ぽん酢を始めとする調味料などで知られるミツカンが、ペットフード市場へ本格参入を果たした。

ミツカンは10月5日、東京・有明で新ペットフードブランド「わんこのほんと」ローンチ発表会を開催。共同開発者らとともに、異業種参入の背景や製品に込めた想いや独自の科学的アプローチの全容を明かした。

「家族の形」の変化に向き合うミツカンの挑戦

新ペットフードブランド「わんこのほんと」は、小型犬・成犬期用の総合栄養食ドライフード「わんこのほんと 小型犬・成犬期用」と、トッピング用ジュレ「わんこのほんと だし香るあんかけ 牛だし/鶏だし仕立て」の2品をラインナップ。Amazonのブランド公式ストアで、ドライフードは10月5日に発売し、トッピングは10月21日に発売する。

  •  Mizkan 執行役員 CINO(Chief Innovation Officer)の石垣浩司さん

    Mizkan 執行役員 CINO(Chief Innovation Officer)の石垣浩司さん

発表会ではMizkan 執行役員CINOの石垣浩司さんが登壇し、ペットフード分野へ踏み切った経緯について解説した。

「ミツカンはずっと家族においしさと健康をお届けしていくことを目指してきましたが、役員の間で『ワンちゃんがいるご家庭の食や健康に向き合えていないのではないか』という議論があったんです。現代の新しい家族の形にしっかり向き合おうと決断し、参入を決めました」(石垣さん)

現在、日本の犬猫飼育頭数は15歳未満の子どもの数を大きく上回り、ペットが「家族の一員」として暮らす光景は当たり前のものとなった。ミツカンはペットフード作りに関しては未経験からのスタートだったが、人の食品開発で培ってきたプロセスをそのまま適用。環境認識や課題の抽出、安心・安全の担保など、人間向けの食品と同じ厳しい目線で開発を進めたという。

「我々はペットフードに関しては素人だったので、一から勉強しました。でも、逆にそれが良かったと思っています。人の食品と同じ開発プロセスに乗り、ワンちゃんにとっての困りごとや本当のおいしさは何なのか、ゼロから徹底的に向き合うことができました」(石垣さん)

  • 会場で紹介された検証動画では、別のドッグフードよりも「わんこのほんと」を積極的に食べる様子が映し出された

    会場で紹介された検証動画では、別のドッグフードよりも「わんこのほんと」を積極的に食べる様子が映し出された

ミツカンが製品開発で徹底したのは、「人間がよかれと思うもの」ではなく「ワンちゃん自身が本当に美味しいと感じるもの」の追求だ。開発過程では動物行動学の専門家と連携し、様々な試作品を用いた嗜好性試験を実施。犬が好む香気成分を特定するため、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)による分析も行った。

「動物行動学の先生に見ていただきながら、ワンちゃんが美味しく感じているかを検証しました。めんつゆなどの知見も活かし、かつお節やまぐろ節などの香気成分を科学的に分析したんです。ワンちゃんが本当に喜ぶ成分を突き止め、それをしっかり配合しました」(石垣さん)

  • BIOSIS Lab. 代表取締役社長 兼 藤田医科大学の栃尾巧教授

    BIOSIS Lab. 代表取締役社長 兼 藤田医科大学の栃尾巧教授

続いて、研究開発パートナーであるBIOSIS Lab. 代表取締役社長で、藤田医科大学の教授でもある栃尾巧さんが登壇し、製品の科学的背景を解説した。

「世の中にあるペット向け製品の多くは、人の思いで作られてきましたが、ワンちゃんを主語にした製品作りをしなければ、社会との調和は築けません。ミツカンさんがワンちゃんを主語にして開発を進める姿勢に、非常に共感を覚えました」(栃尾教授)

栃尾教授の専門である腸内環境研究のなかでも、近年注目を集めるのが「腸脳相関」だ。腸と脳が相互に影響し合う仕組みを指し、犬でも腸内環境と精神状態や行動との関連が研究されているという。

「今後10年をリードする分野が腸脳相関。先行研究でも、穏やかなワンちゃんと、吠えたり噛んだりといった問題行動を起こすワンちゃんでは、腸内環境が全く違います。『わんこのほんと』には発酵性食物繊維やオリゴ糖、乳酸菌などを配合し、便通や皮膚だけでなく、穏やかな心のサポートまで目指しています」(栃尾教授)

  • アニマル・ワン(ベストアメニティ) 代表取締役社長 菰方順子さん

    アニマル・ワン(ベストアメニティ) 代表取締役社長 菰方順子さん

製品の製造・開発を支えたのは、国産原料と徹底した品質管理に定評のある「アニマル・ワン」を手がけるベストアメニティだ。

「わんこのほんと」では、雑穀米のパイオニアである同社の知見を活かし、ベースには大麦と玄米を採用。冷えると硬くなりやすい米の特性を考慮し、大麦を加えることでサクサクとした心地よい食感を実現したという。

アニマル・ワン(ベストアメニティ) 代表取締役社長の菰方順子さんは、「『ワンちゃんだからこの原料でいい』ではなく、原材料も製造工程もすべて見える化し、人間と同じ安心・安全の基準で作ることにこだわりました」と明かした。

この日の発表会では新商品の香り体験も行われた。実際に嗅いでみると、だしの豊かな香りが広がり、思わず食欲をそそられた。人向けの料理を思わせる香りが印象的だった。

石垣さんが「製造過程で自己責任として食べてみたのですが、本当に美味しいんです」と明かすと、栃尾教授も「私もサンプルをいただきましたが、本当に美味しくて驚きました」と笑顔を見せる一幕も。

10月21日に発売を控えるトッピング「だし香るあんかけ牛だし/鶏だし仕立て」も披露。毎日同じフードを食べるワンちゃんに「味変」の楽しさを提供するジュレ状の副食で、フード全体によく絡み、口元やひげを汚しにくい粘度設計が施されているという。

  • この日の発表会では、ワンちゃんによる実食デモも実施された

    この日の発表会では、ワンちゃんによる実食デモも実施された

  • ワンちゃんたちはいずれも用意されたボウルへ一直線に向かい、夢中で完食

    ワンちゃんたちはいずれも用意されたボウルへ一直線に向かい、夢中で完食

発表会の締めくくりには、菰方さんが来場者や飼い主に向けて熱いメッセージを送った。

「人間は毎食メニューを変えられますが、ワンちゃんは毎日、毎食、同じものを食べて体が作られます。自分で選んで買えないからこそ、飼い主さんが責任を持って良いフードを選び抜いてあげてほしいと思います」(菰方さん)