
パンク、スカ、ファンク、ソウル、ヒップホップ、レゲエ……様々な音楽を飲み込み、ジャンルという枠組みそのものを自由に飛び越えてきたフィッシュボーン(FISHBONE)。1979年にLAで結成され、1986年の1stフルアルバム発表以来、圧倒的なライブ・パフォーマンスとオリジナルのサウンドで、後のミクスチャー・シーンに多大な影響を与えてきた。
2025年にはフルアルバムとしては約19年ぶりとなる『Stockholm Syndrome』を発表し、今年は1stアルバム『In Your Face』の40周年を記念したリイシュー盤もリリース。そして、9月14日の大阪公演を皮切りに、2022年以来、4年ぶりの来日となるジャパンツアーを敢行する。来日を目前に控え、オリジナル・メンバーであり、ボーカル、サックス、テルミン、パーカッションを担当するアンジェロ・ムーアにインタビュー。フィッシュボーンの原点から、音楽、クリエイティビティ、そして40年以上にわたって表現し続けてきた理由まで、いろいろ語ってもらった。
―個人的な話ですが、90年代にLAのクラブで何度もフィッシュボーンを観てきました。ヒップホップのイベントでも、唯一バンドとして出演しましたよね。他はみんなラッパーなのに、フィッシュボーンだけがバンドで、いきなり全開で演奏が始まって、会場中でモッシュが起きた時は、本当に衝撃でした。でも、フィッシュボーンはそんなことお構いなしに、自分たちのやりたい音楽をやっていましたよね。
アンジェロ ああ、覚えてるよ。確か、Starlightだったと思う。ランDMC(RUN-DMC)と共演したね。アイス・Tとも共演した。俺たちの前も後ろも、ヒップホップのグループだった。ああいうショーは他になかったからね。ただ、俺がそれまでにやってきた数多くのショーの中で、具体的に覚えてるものって、実はそんなに多くないんだ。
―ヒップホップとレゲエがかかる別のクラブでも、突然現れて、いきなりハードコアな曲ばかりプレイしたこともありました。フィッシュボーンは昔から、常に境界線を越えていく自由なバンドという、強烈なイメージがあるんです。
アンジェロ そうだね。俺たちは、「音楽に情熱があるなら、それでいい」って考えてたんだと思う。たぶんそれが理由で、フィッシュボーンはいろんなジャンルのバンドと一緒にブッキングされることになった。俺たちの音楽にはソウルと情熱があるからね。それに、パンクロックもヒップホップも、どちらもソウルと情熱に満ちた音楽だから。
―来週には日本に戻ってきますが、日本に初めて来た時のことは覚えていますか? 1986年のことです。
アンジェロ 何だって? 86年かよ。いや、スゴいことだな。まあとにかく、まだ俺たちがここにいられることに感謝しなきゃ。日本での思い出はたくさんあるよ。東京スカパラダイスオーケストラ、Oi-SKALL MATES、LÄ-PPISCH、爆風スランプ、THE SKA FLAMES……。あと、Misae Mizuyama。彼女は、俺の作品のアートワークの大半を大阪で手がけてくれたアーティストだ。俺が残してきた作品に、彼女のアートが貢献してくれたことには、本当に最大級の敬意を表したいよ。彼女にまた会えたらうれしいな。
―80年代から90年代にかけて、日本のスカのシーンは大きかったし、みんなフィッシュボーンのことが大好きでしたね。
アンジェロ 東日本大震災の後に、東京スカパラダイスオーケストラのフェス(『トーキョースカジャンボリー vol.3』)にも出たからね。一緒に被災地支援をやったし、一緒に曲も作った。
―フィッシュボーンと日本の間には、長い年月をかけて、スゴく良いつながりができていると思います。2015年に出たソロアルバム『Ska Du' Au' Ska don't』でも、日本の曲をカバーしましたよね。
アンジェロ そうそう。日本のアーティストの曲のカバーをやったよ。クレイジーキャッツ、トニー谷、井上陽水の曲だ。そうした曲のカバーがきっかけで、『Ska Du' Au' Ska don't』のCDを作ることができた。それから、そのCDをベースにした本も作ってる。つまり、それだけ日本への愛を表してるってことになるね。日本はとにかく最高だから。
―日本で一番好きなことは何ですか?
アンジェロ 日本の建設作業員向けの服屋に行くのが好きなんだ。めちゃくちゃイケてる服がいっぱいあるんだよ。それから、古着屋で買い物するのも好きだ。日本に行ったら、自分に合う服をできるだけ大量に買い込んで帰りたいんだ。それから、STOMPIN'RIFFRAFFSは日本で好きなバンドの一つだ。あのバンドのライブを観られたのも良かった。
―今年は、1stアルバム『In Your Face』の40周年ツアーをやっていますよね。
アンジェロ 『In Your Face』のアルバムを全曲演奏したんだ。最新アルバム『Stockholm Syndrome』からも何曲かやってる。これまでのカタログからも、いろんな曲を選んで、2セット目にちょこちょこ入れていくんだ。
―日本ツアーではどのようなセットリストを考えていますか?
アンジェロ まあ、みんなが好きな曲、みんなが知ってる曲をいくつかやるつもりだ。「Ma and Pa」「Everyday Sunshine」「Skankin' to the Beat」「Sunless Saturday」とか。それから、フィッシュボーンのちょっとマニアックな曲もいくつか入れるつもりだ。そういうのも混ぜて、ちょっとレールから外れていけるようにしたくて。俺たちはレールから外れるのが好きだから(笑)。
―曲を選ぶのは大変ですか? それとも、自然に決まる感じですか?
アンジェロ 曲のリストがあって、バンドのみんなが覚えてる曲をそこに入れていく。その中から、これは絶対に客を盛り上げられるっていう曲を選んで、それをやるんだ。
―『In Your Face』について聞きたいのですが、40年前の当時、自分たちが何を目指していたのか、何を表現したかったのかは覚えていますか?
アンジェロ 当時はただ、次に作る曲が何曲かあって、それをまとめていった感じだったと思う。当時の俺たちはたぶん、「リスナーの顔面に飛び込んでいきたい」って考えてたんだ。俺たちの音楽が、まるでその人の顔をつかんで引き寄せるみたいに、直接届いてほしかったんだよ。
―文字通り、『In Your Face』だったわけですね。
アンジェロ 音楽で人の顔面をつかみたかったんだよ。あとね、今回、『Cover Your Face』っていうのもあるんだ。
―『In Your Face』の40周年記念リイシュー盤で2枚目のディスクになった、様々なアーティストが楽曲を再解釈したトリビュート作品ですね。オペレーション・アイヴィーのティム・アームストロングとジェシー・マイケルズによるバンド、Doom Regulatorが参加しているのも熱いですね。
アンジェロ あれはカッコいいよね。正直、『In Your Face』から曲を選んで、自分たちなりに再解釈しようって参加してくれたアーティストの中には、俺が全然知らなかった人もたくさんいたんだ。でも、やってくれたのが、本当にうれしくてね。しかもたまたま、アンダーグラウンドのアーティストが多かった。彼らがフィッシュボーンについて感じてることを表現して、俺たちの曲を自分たちなりに表現してくれたんだ。どの再解釈もスゴく良かったと思うよ。面白い企画になったし、何だかフィッシュボーンのカラオケみたいなんだ。前回のツアーでさ、『In Your Face』の曲を演奏したんだけど、VIP向けの企画もあって、そこではフィッシュボーンのカラオケもやったんだ。バンドがインストゥルメンタルを演奏して、VIPの参加者が自分の好きな曲を歌うんだ。だから俺にとっては、日本のカラオケの司会者になりきる絶好の機会になった(笑)。
―それ、最高ですね。
アンジェロ 毎晩、それでめちゃくちゃ楽しんでたよ。「ムーチャス・グラシアス&サヨナラ」だ! あれ、待てよ。これってラテン系じゃないか? まあいいや。ちょっとアジアン・ラティーノをみんなにお見舞いしてやるから(笑)。
―それ、曲のタイトルになりそうですね。
アンジェロ 次のシングルになるな。
ジャンルの境界線を越える、音楽的ルーツと信念
―音楽的なバックグラウンドについても聞かせてください。もちろん多様な音楽を聴いて育ったからこそ、ジャンルの境界線を越えたフィッシュボーンの音楽が生まれたと思いますが、子供の頃に一番好きだった音楽は何でした?
アンジェロ 俺はディズニーの『ジャングル・ブック』の音楽をよく聴いてた。それから『ルーニー・テューンズ』も大好きだった。ワーナー・ブラザースの作品に出てくる音楽をたくさん聴いてたんだ。バッグス・バニーとか、ああいうのが大好きで。あの音楽って本当にスゴくてさ、ものすごく分厚いアンサンブルなんだ。クラシックやジャズも入ってるし、とにかく音楽の世界が果てしなかった。カール・スターリングやレイモンド・スコットの音楽もたくさんあった。それに加えて、両親が聴いてた音楽もあった。ジェームス・ブラウン、スライ・ストーン、アース・ウィンド&ファイア、マクファデン&ホワイトヘッド、ボビー・”ブルー”・ブランド、ジョニー・キャッシュ、リチャード・プライヤー、ドールマイト、ワイノニー・ハリス、デューク・エリントン……。親父は人生のある時期に、デューク・エリントンと一緒にサックスを吹いてたんだ。だから家ではジャズをたくさん聴いて育った。俺は親父の影響でサックスを始めたんだよ。
―音楽をやる前はダンサーをやっていましたよね?
アンジェロ そうそう。ストリートダンスをめちゃくちゃやってた。それである時、「俺は操り人形になりたいのか、それとも操り人形師になりたいのか?」って考えたんだ。操り人形師っていうのは、つまりはミュージシャンだ。だって基本的に、ダンサーは自分一人でも踊れるじゃない? でも、ダンサーを本当に踊らせるのは音楽なんだ。音楽がダンサーをコントロールするわけだ。それで思ったんだ。「両方を同じくらい頑張ってやろうとしてるけど、どちらか一つに絞った方が、もっと上手くできるんじゃないか」って。だから俺は音楽の方に進んで、そこにもっと力を注ぐことにした。ダンスは今でも続けてるけど、音楽ほど突き詰めることはなかったな。
―面白いですね。でも、音楽をやるにあたって、歌とサックスを選んだのは何故ですか?
アンジェロ 歌は、元々ずっと好きだったんだ。いつも耳にしてたジャズ、ゴスペル、ソウル・ミュージックが大好きで、そういう音楽をたくさん聴いて育ったんだ。それから後になって、ロックが入ってきた。高校を卒業してからは、パンクロック、スカ、レゲエをいろいろ知るようになった。そういう音楽との出会いで、自分の音楽的なボキャブラリーが一気に広がったんだ。それで、LAにあったクラブ、King King。君も当時、King Kingにいたよね? あの当時のあの空気をわかると思うけど、Jump With Joeyのジョーイ・アルトゥーダがあそこにはいた。あいつらは最高だったし、あれは本当に最高の日々だった。最高の音楽があったんだ。俺のバンド、The Travelling Dingleberriesもあそこで演奏してた。あそこには本当にいいシーンがあったけど、後にカーペット屋になってしまったんだ。
―当時のLAって、ジャンル間の境界線がはっきりしていましたよね。フィッシュボーンはその境界線をどうやって越えたのですか? しかも、初めてクラブでライブをしたのはLAのチャイナタウンにあったMadame Wong'sですよね。パンクロックのシーンのど真ん中にあったクラブじゃないですか。
アンジェロ 本当、パンクロックのシーンだった。でもね、少なくとも俺からすると、俺たちはそこへ行って、自分たちの音楽を演奏するしかなかったんだ。それに、誰がどう思うかなんて気にしてなかった。というのも、誰かにどう思われるかを気にし始めた瞬間、やめる理由、あるいはやらない理由ができてしまうからだ。だから、とにかくやるしかないわけだ。人が聴いてようが、聴いてなかろうが、関係ない。どんな状況でも、クソ、もうとにかくやるしかないんだ。自分の音楽を受け入れてもらえるかどうかなんて、気にしちゃいけない。ただ、自分の音楽をやるしかない。そして、自分の音楽を信じなきゃいけない。たとえ一人で、クローゼットの中で、真っ暗なところでやってたとしてもね。5人の前でも、500人の前でも、5000人の前でも同じだ。レコード会社がどう思うかも、気にしちゃいけない。自分がどんなジャンルなのか、どのジャンルをやるべきなのか、そんなことも気にしちゃいけない。そんなことを気にしてたら、自分自身を疑い始めることになる。そしたら、そのうち自分が思いついた最高のアイデアをやらなくなってしまうんだ。

―確かにその通りですね。そこからフィッシュボーンは、ビースティ・ボーイズやレッド・ホット・チリ・ペッパーズ、マーフィーズ・ロウとも共演するようになったし、91年の最初のロラパルーザ・ツアーにも出演しましたよね。
アンジェロ ザ・トロージャンズとも共演したよ。あと、ギャズ・メイオールも。
―そういう共演が実現したというのは、音楽シーンの中で、同じような考え方を持った人たちが集まったからですか?
アンジェロ そうだね。俺たちは結局、同じような考えを持った人たちと一緒にやるようになった。自分の音楽が好きで、しかもいろんな種類の音楽が好きな人たちだ。幅広い音楽性を持ってた方がいいと思ってる人たちだ。だから、俺たちはいつもそういう人たちに引き寄せられたし、向こうも俺たちのところに寄ってきた。
―ディアンジェロにしても、フィッシュボーンの「Black Flowers」をカバーしていましたよね。
アンジェロ あいつは確かに「Black Flowers」をカバーした。それに、俺をステージに上げて、一緒に歌わせてくれたんだ。ディアンジェロとは短い時間だったけど、その時は意気投合したよ。でも、それ以降は会うことはなかった。彼の魂に神の祝福を。今はきっといい場所にいると思う。俺は今でもディアンジェロを聴いてる。俺が聴くいろんなクレイジーな音楽の中でも、ディアンジェロは特によく聴くアーティストなんだ。
リアルな音楽を届けること、創作を止めないこと
―多様な音楽を好きで聴いている中、エレクトロニック・ミュージックにはあまり興味はなかったのですか?
アンジェロ そうだね、俺たちはアコースティックの方が好きだから。
―やっぱり、リアルな人間が演奏する、リアルな音楽ですか?
アンジェロ 間違いないね。ちょうどさっきもそういう話をしてたんだ。リアルな人間によるリアルな音楽……。AIじゃなくて、人間が作る、本物の音楽だ。だから俺はいつも、アーティストのフィジカル作品を買うように勧めてる。LPを買ってくれ、CDを買ってくれって。フラッシュドライブやUSBメモリを買ってもいい。作品集や本みたいなものも買ってほしい。だって気をつけないと、AIによって、音楽業界の中に本物のアーティストの居場所がなくなってしまうかもしれないんだ。AIがすべての音楽を作るようになってしまったら、どうする? 目的地に着くまでの荷物を、ロボットに盗まれたくはないだろ? 言ってることがわかる? だから俺はいつも、サブスクで音楽を聴いて楽しむのはいいけど、ああいうプラットフォームは、アーティストが一生懸命やった仕事に対して、ほとんど金を払ってないってことを忘れちゃいけないって言ってるんだ。だから、ちゃんとTシャツを買ってくれって言ってる。コーヒーカップも買ってくれ。ステッカーも買ってくれ。そういうことなんだよ。
―昨年リリースされた最新アルバム『Stockholm Syndrome』は、前作から19年ぶりになりますが……。
アンジェロ いや、そんなわけはないだろ。何でみんな、そんなことばっかり言うんだ? 19年も空いてないよ。みんな『Still Stuck in Your Throat』が19年前だったからって、そう言ってるんだろ。でも、『Still Stuck in Your Throat』以降、フィッシュボーンの音楽はもっとたくさん出てる。
―アルバムの話ですから。EPは含めていないので。
アンジェロ そうだね。俺が言ってるのはEPのことだ。シングルもある。ビデオもある。そういうもの全部の話だ。「19年間アルバムを作ってない」なんて言われたら、「何言ってんだよ?」ってなるよ。ずっと音楽をやってきたんだから。ずっと音楽を作り続けて、それを世の中に届けてきたんだ。それに俺は、あれはめちゃくちゃカッコ良かったと思ってる。今でもカッコいいと思ってるよ。誰がバンドにいたかとか、関係なくてね。俺たちはたくさん音楽を作ってきたし、ソロ・プロジェクトもたくさんやってきた。俺はDr. MadVibe and the Missin Linksというバンドもやってる。それから、俺にはBrand New Stepもあって、YouTubeにたくさんの映像やコンテンツがある。ウェブサイトもあって、drmadvibe.comからもアクセスできる。新しいウェブサイトには、いろんなものが詰まってるんだよ。アート・プロジェクトも見られるし、新しいリリースもチェックできる。ミッキーマウスのボタンがあちこちにあって、隠しネタもいろいろ仕込んである。押してみると、いろんな隠された”お宝”や、珍しい映像を見ることができるんだ。俺のウェブサイトは……何ていうか、もう遊園地みたいになってるよ(笑)。
―本当にいろんなことをやっているし、創作を続ける姿勢は変わりませんね。
アンジェロ いろんなことやってるよ。だって、クリエイティビティが流れ続けてくる限り、せっかくだから世に出した方がいいだろ。だから、クリエイティビティが止まることはないんだ。神に感謝だよ。ありがたいことに、止まったことは一度もない。今でもいろんなアイデアが出てくることに感謝してるよ。音楽やコンセプトやアートについて、いろんなことを考えられるんだ。それを世に出すことで、誰かが音楽やアートを作るきっかけになればいい。それを通じて、その人が自由になったり、何かを学んだりできればいい。

Fishbone JAPAN TOUR 2026
9月14日(月)大阪・GORILLA HALL OSAKA
9月15日(火)愛知・名古屋DIAMOND HALL
9月16日(水)東京・EX THEATER ROPPONGI
全公演とも開場18:00/開演19:00
サポートアクト:MAYSONs PARTY(全公演)
料金:大阪・愛知 オールスタンディング8,000円/東京 スタンディング・指定席 各8,00
0円(税込・別途ドリンク代)
問い合わせ:大阪 キョードーインフォメーション 0570-200-888/愛知 キョードー東海 052-972-7466/東京 クリエイティブマン 03-3499-6669
