の収録曲をライブで披露してみた感触はいかがでしたか?

Bark:今回、全国のクラブを回って感じたのは、地方の人の熱量や盛り上げ方にすごく助けられたということ。特に最前列の子たちに対しては、本当に「ありがとう」と思いました。改めてクラブでのライブの良さを感じましたね。

ー今回はいろいろな都市に行かれてますよね。印象的だった場所はありますか?

Bark:熊本は楽しかったですね。ご飯もおいしいし。あまり公にはしていないですけど、今年7月の地震の後ということもあり、ギャランティを受け取ることを辞退してライブをしたんです。マネージャーとも、「今はギャラをもらって仕事としてライブをするテンションではないよね」と話して。

ーツアーを回って、最後が川崎のチッタ。地元でライブをすることには、特別な意味がありますか。

Bark:ファーストアルバムを聴いてくれている人には分かると思うんですけど、川崎で起きていることを全部パックしているんです。だからあの場所でやることには意味があります。俺もアメリカに行って、ニューヨークで初めてジェイ・Zの「Empire State of Mind」を聴いた時、「この街に来たんだな」と実感しました。その人の地元でその人の音楽を聴くと、また違うんです。京都に行ってANARCHYさんの曲を聴いても、より捉え方が変わってくるし。なので、チッタでライブをするのは意味深いことだと思っています。街には、街の空気がありますから。

ーどんな雰囲気のライブにしたいですか。

Bark:チッタでの公演は初のワンマンライブでもあるんですけど、今までのクラブツアーの延長線上のような雰囲気でやりたいと思っています。開場した瞬間からDJがいて、音楽がかかっていて、「チッタを大きなクラブにしよう」というテンションで。俺の家に来るような気持ちで来てほしいですね。

ーどんな姿を見せたいですか。

Bark:曲をもっと深く知ってほしいですね。自分が書いているリリックの意味や、どういう気持ちで書いているのか。あとは、セットリストの中で何回「川崎」と言うか(笑)。数えられる人がいたら、数えてほしいです。とんでもない回数を言っているので。

ー川崎愛を感じます。

Bark:ぜひみんな来てほしいです。今回はツアーでみんなの街に俺が行ったので、「お前らも、最後は俺の街に来いよ」という気持ちです。

Bark ONE MAN LIVE「Bling 2 Tape」

10月11日(日)

神奈川・CLUB CITTA

開場18:00/開演19:00

出演:Bark

ゲスト:Ashley/Benjazzy/Candee/COBE J/Deech/3Li¥en/Eric.B.Jr/G-k.i.d/Jin Dogg/JP THE WAVY/Lunv Loyal/Money Jack/SEEDA/Tiji Jojo/T-Pablow/YZERR

チケット料金:

ファストパス 7,980円(税込)

1Fスタンディング 5,980円(税込)

※入場時、別途ドリンク代600円が必要

※ファストパスは専用ゲートから優先入場できるスタンディングチケット。

clubcitta.co.jp

チケット:https://eplus.jp/bark/

公演詳細:https://clubcitta.co.jp/schedule/1728