「投資を始めたほうがいい」と聞くことはあっても、「今は投資をしないほうがいい人」がいることは、意外と知られていません。
生活資金に余裕がない、損失を受け入れられない、仕組みをよく理解しないまま始めようとしている――。こうした状態で投資を始めると、資産を増やすどころか、家計を圧迫してしまう可能性があります。
本記事では、投資をしないほうがいい人の特徴や、投資で失敗する人の傾向、失敗を防ぐために意識したいポイントをわかりやすく解説します。
投資をしないほうがいい人の特徴
投資は、将来に向けて資産を形成・運用する手段の一つです。一方で、金融商品・投資方法によっては元本割れするリスクももちろんあります。準備が整っていない状態で始めると、値動きに不安を感じ、冷静な判断ができなくなることもあるでしょう。
大切なのは、投資を始めることそのものではなく、「今の自分は投資にお金を回しても大丈夫な状態か」を見極めることです。
生活費に余裕がない人
投資は、近いうちにつかう予定のない余裕資金で行うことが基本です。生活費まで投資に回してしまうと、病気や事故などで急な出費が発生した際に、必要なお金を用意できなくなる恐れがあります。
まずは収入と支出のバランスを見直し、生活に必要なお金を確保することを優先しましょう。投資に回す資金は、日々の暮らしに影響しない範囲で考えることが大切です。
損失を受け入れられない人
株式や投資信託などは、市場の状況によって価格が変動します。購入したときより価格が下がり、一時的に含み損を抱えることも珍しくありません。
少しの値下がりでも強い不安を感じる人や、「絶対に損をしたくない」と損失を受け入れられない人は、価格変動そのものが大きなストレスになります。損失を取り返そうと焦って売買を繰り返すなど、かえって判断を誤ることもあるでしょう。
投資では利益だけでなく、損失が生じる可能性も含めて考える必要があります。値下がりしたときにどの程度までなら受け入れられるのか、あらかじめ考えておくことも大切です。
借金をしている人
借金がある人は、投資よりも返済を優先したほうがいいケースが多いです。 「投資で利益を出して返済しよう」と考える人もいますが、思うような運用成果が出るとは限りません。まずは借金を減らし、家計を安定させることが先決です。返済を終え、家計を安定させてから資産運用を検討するほうが、投資を長く続けられるでしょう。
仕組みを知らないまま始める人
「周りが始めたから」「SNSでおすすめされていたから」といった理由だけで、よく分からない金融商品を購入するのはおすすめできません。
株式、投資信託、債券などは、それぞれ仕組みやリスクが異なります。制度や商品の特徴を理解しないまま利用すると、相場が動いたときに「こんなはずではなかった」とショックを受けることもあるでしょう。
公的機関など信頼できる情報源も活用し、分からないものには安易に手を出さないことが大切です。
目先の利益に一喜一憂してしまう人
投資では、購入した商品が短期間で値上がりすることもあれば、反対に値下がりすることもあります。日々の値動きが気になり、少し上がっただけで「もっと買えばよかった」と焦ったり、下がると「早く売らなければ」と不安になったりする人は、感情に任せて売買してしまう可能性があります。
特に長期的な資産形成を目的とする場合、短期的な値動きだけを見て判断すると、投資方針がぶれやすくなります。「上がったから買う」「下がったから売る」といった行動を繰り返さないためにも、あらかじめ投資する目的や期間を決めておくことが大切です。
投資で失敗しやすい人の特徴
投資の結果は、知識や金融商品の選び方だけで決まるものではありません。相場が動いたときにどう判断するか、どのようなルールで運用するかといった日々の行動も、投資の成否を左右します。ここでは、投資で失敗につながりやすい行動の特徴を紹介します。
感情で売買してしまう
価格が急落すると「これ以上損をしたくない」と慌てて売却し、反対に値上がりすると「今買わなければ乗り遅れる」と焦って購入してしまいがち。
こうした感情に任せた売買を繰り返していると、当初の投資方針から外れてしまいます。相場が大きく動いたときこそ、目の前の値動きだけで判断せず、投資の目的や運用期間を振り返ることが大切です。
一攫千金を狙ってしまう
「短期間で大きく増やしたい」と考えると、高いリターンを期待できる金融商品や投資手法に目が向きやすくなります。ただし、一般に高いリターンを狙う場合は、その分大きな価格変動などのリスクも引き受ける必要があります。高い利益だけに注目し、リスクを十分に確認しないまま投資するのは避けたほうがいいでしょう。
資産形成を目的とするなら、一度の取引で大きな利益を狙うのではなく、自分がどの程度の損失まで受け入れられるのかを考え、その範囲内で運用することが大切です。
情報をうのみにする
SNSや動画サイトなどでは、投資に関するさまざまな情報が発信されています。「この銘柄が上がる」「今買うべき」といった情報を見て、十分に調べないまま投資を始めるのは避けたほうがいいでしょう。
情報を見るときは、発信者がどのような立場なのか、どのような根拠に基づいているのかを確認することが大切です。一つの情報だけで判断せず、複数の情報源を比較したうえで、自分でも商品の仕組みやリスクを確認しましょう。
自分の投資ルールを決めていない
投資を続けるうえでは、「いくら投資するか」「どのくらいの期間運用するか」など、あらかじめ自分なりの基準を決めておくことも重要です。
基準がないまま投資をすると、相場が上がったときには購入を急ぎ、下がったときには慌てて売却するなど、その場の感情に左右されやすくなります。積立額や運用期間、どの程度の値下がりまで受け入れられるかなどを事前に考えておけば、相場が大きく動いたときにも判断しやすくなるでしょう。
安心して投資を始めるための準備
投資は、思い立ったらすぐに始めるのではなく、生活や家計の状況を確認してから取り組むことが大切です。ここでは、投資を始める前に確認しておきたいポイントを紹介します。
生活防衛資金を準備する
まず確保しておきたいのが、病気や失業、急な出費などに備える生活防衛資金です。一般的には、生活費の3~6か月分程度が一つの目安とされます。ただし、必要な金額は収入の安定性や家族構成などによっても異なります。
生活に必要なお金まで投資に回してしまうと、急な出費が発生した際に、相場が下落していても資産を売却しなければならなくなる可能性があります。投資を長く続けるためにも、まずは「生活を守るためのお金」と「将来に向けて運用するお金」を分けて考えましょう。
投資の目的を決める
「何のために資産を増やしたいのか」という目的を明確にすることも大切です。老後資金を準備したいのか、教育資金を用意したいのか、将来のために資産形成をしたいのかによって、必要な金額や運用期間は変わります。
目的が決まっていれば、相場が下落したときにも目先の値動きだけで判断はしないはず。目標額や運用期間などをできる範囲で具体化し、自分にとって無理のない投資方法を考えましょう。
基礎知識を身につける
投資を始める前に、金融商品の特徴やリスクについて基本的な知識を身につけておきましょう。まずは、株式と投資信託の違いや価格が変動する仕組み、「長期・積立・分散」といった資産形成の基本的な考え方を知っておくことが大切です。
NISAを利用する場合も、制度の内容だけでなく、実際に購入する金融商品の特徴やリスクを確認しておきましょう。分からないことをそのままにせず、自分が理解できる範囲から少しずつ知識を増やしていくことが、無理のない投資につながります。
投資しないことのリスクも知る
投資には元本割れのリスクがありますが、一方で、現金や預貯金だけで資産を保有することにも考えておきたい点があります。物価が上昇すると、預貯金の額面が変わらなくても、そのお金で購入できるものが減り、実質的な価値が目減りする可能性があります。
だからといって、誰もが投資をする必要があるわけではありません。大切なのは、投資のリスクだけでなく、投資をしない場合にどのような影響が考えられるのかも理解したうえで、自分の家計や将来設計に合った方法を選ぶことです。
投資で失敗を防ぐために意識したいこと
ここからは、初心者でも取り入れやすい投資の基本を紹介します。大切なのは、無理なく続けられる環境をつくり、自分なりの投資方針を持つことです。
少額から始める
投資を始めるときは、いきなり大きな金額を投じるのではなく、まずは無理のない範囲から始めましょう。少額であれば、実際に資産価格が変動する様子を見ながら、自分がどの程度の値動きまで受け入れられるのかを確認できます。
株式投資というと、通常は100株単位での取引が基本ですが、現在は1株単位など、通常より少ない株数から購入できるサービスもあります。まとまった資金を用意するのが難しい場合でも、こうした仕組みを利用すれば、少額から株式投資を始めることが可能です。
投資に関する知識は、実際の運用を通して身につく部分もあります。まずは生活に影響しない金額から始め、投資に慣れてきたら運用方法を見直すのも一つの方法です。
分散投資を心掛ける
投資先を一つに集中させず、複数の資産や地域、業種などに分ける「分散投資」も基本的な考え方の一つです。
特定の企業や金融商品に資産を集中させると、その投資先の価格が大きく下落した際に、資産全体への影響も大きくなります。もちろん、分散投資をしていても投資した資産の価格が下落する可能性はありますが、分散させることで特定の投資先の値動きによる影響は抑えられるでしょう。
利益だけでなく、損失が出るケースも念頭に置いて投資をすることが大切です。
長期・積立をつづける
投資では、短期間の値動きを追いかけるよりも、長い時間をかけて資産を育てる考え方が一般的です。毎月一定額を積み立てることで購入時期が分散されて、購入価格が平均化されやすくなります。
ただし、長期・積立であれば必ず利益が得られるわけではありません。投資には価格が下落するリスクがあることを理解したうえで、無理のない金額で継続することが大切です。
制度を上手に活用する
資産形成を考える際は、税制上の優遇を受けられる制度について知っておくことも大切です。
たとえば、NISAは投資による資産形成を支援する税制優遇制度です。NISA口座で対象となる金融商品に投資すると、一定の範囲内で得られた利益が非課税になります。一方、iDeCoは老後の資産形成を目的とした私的年金制度で、掛金の所得控除や運用益が非課税になるなど、税制上のメリットがあります。
それぞれ利用できる条件や仕組み、資金を引き出せる時期などが異なるため、自分の目的やライフプランに合った制度を選びましょう。
大切なのは自分に合った投資判断をすること
投資をするのか、今は見送るのか。その答えは、収入や資産、ライフプランなどによって異なります。大切なのは、周囲が投資をしているからといって焦って始めたり、反対に「投資は怖い」と必要以上に遠ざけたりせず、自分の状況を踏まえて判断することです。
一度決めた投資方針を、ずっと変えてはいけないわけでもありません。結婚や子育て、転職、定年など、ライフステージが変われば、必要な資金やお金の使い方も変化します。そのときの家計や将来の予定に合わせて、投資額や運用方法を見直すことも大切です。
投資には、資産を増やせる可能性がある一方で、元本割れするリスクもあります。メリットとリスクの両方を理解し、自分にとって無理のない方法を選ぶことが、長く資産形成を続けるための第一歩となるでしょう。




