
マックルモアが、エド・シーランのスタジアムツアーの残りの日程から外された。複数の会場がツアーのプロモーターに対し、同ラッパーの出演を認めないと伝えたためだという。この知らせは、マックルモアがステージ上でガザ地区やヨルダン川西岸地区のパレスチナ人への支持を表明し、「パレスチナに自由を(Free Palestine)」と訴える発言を繰り返した後にもたらされた。
シーランの「Loop Tour」米国公演を手がけるプロモーター、Messina Touring Groupは、Rolling Stoneに寄せた独占声明でこう述べた。「エド・シーランの米国『Loop Tour』のコンサートプロモーターとして、今後の米国ツアーの会場から、マックルモアがラインナップに入っている場合はコンサートの開催を認めないと通告されました。そうなればツアーは中止となり、何十万人ものファンに影響が及ぶことになります。関係者との協議の結果、マックルモアは残りの日程にサポートアクトとして出演しないことになりました」
マックルモアは、今週金曜の9月19日にフィラデルフィアで再開するシーランの米国ツアー残り10公演のうち、8公演に出演する予定だった。同ラッパーの出演に異議を唱えたとされる会場には、フィラデルフィアのLincoln Financial Field、マサチューセッツ州フォックスボロのGillette Stadium、アトランタのMercedes-Benz Stadium、インディアナポリスのLucas Oil Stadium、ノースカロライナ州シャーロットのBank of America Stadium、テキサス州アーリントンのAT&T Stadium、フロリダ州タンパのRaymond James Stadiumが含まれる。
シーランの代理人と大半の会場は、コメントの要請にすぐには応じなかった。
マックルモアはInstagramで発表した声明の中で、ニューイングランド・ペイトリオッツとGillette Stadiumのオーナーである億万長者ロバート・クラフトがシーランに圧力をかけた結果、自分がツアーから外されたと主張した。
「エドから、クラフトが『自分のスタジアムでは僕を出演させない』と言っていると聞いた」とマックルモアは書いている。「さらにエドから、クラフトがほかのスタジアムのオーナーたちにも働きかけ、彼らが一体となって最後通告を突きつけたと聞いた。『マックルモアをツアーに残すなら、我々の会場では演奏させない』と」
クラフトは自身の声明で、マックルモアをGillette Stadiumに出演させない判断を下したことを認め、その理由について「彼の最近の行動、ニュージャージーで行われたエド・シーランの公演でステージ上から提示された内容、そしてユダヤ人コミュニティにとって非常に侮辱的で深く傷つくものだと我々が考える、反ユダヤ主義的な言説やイメージをめぐる、より広範な過去」を踏まえたものだと説明した。一方でクラフトは、ほかのスタジアムオーナーにも「働きかけ」、マックルモアをツアーから外すようシーランに圧力をかけたという主張については言及しなかった。
ここ数年にわたりパレスチナ人やガザ地区の人々への支持を公然と表明してきたマックルモアは、今月初めに「Loop Tour」に参加し、9月4日と5日にニューヨーク市郊外のMetLife Stadiumで2公演に出演した。初日のステージでは、シアトル出身の同ラッパーが「パレスチナに自由を」と叫び、ガザ地区と占領下のヨルダン川西岸地区の人々への連帯を表明。さらにガザ地区の惨状を伝える映像を映し出し、コロンビア大学で建物を占拠し、イスラエル軍に殺害された6歳の少女ヒンド・ラジャブ(Hind Rajab)にちなんでその建物を命名した親パレスチナのデモ参加者について歌ったプロテストソング「HIND'S HALL」も披露した。
「そもそも僕がこのツアーに参加したいと思った大きな理由のひとつは、こういうスタジアムのステージに立って、僕の心にとても近く、大切な2つの言葉を口にするためだった。『パレスチナに自由を』だ」と、マックルモアはMetLife Stadium初日の公演で語った。「言ったぞ、『パレスチナに自由を!』。この言葉を大きく、はっきりと響かせたい。ガザ地区から占領下のヨルダン川西岸地区に至るまで、そこにいる人々に、僕たちはあなたたちのことを忘れていないと知ってもらうために」
親イスラエル団体から反発、出演拒否めぐり「言論の自由」の論点も
これを受け、親イスラエル団体から多くの批判や反発が巻き起こった。StopAntisemitismはInstagramへの投稿で、マックルモアがファンに「反イスラエルのプロパガンダ」を不意打ちで浴びせたと非難し、ポップシンガーのピンクもその投稿を拡散した。
ピンクはその後、マックルモアが「パレスチナに自由を」と訴えたこと自体に異議があるわけではないと説明し、こう述べた。「私はこれまで、ほかのアーティストを黙らせるよう求めたことは一度もないし、今も求めていない。誰かをクビにしてほしいわけでもないし、払い戻しがほしいわけでもない。私が求めているのは、ユダヤ人の母親として『あれは怖かった。私の大切な人たちも怖い思いをした』と言えること。それを、私たちの恐怖はただのプロパガンダだと切り捨てられることなく、そして、私がそれに気づいたというだけで、まるでジェノサイドを容認しているかのように言われることなく、口にできることだ」
さらにIsraeli American Councilは、シーランに対して残りのツアーからマックルモアを外すよう求める署名運動を開始。マックルモアの行動は、「オープニングアクトが世界規模のコンサートという場を利用して、一方的な政治的主張を推し進める場合、どこに一線を引くべきなのか」という問題を提起していると主張した。
MetLife Stadiumでの2日目の公演でも、マックルモアはあらためて「パレスチナに自由を」と訴え、会場にいるユダヤ人の観客に向けてこう語った。「イスラエルを批判すること、アパルトヘイトを批判すること、ジェノサイドに反対することは、決してあなたたちを批判することではない。僕が伝えたいのは平和だ。すべての人間が尊厳と敬意をもって、平等に扱われることへの愛なんだ」(人道支援団体や国連の委員会は、イスラエルによるガザ地区での行為がジェノサイドに当たるとしている。イスラエルと、米国を含む同国の同盟国はこれを否定している)
マックルモアの公演を認めないとされるスタジアムの大半もコメントの要請にすぐには応じておらず、同ラッパーの出演に反対した理由についての説明も得られていない。そうしたスタジアムのうち、シャーロットのBank of America StadiumとフォックスボロのGillette Stadiumの2会場は民間所有だが、それ以外は都市や州、その他の政府機関が所有し、多くの場合は運営にも関与している。そのため、マックルモアの発言を理由に各会場が出演を禁じたのであれば、合衆国憲法修正第1条をめぐる問題が生じる可能性がある。
たとえば、シーランの「Loop Tour」最終公演の会場となるタンパのRaymond James Stadiumも、この夏の初め、カニエ・ウェストのコンサート2公演をブッキングした際に似たような状況に直面している。当然ながら、ウェストが過去に繰り返してきた反ユダヤ主義的発言を理由に反発が起こり、公演中止を求める声も上がったが、コンサートは予定どおり開催された。
注目すべきことに、Yeのプロモーターは契約書に、同ラッパーが過去に公の場で行った発言や示した見解を理由にRaymond James Stadiumが公演を中止することを禁じる条項を盛り込んでいた。また法律の専門家も地元メディアに対し、公演を中止すれば合衆国憲法修正第1条に違反する可能性が高かったと話している。Raymond James Stadiumはフロリダ州ヒルズボロ郡が所有し、公的機関であるTampa Sports Authorityが運営しているため、Yeの過去の発言を理由にした公演中止は、政府による言論の制限とみなされる可能性があったからだ。
マックルモアに関する今回の判断についてコメントを求めたところ、Tampa Sports Authorityの担当者はRolling Stoneに対し、「マックルモアが今度の公演に出演しないことは確認できます。このラインナップ変更を除き、コンサートは予定どおり開催されます」と答えた。
この件に関する声明の別の箇所で、マックルモアはエド・シーランを「友人」と呼び、こうした圧力を受けたシンガーソングライターが「とんでもなく厳しい立場に置かれていた」と認めている。マックルモアは続けた。「普段は政治的立場を示さない彼の姿勢が、これまでにない形で試されていた。彼は、彼が話をした多くの人たちが『パレスチナに自由を』という言葉やパレスチナ国旗のイメージに傷ついたと僕に話した。僕は、もしその言葉のほうが、イスラエルによって何万人ものパレスチナの子どもたちが殺されていることよりも不快だというのなら、その人たちの立っている場所と僕の立っている場所の間には、根本的な断絶があると伝えた。でも彼は、公に示している『僕はどちらの側にもつかない』という立場から抜け出すことができなかった」
シーランの「Loop Tour」北米公演は秋を通して続き、11月7日にRaymond James Stadiumで最終公演を迎える予定だ。ツアーでは引き続きルーカス・グラハムとアーロン・ロウがサポートアクトを務める。その後、11月から12月にかけて南米公演が行われる。
From Rolling Stone US.