LATIN MAFIAが語る「ラテン・オルタナティブ」の最前線──Fred again..との濃密な50時間、メキシコ発3兄弟の自由な感性

レゲトンやサルサといったラテン音楽が内包する煮えたぎるようなエネルギー、それを先鋭的なロック/エレクトロニカやエクスペリメンタル・ラップと融合させてポップ・シーンへと提示する潮流が存在する。「ラテン・オルタナティブ」とも呼称されるこのムーブメントにおいて、現在最もホットなアクトとして注目を集めているのがメキシコ・モンテレイの3人組=ラテン・マフィア(LATIN MAFIA)だ。

ミルトン/エミリオ/マイクのデ・ラ・ロサ3兄弟によるラテン・マフィアは、興味の赴くままに音楽を聴き漁り、自分たちの声を見つけ、いつしかそれを一つの音楽プロジェクトとして発表するようになった。タイラー・ザ・クリエイターがオッド・フューチャーというアメリカ合衆国の西海岸で誕生したコレクティブを拠点にそのセンスを涵養したように、彼らはモンテレイの街角でジェイムス・ブレイクやオマー・アポロなどにインターネットを経由して触れ、オルタナティブな感性を養っていったのだった。サマーソニック2026のステージでの、エイフェックス・ツインとメイヘムのTシャツが横並びになっている光景は、まさにその自由かつ縦横無尽なセンスの象徴であった。

パンデミック以降に活動を本格的にはじめ、急速にプロップスを獲得していったラテン・マフィア。ラウ・アレハンドロや同じくサマーソニックに出演したウンベとも共作し、慌ただしく世界を回る彼らにとって、特にここ1〜2年のメガヒットは狂騒そのものであった。自主レーベルに「HOME MADE records」という名前をつけるほど兄弟間の繋がりを重視していた3人にとっては何もかもが初めての体験で、メンタルヘルス上の問題も抱えたとも過去のインタビューで明かしている。

そんな中で、フレッド・アゲインとのミックステープ『9 months & 50 hours』がドロップされた。今年7月には約3日間にわたるレコーディング風景がYouTubeにてノンストップで中継され、そこでは作業に没頭してサウンドへとダイブしていく姿が克明に記録されていた。寝食を共にする合宿型のセラピーのような時間から、サマーソニックでも披露された「Quiereme」のようなバンガーが生まれ、彼らはまさに新しい翼を獲得したのだった。

今回は世界を走り回る3人へメール・インタビューを実施。慌ただしい日々の中で、彼らは誠実なアンサーを返してくれた。下に続く7つのQ&Aから、ラテン・マフィアの現在地を探ってほしい。

左から、ミルトン、エミリオ、マイク(Photo by Takuya Maeda)

―日本初ライブ、素晴らしかったです。大音量で観客と共に暴れる瞬間と静かに歌う瞬間が混ざり合って、3人の美学が最大限に強調されているように感じました。みなさんの目線から、ステージの手応えやオーディエンスのリアクションはいかがでしたか?

エミリオ:えーっと、ある意味で普段の僕らよりも落ち着いたショーだったと思うよ。日本の文化として、客席での振る舞いや音楽との向き合い方が穏やかなんだろうね。ただショーが進むにつれて、僕らが求めるエネルギーに応えるように、みんなが少しずつほぐれていくのを見るのはすごく面白かった。少しずつ解放されていった、そんな感じかな。

―感情を表に出す自由なステージング──客席や海に飛び込むなど──やジャンルレスな音楽性から、3人が自分たちの好奇心を際限なく表現しようとしているのが伝わりました。そのフリー・マインドは自分たちのどういったところから生じるものなのでしょう? そういった精神をラテン・マフィアに授けてくれた「先生」のような存在を挙げるとしたら誰になるでしょうか?

ミルトン:誰か特定の「先生」がいるわけではないんだ。単純に、僕らは3人とも子どもの頃から多動なタイプなんだよね。みんな骨折ばっかりしてたよ。何かやりたい、動きたい、走りたい、転がりたい……そういう欲求があったし、両親も決して抑え込まず、むしろ支えてくれたんだ。アメリカン・フットボールをやらせてくれたり、ダンスやテコンドーの教室に通わせてくれたり、とにかく色々なことをやらせてくれた。昔からずっと動き回ることが好きだったから、今の僕らがいるんだ。

サマーソニック2026のライブ写真(©️SUMMER SONIC All Copyrights Reserved.)

―急速に世界中へと活動の範囲を広げていますが、中でも象徴的なフレッド・アゲインとの出会いについて教えてください。彼とどのように仲を深め、共にミックステープを作るようになったのでしょうか?

エミリオ:フレッド・アゲインとはライブで出会ったんだ。というか、僕らは何年も前から彼のことを知っていた。彼の大ファンだからね。ライブにも4回くらい行ってるよ。ある日、メキシコシティにある使われなくなったスケートパークで行われたライブに行って、そこで彼の兄のアレックス・ギブソンと知り合ったんだ。それでアレックスと話していたら、セットの途中で突然フレッドが僕らの曲をかけてくれたんだ。

それから10カ月くらい経って、僕らがドイツにいたとき、ロンドンまで短いフライトで移動することになり、アレックスが自宅に招いてくれたんだ。そこでフレッドに会って、一緒に食事をして、彼の兄弟とも会って、それで僕らも兄弟みたいな関係になったんだ。

―メキシコの3人兄弟が「ラテン・マフィア」というプロジェクトとして世界に広がっていくプロセスはあまりに速く、多少の困惑やメンタルヘルスの問題も生じたと以前のインタビューでお見かけしました。その点、フレッド・アゲインと共に一つの音楽作品の完成に向けて没頭するという体験は、今の3人にとってどのような効果をもたらしたと思いますか?

ミルトン:フレッドとの制作は、僕らが普段経験していることとは全く違う、未知の体験だったと思う。これまで3人が音楽を作ってきた期間、つまり──あえてこう呼ぶけど──「キャリア」を通して見てもらえればわかると思うけど、僕らは日々の生活や日常についてSNSなどで共有することに関して、かなり控えめなんだ。ましてや、音楽を作っているときの僕らの環境がどんなものなのかについては、さらに見せてこなかった。だからこそ、音楽を作るうえで僕らがやっていることをフレッドと共に扉を開いて世界に見せた経験はすごく新鮮な体験だった。さらに、その作品をみんなと共有できたことにはワクワクしているよ。

ジャンルを越えて育まれた、ラテン・マフィアの感性

―サマーソニックでのライブに話を戻すと、メイヘムとエイフェックス・ツインのTシャツを着ていたのも象徴的でした。他にも、以前からあなたたちはタイラー・ザ・クリエイターやリル・パンプといった欧米のミュージシャンからの影響を積極的に公言していますよね。これまでどのような音楽やカルチャーに親しんできたのか、日本のリスナーに紹介していただいてもいいですか?

エミリオ:そうだな……まさにそれについて、すごく面白いと思ったコメントがあって。僕らのライブを「Aphex TwinミーツMayhem」と表現していたポストを見つけたんだ。すごく鋭いと思うよ。その特徴はまさに僕らの音楽に表れていると思う。

まず、若い頃はインディー・シーンの音楽をたくさん聴いて育った。たとえばザ・ネイバーフッドとか、そういう音楽だね。そこからだんだん新しいサウンドを探るようになって、フランク・オーシャンやタイラー・ザ・クリエイター、ジェイペグマフィアみたいな、自分のサウンドを絶えず進化させている人たちの音楽へと興味を広げていったんだ。

Photo by Takuya Maeda

―実際に自分たちで音楽を作り始めた頃は、どんな音楽を作りたいと思っていたのでしょうか? そこから現在のラテン・マフィアへは、どのような変化がありましたか?

ミルトン:色々なプロジェクトが混ざり合ったものとして聴こえるサウンドを作りたかったんだ。どちらか一方が、もう一方のジャンルに入り込んだだけのようなものではなくて……。

マイク:そうだね。最初から具体的なイメージを想定していたわけじゃないんだ。それも僕らがやっていることの魅力の一つなんじゃないかな。ある日はあるものが欲しくなって、次の日には全く違うものが欲しくなる。時に、それぞれが矛盾するようなものを求めることだってある。少しシリアスなものを作りたい日もあれば、もう少しリラックスしたものを作りたい日もあるんだ。

毎日違うものを求めている、そのこと自体が僕らの面白さなんだと思う。そして、もし「成功」というものを、今この瞬間の自分がまだ持っていないものを手に入れることだと定義するなら、ラテン・マフィアは何度だって「成功」できる。僕たちには欲しいものがたくさんあるんだ。

―最後に、様々なカルチャーから影響を受ける中で、自分たちの意識に分かちがたく根付いている「メキシコらしさ」や「ラテン・マフィアらしさ」は何だと思いますか?

エミリオ:僕らは本当に普通の人間なんだと思う。音楽を作るのが好きな、ごく普通の人たち。それがそのまま僕らに表れているんじゃないかな。僕らは自転車に乗るのが好きなメキシコ人でしかなくて、食べるものや目にするものからインスピレーションを受けたり、人と出会ったりする。そういうことが僕らのサウンドにも、ラテン・マフィアというものにも表れているんだ。

TODOS LOS DÍAS TODO EL DÍA 24 octubre 2024 Un disco producido, compuesto,  interpretado y dirigido por Emilio, Milton y Miguel de la Rosa Cover  @STAYSTILLZ , @LATIN MAFIA

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