アモルフィスが鳴らす“フィンランドの哀愁” エサ・ホロパイネンが語る『Borderland』とライブの現在地


フィンランドを代表するメタルバンド、アモルフィスが新作『Borderland』を携えて来日する。ヘヴィネスと叙情的なメロディ、そして独特の哀愁を武器に、30年以上にわたって進化を続けてきた彼ら。ギタリストのエサ・ホロパイネンに、新作の手応え、ライブで変化する楽曲、15作に及ぶカタログから組み上げるセットリスト、そして日本公演への思いを聞いた。

【画像】歴代最高のメタルアルバム100選

―まず、今回の日本ツアーが決まったときの率直な気持ちを聞かせてください。これまでの来日公演を振り返って、日本の観客や会場について特に印象に残っていることはありますか。

ツアーが決まったときは、本当にうれしかったよ。日本は昔からアモルフィスにとって特別な場所なんだ。日本で演奏すると、ほかの国とは違う独特の感覚があるし、会場の熱気もはっきりと伝わってくる。ありがたいことに、僕たちはこれまで何度も日本を訪れてきたけど、今でも鮮明に覚えているライブがいくつもある。なかでも一番印象に残っているのは、会場を包むあの雰囲気かな。これだけ長く活動してきても、日本に戻ることは今でも特別に感じる。単なるツアーの一公演という感覚ではないんだ。

―あなたが観客として初めて観たライブは、どのアーティストの公演でしたか。そのステージについて今も覚えていることや、ミュージシャンを目指すきっかけになったことがあれば教えてください。

たしか1986年、ヘルシンキで観たアイアン・メイデンの『Somewhere in Time』に伴うツアーだったと思う。ミュージシャンが目の前で実際に演奏している姿を見るという体験が、とにかく強烈だった。僕にとっては、その場ですぐに大きな影響を受けるほどの出来事だったよ。

―アモルフィスとして初めてライブを行ったときのことは覚えていますか。当時はステージで何を表現しようとしていたのでしょう。また、現在とはどのような部分が変わりましたか。

もちろん覚えているよ。とはいえ、今僕たちがやっているライブとはまったく別世界だけどね。最初の頃は、自分たちで作った音楽を人前で演奏できるという、その興奮だけで突き動かされていたところが大きかった。アモルフィスとしての最初のライブは、たしかヘルシンキ周辺にある地元のユースクラブだったと思う。今との一番大きな違いは、ライブそのものをどう組み立てるか、そして観客とどうコミュニケーションを取るかを、僕たちがずっとよく理解するようになったことだと思う。

エサ・ホロパイネン(Photos by ANNE SWALLOW)

―30年以上にわたってライブを続けるなかで、ステージに立つときに大切にすることは変化しましたか。現在、毎回のライブで特に意識していることはありますか。

間違いなく変わったね。若い頃は、もっと自分自身の演奏に意識が向いていたと思う。パートを正しく弾くこと、ミスをしないこと、とにかく最後までライブをやり切ることに集中していた。今は、ステージ全体を見るようになった。バンドの音を聴き、観客の反応にも耳を傾けながら、その日のライブがどう展開しているのかを感じ取ろうとしている。もちろん、技術面や音楽面は今でも大切だよ。でも、これだけ長く演奏していると、一音一音を頭で考えながらステージに立ちたいとは思わなくなるんだ。

―アモルフィスの音楽には、ヘヴィさや攻撃性だけでなく、叙情的なメロディや静かな余白、壮大な空気感があります。ライブでは、そうした対照的な要素をどのように一つの流れとして届けていますか。

そうしたコントラストこそ、アモルフィスにとって重要な要素の一つだと思う。最初から最後までずっとヘヴィだったら、同じようなインパクトは生まれない。音楽にダイナミクスがあることで、全体に呼吸する余地が生まれるんだ。ライブを組み立てるときも、単に一番派手な曲を次々に並べるのではなく、全体の起伏を考えている。観客がひと息つける瞬間も必要だし、そのあとに、まったく違う感情で一気に引き込むような瞬間も必要なんだ。ヘヴィな曲のなかにも、たいていは聴き手が感情的につながれるメロディがある。それも、アモルフィスの音楽がライブでうまく機能する理由の一つだと思うよ。

―長いツアーでは、どうしても同じ曲を何度も演奏することになります。楽曲をルーティン化させず、その日の演奏として新鮮さを保つために意識していることはありますか。

観客は毎晩違うし、会場も違えば、空気も違う。そこにきちんと意識を向けていれば、同じ曲をまた演奏しているということは、それほど問題にならないんだ。もちろん、長いツアーを続けていれば、ある程度ルーティン化するのは避けられないけどね。僕自身、曲のなかに多少の自由を残すようにもしている。毎晩すべての音をまったく同じように弾きたいとは思わない。リード・ギタリストとして、その夜に曲をどう感じるかによって、フレージングやダイナミクス、ギター・パートを少し変えることもあるよ。

―今回の日本ツアーでは東京2公演と大阪公演が予定されています。15作のスタジオアルバムがあるなかで、『Borderland』、トミ・ヨーツセン加入以降の楽曲、そして初期の楽曲を、どのようなバランスで演奏しようと考えていますか。東京の2公演でセットリストを変える可能性もありますか。

15枚もアルバムがあると、むしろ問題なのは演奏したい曲が多すぎることなんだ。セットリストで全員を完全に満足させることなんてできないからね。もちろん、新作『Borderland』の曲はしっかり聴かせたい。でも、アモルフィスのライブに来る人たちが、バンドのさまざまな時代の曲を聴きたいと思っていることも理解している。トミ加入以降の楽曲は、現在のアモルフィスを形作ってきた非常に大きな部分だけど、それ以前のカタログも僕たちにとって今なおとても重要なんだ。東京では2公演あるから、セットリストにもいくつか変化をつけられたらいいね。

―新作の曲をライブで演奏し始めると、スタジオでは気づかなかった魅力や難しさが見えてくることがあります。『Borderland』のなかで、ライブで演奏することで印象が大きく変わった曲はありますか。

『Borderland』のなかには、ライブで演奏を重ねることで、僕たち自身のなかでも成長していった曲が確実にある。どのパートが観客と強くつながるのか、どの瞬間がライブでは違った力を持つのかが、だんだん見えてくるんだ。そういうことは、スタジオにいる段階では完全には予測できない。レコーディングしているときにはある印象だった曲が、ステージで演奏することでまったく違うキャラクターを持ち始めることもある。たとえば「Bones」は、最初からすごくヘヴィな曲だったけど、ライブでは素晴らしいオープニング曲に育った。それは制作していた時点では予想していなかったことだね。

―『Borderland』のリリース当時、このアルバムがアモルフィスの作品群のなかでどのような位置を占めるのかを理解するには、実際にツアーで演奏してみる必要があると話していました。時間が経った今、この作品をどのように捉えていますか。

レコードを完成させたばかりの頃は、まだ作品との距離が近すぎるんだ。あまりにも長い時間をその曲たちと過ごしているから、アルバム全体を客観的に見るのが難しい。ライブで演奏することで、そこから少し距離を取れるようになる。観客の反応も、とても励みになっているよ。みんながそれぞれ違った形でこのアルバムとつながってくれているように感じるし、それを見るのはいつも興味深い。僕にとって『Borderland』は、すごく自然に生まれたアモルフィスらしいアルバムだと思う。その一方で、この作品にしかない個性もある。今振り返ると、単なる「最新作」としてではなく、バンドの歴史のなかでどこに位置する作品なのかが、以前よりはっきり見えるようになったよ。

Photo by Sam Jamsen

―イェンス・ボグレンと3作を制作したあと、『Borderland』では初めてヤコブ・ハンセンをプロデューサーに迎えました。彼はアモルフィスのサウンドに、どのような新しい視点をもたらしましたか。

ヤコブは新鮮な視点を持ち込んでくれた。それこそ、僕たちが求めていたものだったんだ。コンソールの向こう側にいる人間が変われば、必然的に自分たちの音楽を見る角度も少し変わってくる。彼はさまざまなタイプのバンドやヘヴィ・ミュージックについてよく理解している一方で、サウンドの明瞭さや、アレンジを構成する一つひとつの要素にもすごく注意を払う人なんだ。そのおかげで、ヘヴィさを失うことなく、音楽の細かなディテールをより引き出すことができたと思う。バンドとヤコブの相性も良かった。彼はアモルフィスを別の何かに変えようとはしなかったんだ。僕たちの持っている個性を理解したうえで、必要な部分をいい方向へ押し広げてくれた。

―あなたは以前から、ギターはテクニックを見せるためではなく、楽曲に奉仕するためのものだと話しています。ライブでは、アルバムのギター・パートに忠実であることと、その瞬間の感情や観客のエネルギーに応じて演奏を変化させることを、どのように両立していますか。

僕にとっては、常に曲が最優先なんだ。ギターを、自分がどれだけたくさんの音を弾けるのか見せるためのものだとは考えていない。シンプルなメロディがその曲にとって一番ふさわしいのであれば、それを弾きたい。同時に、ライブがアルバムの完全なコピーであるべきだとも思っていない。そこには解釈の余地が必要なんだ。フレーズを少し変えて弾いたり、一つの音を長く伸ばしたり、違った感覚でソロに入ったりすることもある。大切なのは、その曲のアイデンティティを形作っている、絶対に変えてはいけない部分がどこなのかを理解すること。そこはきちんと尊重したい。でも、その周囲にはある程度の自由があっていいと思う。

―長年アモルフィスを追い続けてきたファンもいれば、今回初めてライブを観る人もいると思います。現在のアモルフィスについて、両者にどのようなことを感じてもらいたいですか。

長いあいだ僕たちを追ってくれている人には、何年も前に好きになってくれたのと同じバンドが、今もここにいると感じてもらえたらうれしい。でも同時に、僕たちが過去に生きようとしているわけではないこともわかってほしい。30年以上活動しているわけだから、バンドが変化してきたのは当然だよ。メンバーも変わったし、その過程でたくさんのことを学んできた。それでも、アモルフィスの核にあるものは今も変わっていない。ヘヴィな音楽、メロディ、空気感、そしてある種のフィンランド的な哀愁。その組み合わせだね。何より、会場を出るときに「特別なものを体験した」と感じてもらいたい。日本では、昔から観客とのあいだにそういう特別なつながりを感じてきた。だから、また日本へ戻れることを本当に楽しみにしているよ。

AMORPHIS

BORDERLAND JAPAN TOUR 2026

9月15日(火)東京・渋谷CLUB QUATTRO

9月16日(水)東京・渋谷CLUB QUATTRO

9月17日(木)大阪・梅田CLUB QUATTRO

全公演とも開場18:00/開演19:00

料金:オールスタンディング10,000円(税込・別途ドリンク代)

問い合わせ:東京 クリエイティブマン 03-3499-6669/大阪 梅田CLUB QUATTRO 06-6311-8111

https://www.creativeman.co.jp/event/amorphis26/