
ラッパーのマックルモアは、パレスチナ人を支援する団体に100万ドル(約1億5600万円)を寄付すると表明し、億万長者でニューイングランド・ペイトリオッツのオーナーを務めるロバート・クラフトにも「同額を寄付してほしい」と呼びかけた。クラフトは、シアトル出身のラッパーであるマックルモアをエド・シーランのツアーから外すよう圧力をかける動きを主導したとされている。
ロバート・クラフトにも同額の寄付を呼びかけ
マックルモアの降板だけでなく、それを受けてシーランのオープニングアクトが相次いでツアーを離脱したことまで、2日間にわたって報道が続くなか、マックルモアは9月16日に声明を発表。「いまも殺され続け、いまも軍事占領下で暮らし、いまも自由のために闘っている」ガザとヨルダン川西岸のパレスチナ人に「議論の焦点を戻したい」と述べた。さらに、シーランの「Loop Tour」で得る純収益100万ドルを6つの団体に全額寄付するとし、クラフトにも同額の寄付を呼びかけた。
「どれだけ意見が食い違っていても、これだけは同意できるはずだ。パレスチナ人の命は守られるに値する」とマックルモアは記した。「パレスチナ人の命の価値は、この地球上に生きるほかの誰の命にも劣らない」
マックルモアがクラフトに同額の寄付を呼びかけてから数時間後、クラフトがこれに応じた。「私は人生の多くを、あらゆる人々のあいだに橋を架けることに捧げてきた。すべての命は守られる価値があると心から信じている」と、クラフトはジレット・スタジアムのSNSに掲載した声明で述べた(クラフトは同スタジアムのオーナーでもある)。「今日の早い時間、マックルモアが私に同額の寄付を呼びかける前に、エドから電話があり、この地域の人道危機への支援として、彼自身の寄付に合わせて200万ドル(約3億1200万円)を拠出してほしいと頼まれた。エドは今後、ほかの会場オーナーにも協力を呼びかける予定で、私たちの目標はこれからも力を合わせ、人々のあいだに橋を架けていくことだ」
クラフトはまた、自身が「パレスチナ人に機会をもたらす取り組みを支援してきた」と述べたが、それが具体的にどのような取り組みなのかは明らかにしなかった。
マックルモアが寄付する6団体は、Palestine Childrens Relief Fund、HEAL Palestine、Gaza Soup Kitchen、Medical Aid for Palestinians、United Nations Relief and Works Agency USA、Anera。
「十分な治療設備や物資すらない病院へ子どもを抱えて駆け込む親たち、そして何度でも現場へ戻り続ける医師、救急隊員、ジャーナリスト、支援活動従事者たちに焦点を当てたい」とマックルモアは記した。「パレスチナと連帯することで、実際に大きな代償を払ってきたオーガナイザーや活動家たちにも焦点を当てたい。彼らが負っているリスクは、僕のものとはまったく次元が違う」
さらにマックルモアは、小切手を切ることは、自分にできる連帯の形のなかでは「最も代償の少ないもののひとつ」だと述べた。それでも寄付をするのは、自分にそれができるからであり、「世界の多くが議論しているあいだにも、これらの団体は実際に活動を続けている」からだという。
また、「支援だけでは、そもそも支援を必要とさせている状況そのものを解決することはできない」とも強調した。ガザの壊滅的な状況とヨルダン川西岸の占領について、「人間が生み出した不正義」であり、「直ちに政治的な変化が必要だ。パレスチナ人は何十年ものあいだ基本的な権利を奪われてきた。自由になるために、これ以上一日たりとも待たされるべきではない」と述べている。
マックルモアのパレスチナ支持曲、ツアー降板騒動で再生数急増
再生数の伸びがはっきり確認できるのは、今回の騒動でも焦点となった「HIND'S HALL」だ。Spotifyのデータを集計するKworbによると、9月15日時点で同曲は1日約5万3800回再生されている。別の集計サイトTooXclusiveでは5月16日時点のデイリー再生数が約1万300回だったため、約4カ月で5倍以上に増えた計算になる。マックルモア全体でもSpotifyで1日約364万回再生されており、月間リスナーは9月17日時点で約3408万人に達している。
「HIND'S HALL」は2024年、米大学で広がったパレスチナ支持デモへの連帯を示す楽曲として発表された。今回マックルモアは、エド・シーランのツアーでも同曲を披露し、「Free Palestine」と訴えていた。ツアー降板をめぐる騒動が世界的に報じられるなか、SNS上では同曲やマックルモアの楽曲を積極的にストリーミングしようと呼びかける動きも見られている。
エド・シーランのツアー降板騒動、オープニングアクトが相次ぎ離脱
9月14日、エド・シーランの「Loop Tour」を主催するプロモーターは、マックルモアがツアーを離れると発表した。複数の会場がシーラン側に対し、シアトル出身のラッパーが出演者として残るのであれば公演を開催させないと通告したことを受けての決定だった。これに先立ち9月初め、メットライフ・スタジアムで行われた公演でマックルモアがパレスチナ人との連帯を表明し、「Free Palestine」と叫び、イスラエルによるガザでの戦争で生じた破壊の映像を映し出したことに対し、親イスラエル団体から批判が上がっていた。
その後マックルモアは、自身をツアーから外す動きをクラフトが主導したと主張した。マックルモアによれば、ペイトリオッツのオーナーであるクラフトはまずシーランに対し、マックルモアをジレット・スタジアムには出演させないと伝え、その後、ほかのスタジアムオーナーの一部にも働きかけ、シーランに「マックルモアをツアーに残すなら、我々の会場では公演させない」という最後通告を突きつけたという。
一方のクラフトは、マックルモアをジレット・スタジアムには出演させないことを認め、その判断はラッパーの「最近の行動、ニュージャージーで行われたエド・シーランの公演中にステージ上で共有された内容、そしてユダヤ人コミュニティをひどく侮辱し、傷つけるものだったと我々が考える、反ユダヤ主義的な言動やイメージのこれまでの経緯」に基づくものだと説明した。ただし、ほかのスタジアムオーナーにも働きかけたというマックルモアの主張には言及しなかった。
シーランも自身の声明で、この1週間「橋を架ける」ことと「解決策を見つける」ことに努めてきたものの、「解決には至らなかった」と述べた。それでも、「Loop Tour」北米公演でほかにオープニングアクトを務めていたルーカス・グラハムとアーロン・ロウは、マックルモアが外された経緯への抗議としてツアーを離脱。各公演でシーランとともに数曲を演奏していたアイルランドの伝統音楽バンド、Beogaもツアーから撤退した。さらにフィニアスも、今後予定されている南米公演への出演を取りやめた。その後、多くのアーティストや政治家がマックルモアへの支持を表明し、クラフトを批判している。
9月16日時点で、シーランの「Loop Tour」は引き続き予定通り継続されることになっており、次の公演は9月19日にフィラデルフィアで行われる予定だ。
From Rolling Stone US.