
2026年7月16日、じつに16年ぶりとなるモデルチェンジが発表された新型エルグランド。第3世代となるe-POWERや進化したe-4ORCEなど機能面が話題ですが、それ以上に注目なのが存在感を高めたスタイルでしょう。そこで、今回はデザインを統括した入江氏に、その意図や特徴について話を聞いてみました。
●グローバルデザイン本部 プログラムデザインダイレクター 入江慎一郎さん
■止まって見えないスタイルを目指す
ーー最初に、新型の開発に当たって先代のスタイリングをどのように評価、総括したかを教えてください
「もちろん総括は初代以降すべてのモデルで行っていますが、そのなかで、先代についてはやはり背の低いプロポーションが特徴でしたね。非常にチャレンジングで『これがいい』と言っていただけるお客様も多かったのですが、Lクラスミニバンの使い方の変化とズレが出てきてしまった。そこを見直すと同時に、クラス屈指のスタイリッシュさやスピード感は残すべきだと考えました(グローバルデザイン本部 プログラムデザインダイレクター 入江慎一郎さん(以下同)」
ーーそれが「The private MAGLEV(リニアモーターカー)」というデザインコンセプトに繋がったのかと思いますが、重厚なミニバンと超高速鉄道のイメージがどうも一致しないのですが・・・
「そうですか?(笑)。圧倒的な質量感や威厳を持ちつつ、日本のフラッグシップモデルとしてスタンスのいい佇まいを持たせたかったということです。新型はe-POWERによる高い走行性能と室内の静粛性がシンクロしていて『静かだけど速い』のが特徴です。しかも一定の姿勢を保ったままフラットに走行し、体が揺られない。これは他社さんとの大きな違いでもあり、そこを前面に出したかったワケですね」
ーーなるほど。では各パートについて伺います。フロントグリルやテールランプには「タイムレスジャパニーズフューチャリズム」に沿った組子表現が施されていますが、グラデーションのグリルや横一文字ランプは流行の表現でもありますよね?
「はい。ただ組子と言っても単なるクラフトモチーフではなく、あくまで現代的な解釈として、トレンドはしっかり押さえているんですね。ちなみに、組子表現は当初から発案されたもので、日本人の心の中にある美意識を震わす意図があります。そこはやはりメインマーケットを意識したと。また、横一文字のテールランプは、流行というよりエルグランドとしての伝統として継承したものですね」
ーー次にサイド面について。ライバルは特徴的な曲線で重厚感を打ち出していますが、新型はあくまでストレートなラインが特徴ですね
「ここもMAGLEVのコンセプトどおり止まらない、止まって見えない表現にしていて、キャラクターラインも余計なことはしていません。これはリヤエンドにも言えて、ボディ下半身は大きく広げてスタンスのよさを確保し、その上でルーフが長く見えるよう後端を伸ばしています。走り去った後も余韻が残るような存在感ですね」
■グランドツーリングカーを貫くデザイン
ーーLクラスとしてサイドは非常に広い面になっていて、ホイールアーチの抑揚も最小限です。そのなかで面を貧相に見せないために何が必要でしたか?
「側面はサイドシル上のハイライトが目立つところですが、じつはそこを強調させるためのドアのシャドー面をいかに作るかが頑張りどころなんですね。ドア下部に向けて面を内側に入れつつ、同時にホイールアーチからの流れと整合させる。ちなみに、ホイールアーチは単に張り出せばいいワケでなく、タイヤとの関係がいかに「ツライチ」に見えるかが重要なんです。ここは誤解も多くて、何でもスポーツカーのようにホイールアーチを張り出させればいいワケじゃないんです(笑)」
ーーたしかにそういう傾向はありますね(笑)。そのホイールについて、資料には伝統工芸的な緻密さを狙ったとありますが、具体的なモチーフはあったのですか?
「ここも組子がモチーフです。大きく重量のあるクルマとして燃費への配慮も必要ですから、やはり空力に貢献した造形としたい。そこで面の広さが必要になるのですが、そこを逆手にとって組子表現を取り入れ、ボディ全体のボキャブラリーの統一を図っているんです」
ーー次にボディカラーについて伺います。新色である「FUJI DAWN(フジドーン)」と「至極(シゴク)」は具体的に何を意図したカラーなのでしょうか?
●フジドーン/至極(シゴク) プレミアム2トーン
●至極(シゴク)
「『フジドーン』は、ジャパニーズフラッグシップとして文字どおり富士山をモチーフとしていて、具体的には朝焼けのイメージですね。『シゴク』は、日本の伝統の中で聡明、高貴な色とされてきたムラサキをベースとし、ソリッドライクな色調として漆をイメージしているんです。まるで、見ていると吸い込まれるようなカラーですね」
ーーでは最後に。今回の開発をとおして、エルグランドらしさをどう捉えましたか? また、タイムレスジャパニーズフューチャリズムに進化はあったのでしょうか?
「やはり、基本的にはグランドツーリングカーとして長距離でも疲れないクルマですね。いまのLクラスミニバンはオラオラしていたり、ショーファーのクルマといった使われ方が多いですが、その点エルグランドはあくまで家族のためのクルマであり、ドライバー自身も運転を楽しめる。その原点に立ち帰って開発しました。また、タイムレスジャパニーズフューチャリズムは、アリア以降シンプルな強さとモダンさを融合した普遍的デザインを追求してきましたが、1本のうねりのないプレスライン、シームレスな面などでこれを継承しつつ、組子など伝統のパターンの現代的解釈といった新しさを打ち出せたと思います」
ーーたしかにジャパンフラッグシップとして、ライバルとは異なるエルグランドならではアプローチが徹底されていることが伺われますね。本日はありがとうございましいた。
〈文=すぎもと たかよし〉






