18日、映画『踊る大捜査線 N.E.W.メトロポリスを駆け抜けろ!』が公開され、さっそくネット上にはさまざまな反響が寄せられている。
14年ぶりの新作公開であり、これまで公開された映画シリーズ8作の累計動員数は3863万人、累計興行収入524.1億円。『踊る大捜査線』は最も多くの日本人が見たシリーズ作だが、すべては1997年の連ドラから始まった。
ひさびさに見る人はもちろん初めて見る人も含め、あらためて、なぜ『踊る大捜査線』は愛されているのか。ドラマ解説者・木村隆志が掘り下げていく。
第1話冒頭は「取り調べコント」
下記、『踊る大捜査線』の本質を伝えるために第1話のみネタバレしながら解説していく。
なんと第1話の冒頭は刑事コントのような演出からスタート。主人公・青島俊作(織田裕二)がタバコを吸いながら被疑者を取り調べしているが、その仕草は明らかに古く芝居がかっている。上司たちから「今、西暦何年だね?」などのツッコミが入り、青島が「カツ丼食べるか?」と言ったところで「そこまで」の声がかかった。犯人役から「刑事ドラマの見過ぎだ」と言われ、取り調べのシミュレーションだったことが明かされる。
当時、「新しい刑事ドラマが始まる」と聞いて見た人はこの冒頭シーンに混乱。「あれ!? これは刑事ドラマなのか?」と戸惑うが、『踊る大捜査線』は当時、刑事ドラマの定番であるアクション、銃撃戦、カーチェイスなどがない作品だった。
代わりに描かれたのは警察組織内の人間ドラマ。物語は、コンピューターメーカーの営業マンだった青島が、刺激を求めて26歳で警察官採用試験を受け、3年間の交番勤務を経て湾岸署に配属されたところからスタートした。
ところが、事件現場に行こうとするもパトカーが手配できずに断念。走って駆けつけるも初動捜査の機動捜査隊から「あっち行ってろ」「お前処分受けたいのか」と追いやられてしまう。さらに管理官・室井慎次(柳葉敏郎)率いる警視庁捜査一課が臨場し、青島は所轄の厳しい現実を突きつけられていく。
捜査会議の受付をやらされ、始まってからは後ろの席に座らされ、割り振られた仕事は管理官の運転手。捜査は一向にさせてもらえないまま、第1話の事件は解決してしまった。一方で室井管理官は刑事たちに指示するだけでなく、自ら精力的に動き回っている。『踊る大捜査線』はこのようなキャリア組とノンキャリア組の格差にスポットを当てた作品だった。
視聴者の感情移入を誘う仕掛け
なかでも象徴的だったのは青島の同僚・恩田すみれ(深津絵里)のセリフ。青島から「サラリーマン時代と何にも変わらないっすよ」とボヤかれたすみれは「殺人事件の捜査がしたいなら本店に行くこと。仕事適当にして勉強頑張る。昇進試験受けて階級上げる。上司ヨイショして気に入られる」と淀みなく返した。
キャリア組とノンキャリア組の格差をベースにしながら、対立させなかったこともヒットに至ったポイントの1つだろう。青島と室井は「権力に屈しない」という共通点から、立場の違いを越えた絆を育み、視聴者の感情移入を誘った。
その他でも、刑事部長が接待ゴルフから帰ってくるシーン、パトカーではなくタクシーで移動するシーン、交通課の若手婦人警官から飲み会に誘われるシーンなど、これまで見たことがなかった刑事の日常が意外性たっぷりに描かれ、興味を誘っていた。
