
オアシスの再結成ツアー『Oasis Live 25』を追ったライブ・ドキュメンタリー映画『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー』が、9月11日(金)より日本国内の劇場で2週間限定公開される。『ピーキー・ブラインダーズ』のクリエイター、スティーヴン・ナイトが脚本を手がけ、ウィル・ラブレースとディラン・サザンが監督した本作は、なぜオアシスがこれほど多くの人々にとって大切な存在なのか、その核心に迫っている。
※本記事には映画の内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい
ノエルとリアムの変わらない本質
2025年の再結成ツアーが巻き起こした、あの途方もない歓喜の渦を見るまでは、オアシスが残してきた影響の大きさを、つい当然のものとして受け止めてしまいがちだった。ノエルとリアム・ギャラガー率いる、労働者階級に根ざした生命力あふれるこのバンドは、永遠に生きること、自由であること、そして互いを信じることを歌った、壮大なアンセムを鳴らしてきた。最高傑作の多くが90年代半ばに生み出されたものだったとしても、彼らは本当の意味で重要な存在だった、最後の英国バンドと言ってもいいだろう。
『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー』で、監督のウィル・ラブレースとディラン・サザン、そして少々不思議なことに『クリエイター/脚本』とクレジットされているスティーヴン・ナイトは、歴史的な瞬間を捉えた、感情を揺さぶるコンサート・ドキュメンタリーを作り上げた。驚くような新事実が明かされるわけではない。だが、オアシスがなぜこれほど多くの人々にとって大きな意味を持つのかを、まさにそのまま映し出している。
まずはニュースのアーカイブ映像やファンが撮影した映像を使って、バンドの歴史が振り返られる。1994年、『Definitely Maybe』が英国史上最速のセールスを記録したデビュー・アルバムとなったことから、およそ15年後、パリ公演直前の衝突をきっかけとした解散まで。そしてそこから、再結成に向けたリハーサルの舞台裏へとカメラが入り込み、静かながら多くを物語る光景が映し出されていく。
6週間にわたるリハーサルでは、ノエルがバンドを緻密にまとめ上げ、自らの楽曲のアレンジを研ぎ澄ませていく姿が映る。一方のリアムは、吐き捨てるように放つ一語一語に、決して衰えることのないパンクなエネルギーを注ぎ込む。たとえこの映画が、誰もいない場所でバンドが2時間演奏するだけの作品だったとしても、それだけで素晴らしい映画になっていただろう。
オアシスが今も愛される理由
もちろん、本作の核となるのは、ヨーロッパ、北米、南米で行われたライブの模様だ。ツアー初日のカーディフでは、オープニングの「Hello」が熱狂的な歓声で迎えられ、ソウルでは「Bring It On Down」が会場を沸騰させる。そしてウェンブリーでの「Dont Look Back in Anger」は、後世まで語り継がれるような大合唱を巻き起こす。
2000年代初頭のニューヨーク・インディー・シーンを描いたドキュメンタリー『Meet Me in the Bathroom』を手がけたラブレースとサザンは、バンドと、涙を流し、踊り、歓声を上げるファンたちを、心からの愛情と細やかなまなざしで捉えている。各曲は短く切り取られているものの、ファンやノエル、リアムのインタビュー映像と巧みに結びつけられている。再結成後、兄弟が初めて揃って応じたインタビューには、いかにも彼ららしい爆笑ものの場面もある。一方で、ノエルが真剣な表情で、オアシスは右派のためのバンドではなく、すべての人のためのバンドなのだと熱く語る場面もある。
バンドのギタリストであり、ギャラガー兄弟以外で今回の再結成に参加している唯一のオリジナル・メンバー、ボーンヘッドにちなんで飼い犬を「ボーンヘッド」と名づけた女性の登場も、とりわけ楽しい。ノエル自身も、ボーンヘッド本人に敬意を表している。そしてサンパウロで演奏される「Live Forever」は、いつにも増して胸を打つ。リアムが、亡くなったストーン・ローゼズの伝説的ベーシスト、ゲイリー・”マニ”・マウンフィールドにこの曲を捧げるのだ。
サッカーとマンチェスター・シティを愛するバンドらしさを改めて感じさせるのが、「Cigarettes & Alcohol」でリアムが観客に、バンドへ背を向けて「ポズナン」をやれと要求する場面だ。「ポズナン」とは、ポーランドのクラブ、レフ・ポズナンのスタンドで生まれ、その後マンチェスター・シティをはじめとするクラブのサポーターによって広まった応援スタイルである。さらに可笑しいのが、ギャラガー兄弟が敬愛し、当時マンチェスター・シティを率いていたペップ・グアルディオラの等身大パネルが、毎晩ステージ上を飾っていることだ。
このドキュメンタリーは、コンサート映画という形式そのものを刷新しているわけではない。だが、本作を観終えたあとには、幸福で前向きな気持ちになり、もう一度肩で風を切って歩きたくなるような自信を取り戻すはずだ。それはまさに、オアシスの最高の曲を聴いたあとに覚える感覚と同じである。
From Rolling Stone US.
※本記事はRolling Stone UKにて初出

映画『オアシス:ドント・ルック・バック・イン・アンガー』
2026年9月11日(金)より2週間限定劇場公開
企画:スティーヴン・ナイト
監督:ディラン・サザン、ウィル・ラブレース
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン