1946年創業。商品のパッケージをはじめ、販促物の企画・デザイン・印刷など、企業の商品・ブランドづくりを幅広く支援している寿精版印刷。

その田町オフィスにある販促事業部でユニークな実証実験が始まった。アイデア出しやコミュニケーションを目的とした会議に限り、「ノンアルコール飲料」を導入するという試みである。

「仕事中に、お酒のような味のものを飲む」という行為に対し、社内では当初戸惑いの声もあったようだが、開始からわずか1カ月で、会議で『発言しやすくなった』『会話の量が増えた』といった声も上がっているという。

なぜ、あえて「ノンアル」を会議に持ち込んだのか。実際に現場で起きた変化や社員の反応について、常務取締役の澁谷健さんに話をうかがった。

「プシュッ」が会議のスイッチ! ノンアルが変えるビジネス現場

――今回、会議にノンアル飲料を取り入れるという非常にユニークな取り組みを始められたそうですが、まずはその経緯や概要について教えてください。

きっかけは、以前からお付き合いのある企業がノンアルコール飲料の新しい飲用シーンを提案されていたことですね。「だったら、我々の業務の中にも一度取り入れてみたら面白いんじゃないか?」と考えたのが始まりでした。

もちろん、最初は社員の一部から「本当に会議中に飲んでいいのか」という戸惑いの声もあったと聞いています。でも、何事もまずはチャレンジしてみようよ、ということで今年7月から検討を始めて、さっそく8月からスタートしました。

――どんな会議の場でもノンアル飲料を飲んでいいんですか?

いえ、すべての会議で飲んでいいわけではなくて、基本的には3名以上の「アイデアを出し合う会議」や「リラックスしてコミュニケーションを図る会議」に限定しています。品質管理や生産、数字に関わるようなシビアな会議での飲用は不可というルールを設けて運用しています。

――「アイデア出し」の場に限定されているのは、何か狙いがあるのでしょうか?

我々販促事業部の仕事は、お客様の商品が売れるきっかけを作ったり、ブランド価値を高めたりすることです。つまり、常にクリエイティブなアイデアが求められるんですね。そのためには、会議の場に高揚感やワクワク感を持ち込むことが重要だと思っていました。

普段の会議だと、飲み物はお茶やコーヒーが一般的ですが、それをノンアルコール飲料に置き換えることでワクワク感や高揚感が生まれ、場の雰囲気がガラッと変わるんじゃないかと期待したんです。

まさに狙いどおり! 活性化に成功したブレスト会議

――実際に導入してみて、社員の皆さんの反応はいかがでしたか?

若い世代からは非常にポジティブな受け止め方をされましたね。一方で、私のようなベテラン世代は、どうしてもノンアルに対して「お酒の代替品」というイメージが強かったので、最初は少し慎重な人もいました。

でも、始めてみたら面白いんですよ。普段ならお茶やコーヒーで淡々と始まるところですが、いろんなノンアル飲料を用意しているので、「それ美味しいよね」とか「そんなフレーバーあるんだ」という会話が自然に生まれます。これだけでもう、いいアイスブレイクになっています。

特に、販促の仕事っていうのはアイデアが命ですから、ブレストなんかをやるとき、本当はベテランも新人も関係なく意見を出し合いたい。でも、実際は難しいじゃないですか。若手社員はどうしても遠慮して、本当は言いたいことがあるのに、言いにくい部分がある。

でも、ノンアルを片手に持っていると、いい意味で少し砕けた雰囲気になりますから、当初の狙いどおり活発な意見が出るようになりました。

――実際の会議では、どんな場面でそうした変化を感じますか?

会議の冒頭で誰かが「プシュッ」と缶を開ける。さすがに「乾杯!」とまではいきませんが(笑)、その音だけで場が和みますし、そこで生まれたリラックスした空気感が発言のしやすさにつながっているように思います。

――缶を開ける音や飲み物を囲む雰囲気が、会議での話しやすさにつながっているのですね。

そうですね。それに、子育てなどで早く帰らなきゃいけない社員も多く、仕事後に飲みに行ってコミュニケーションを取るというのが難しいメンバーもいます。そういう社員からも、「飲み会には行けないけど、会議の中でそれに近い時間が持てて嬉しい」という声がありました。チームの一体感を高める新しい手段になっているな、と感じています。

提案する側が「ワクワク」していなければ、いい仕事はできない!

――導入から1カ月が経ち、社内アンケートも実施したそうですが、どのような声が上がっていましたか?

約半数は「ノンアル飲料のおかげで会議が良くなった」と回答しています。具体的には「いつもより発言しやすくなった」「会話の量が増えた」といった、活性化を実感する声が多かったですね。

面白かったのが、ノンアル飲料の種類の好みです。今回、ビールテイスト以外にもいろいろなフレーバーを用意したんですが、人気だったのが「のんある酒場 梅酒ソーダ ノンアルコール」でした。半数ほどがこの商品を一番に挙げていたくらいです(笑)。

――一番人気はオールフリーかと思っていたので、ちょっと意外でした! ちなみに、この取り組みに対し、何かネガティブな反応や課題はありましたか?

いえ、ネガティブな意見はほとんどありません。若手社員たちの会議での発言機会も増えているようですし、会議への心理的なハードルが下がり、会議への参加意欲も高まっているようです。

――今後、この取り組みをどのように広げていきたいとお考えですか。

まずはこの販促事業部でのチャレンジとして継続していきたいと思っています。品質会議や工場の現場など、絶対に気を引き締めなきゃいけない場には導入しませんが、アイデアが必要な会議であれば、他の部署や他のオフィスにも広げていく価値はあるかなと考えています。

やっぱり、仕事は楽しくやってほしいんですよ。一日の大半を会社で過ごすわけですから。会議だって苦しいだけの時間じゃなくて、楽しくて、しかも良いアイデアが出る場所にしたい。こういうノンアルみたいなツールがあることで、普段は出にくい意見が共有されたり、思いもよらない発想が飛び出したりする。それを否定せずに、面白がれるような文化を作っていきたいですね。

――ノンアルがそこまでのポテンシャルを秘めていたとは、意外でした。

我々の仕事は、お客様の商品が選ばれる理由を作ることです。提案する側の我々がワクワクしていないのに、お客様や消費者をワクワクさせる提案なんてできるわけがないですからね。

ノンアルを導入したことで、会話が活性化し、意見を出しやすい雰囲気につながったという実感は確かにあります。

これを一時のイベントで終わらせるのではなく、もっともっと自由で活発な意見が出る土壌にしていきたい。そうすることで、お客様のブランド価値を高めるような、より質の高い提案につなげていければと思っています。

これからも、お互いに同じ飲み物を飲みながら「同じ釜の飯」を食うような一体感を持って、新しい価値を生み出していきたいですね。

当社では、従業員が自由に意見を出し合い、新たな価値創造につながる職場環境づくりの一環として本取り組みを実施しています。コミュニケーションのあり方を柔軟に考える実証的な取り組みの一つとして検証を進めています。