共働き世帯の増加や核家族化が進む中、子育て中の孤独感や負担感を抱える親は少なくありません。そんな育児のモヤモヤをユーモアに変え、SNSで大反響となっているのが「#赤ちゃん相談室」です。

2026年7月に発売となった『#赤ちゃん相談室2』(宝島社)は子育て中のママ・パパからの投稿を集めた書籍化第2弾。原案者のもーちゃんさんに、ハッシュタグの誕生秘話や育児との向き合い方、多くの共感を集める理由について聞きました。

  • 書籍『#赤ちゃん相談室2』の表紙

    SNSで大反響のハッシュタグを書籍化した第2弾『#赤ちゃん相談室2』(宝島社)

「私だけじゃない」安心感

――「#赤ちゃん相談室」は2020年3月にX(当時Twitter)で初めて投稿され、大きな反響を呼びました。もともとはどんなきっかけから生まれたのでしょうか。

  • 2020年3月に投稿された「#赤ちゃん相談室」のX投稿画面

    「#赤ちゃん相談室」が広がるきっかけとなった、2020年3月の投稿

きっかけは、本当に何気ない投稿でした。当時は次女が生後6カ月で、なかなか寝なかったり泣き続けたりすることがあって。赤ちゃんが何を求めているのか知りたいけれど、言葉が通じないし話せないからわからない。だから表情や反応を見ながら探っていくしかない毎日でした。

「どうしたらいいんだろう」と悩んだし、正解がないから不安になったり悲しくなったりして、孤独を感じていました。そんな気持ちをなんとなくユーモアを交えて投稿してみたら、すごく気持ちが楽になったんです。それで「よかったらみんなもこのタグを使ってみてね」と書いたところから、たくさんの人が参加してくれて、共感の輪が広がっていきました。

――当時は2人目の育児の真っ最中ですよね。やはり大変でしたか。

  • 「家に騒がしくて楽しい動きをする何かがいます」という相談と回答を掲載した誌面

    赤ちゃん目線の“クレーム”に、保護者がユーモアたっぷりに回答

1人目の時よりお世話には慣れて余裕があったけれど、上の子がいることでタスク管理の部分では全然余裕がなかったです。

上の子は当時6歳で、あんまりわがままを言うタイプではなかったのに、赤ちゃん返りをして床でひっくり返ってバタバタすることもありました。寂しい思いをさせてしまっているな、という思いと同時に、処理しきれないタスクの量に脳みそが爆発しそうでした。

――「#赤ちゃん相談室」がどんどん広がっていったとき、どんなお気持ちでしたか。

まずは「私だけじゃないんだ」という安心感でした。今この瞬間にも同じように悩んでいる仲間がいるんだと感じられたことで、改めて子どもたちと向き合う勇気や元気をもらえましたし、笑ったり共感したりしながら癒やされていました。

――「子どもたちと向き合う勇気」というのは、どういうことでしょうか。

毎日の育児でどうしてもイライラしてしまって、「怒りすぎちゃったな」とか「あんなこと言うべきじゃなかったな」と自己嫌悪を繰り返していたんです。「私、お母さんとしてちゃんとできているのかな」という不安も大きくありました。だから「自分だけじゃない」とわかったことで、勇気をもらえたんですよね。

それに、たくさんの人に共感してもらえたことで、自分自身の悩みや不安がだれかに認めてもらえた、受け入れてもらえたような気持ちにもなったんです。受け止めてもらえたことで、「きっと大丈夫」と安心感を持てたし、大きな支えになったと思います。

――多くの人の共感を呼んだ理由を、ご自身ではどのように考えていますか。

子育ての不安や悲しみも笑いに変えられることが、このハッシュタグの大きな特徴だと思っています。不安なとき、愚痴を言いたくなるとき、だれかに聞いてほしい、吐き出したいと思っていても、場の空気が重くなってしまうかなとためらったり、相手を選ばなければいけないこともあります。

でも、それを笑いに変えてSNSで共有すると「あるある」「わかる」と言ってもらえる。なかなか人に言いにくい育児のモヤモヤを、笑いにしてシェアできる形だったことが、多くの方に共感してもらえたのかもしれません。「ぷっ!」と笑えることだけで、本当に気持ちが楽になりますよね。

子育て世代以外にも広がる共感の輪

  • 赤ちゃん特有の匂いに関する相談と回答を掲載した誌面

    育児中の“あるある”を笑いに変える投稿が、多くの共感を集めている

――フォロワーさんの反応で、とくに印象に残っているコメントなどはありますか。

子育て中の人だけでなく、お孫さんがいる方や社会人の方、学生さんからもたくさん温かいコメントをいただいたことが印象的でした。シニア世代の方からの「子育ての時期を懐かしく思い出した」というコメントや、高校生の方からの「親っていろいろなことをこんなにこなしてすごいな」というコメントに、すごく励まされました。

子どもを連れて出かけると肩身の狭い思いをすることもありますが、このハッシュタグを通じて「世の中ってこんなに温かいんだ」と感じられたんです。みなさんの優しさが本当にうれしかったです。

――「#赤ちゃん相談室」の盛り上がりを経て、ご自身の子育てやお子さんとの向き合い方に変化はありましたか。

幅広い世代の方から温かいコメントをいただいたことで、世の中の赤ちゃんに対する温かさをより身近に感じられるようになった結果、気持ちに少し余裕ができたと思います。

子育ての日々では「勘弁してよ〜」と思うようなできごとがありますよね。ウンチ爆弾を服に投下されたり、おろしたての靴がジュースまみれになったり(笑)。そんなエピソードも笑えるネタとして話せるようになったことで、子育て中の心の平穏を保てるようになったと思います。

赤ちゃんのクレーム、海を越える

  • 深夜の夜泣きを「営業時間外」と表現した投稿を掲載した誌面

    寝てほしい親と遊びたい赤ちゃんの攻防戦を描いた投稿

――今回、書籍化第2弾『#赤ちゃん相談室2』が刊行されましたが、読者の方からはどんなコメントが届いていますか。

「面白い!」「わかる、わかる!」「すごく笑った」という声を多くいただいています。中でも驚いたのは、海外に住んでいる友人から連絡がきたことです。現地の日本人の友だちから出産祝いとしてこの本をもらったらしくて、「赤ちゃんのクレーム、海を渡ってるね」とLINEが来て、思わず笑ってしまいました。

出産祝いに添えてくださったというお話はけっこう聞くんです。笑って心が軽くなるだけではなくて、小児科医・今西洋介先生の専門的なコメントやためになるアドバイスも載っているので、出産祝いには本当におすすめです。私自身も、友人の出産祝いにこの本を添えています。

――第1弾の『#赤ちゃん相談室』のころと比べて、『#赤ちゃん相談室2』に時代の変化を感じることはありますか。

『#赤ちゃん相談室2』では、パパ目線の投稿がすごく増えたことは大きな変化だと思っています。

第1巻のころも、もちろん男性の育児参加は進んでいたと思うんですけど、さらに数年たって、夫婦一緒に子育てにかかわるようになったり、お子さんと接する時間が増えたりしているのかな、と感じました。

子どもと一緒に「今」を楽しみたい

――今回の本の中で、お気に入りのクレームと、その理由を教えてください。

  • 花粉症やパパみしりをテーマにした投稿を掲載した誌面

    「爆発音と振動なんて表現があるんだ!」もーちゃんさんお気に入りの投稿のひとつ

本当に選べないくらいどのクレームもかわいくて、何回読んでも1人でニヤニヤしてしまうものばかりなんですけど……。あえて挙げるなら、41ページの「スタッフから爆発音と振動がたびたび発生しています。故障ですか?」という相談ですね。「花粉症です」という回答に「爆発音と振動なんて表現があるんだ!」と衝撃でした。私自身も花粉症なので、「確かに爆発音と振動をたびたび発生させていたな」と共感しました。

  • 食べ物を落とす行動を「重力実験」と表現した投稿を掲載した誌面

    赤ちゃんの“食べこぼし”を「重力実験」と表現。もーちゃんさんお気に入りの投稿

それから78ページの「ランチタイムは重力実験の時間なのに、スタッフが困った顔をするのはなぜですか」という投稿です。わが家でもスプーンや食材をよく床に落とされていたんですけど、あれは重力実験だったんだなって(笑)。

あとは、124ページの「すてき! はっぱが歌っています!」という投稿です。実はこれは、私が長女との忘れられない思い出を投稿したものなんです。

――長女さんとのエピソードなんですね。とてもほっこり、ちょっとうるっとするエピソードです。

  • 「はっぱが歌っています」という投稿を掲載した誌面

    「葉っぱが歌ってる!」長女との忘れられない思い出から生まれた、もーちゃんさん自身の投稿

このころ、ちょっとしたことで悩んで気持ちが落ち込んでいる時期でした。そんなある日、長女と近所を散歩していたら、大きな木の葉が風でざわざわ揺れたのを見た長女が「ママ見て! 葉っぱが歌ってる!」って教えてくれて。その言葉に、私は思わずその場で泣いてしまったんです。今でもその情景は忘れられません。

悩んでしんどかった私の心を、長女の言葉が現実に引き戻してくれました。「今、私はこの子と一緒にここにいて、この子は今を楽しんでいるんだ」と思ったら、「私はなんでこんなに悩んでいたんだろう」って。「私も長女と一緒に今を楽しもう」と前向きになれたできごとです。

――最後に、今まさに赤ちゃんを育てているママやパパへメッセージをお願いします。

夜泣きに翻弄されたり、離乳食をひっくり返されたり、本当に毎日がカオスのように過ぎていく時期だと思います。うまくいかない日やイライラする日もあると思いますが、上手にサボりながら、そのときだけのかわいさをたっぷり味わってほしいです。

【Profile】もーちゃん

「#赤ちゃん相談室」生みの親。現在は夫、中学生の長女、6歳の次女と暮らす2児の母。アカウント名の由来は「マイペースで牛っぽい」と言われることから。
X:@moo_moo_Nmooo