「JA共済 presents学ぼう防災 親子で作ろう!ラジオ工作教室」が8月1日、三重県・津市のJAみえなか ふれあいセンターで開催された。大きな災害時、被災地での重要な情報源となるラジオを組み立て、親子で楽しく「防災」について学ぶ本イベント。JAみえなか管内在住の22組の親子らが参加した。

■災害時に信頼できる情報ライフライン「ラジオ」を手作り

近い将来、南海トラフ地震の発生による被害が懸念される三重県。今回の「ラジオ工作教室」はラジオに親しみ、楽しみながら防災意識を高めてもらうことを目的に、JA共済連三重とFM三重の共催によって開催された。

交通安全や食育など、さまざまな地域貢献活動を展開し、その一環として防災の活動にも取り組んでいるJA共済連三重だがFM三重とのラジオ工作イベントは今回が初めて。

今回のイベントの参加料は無料で、対象は小学1年生~6年生とその保護者。工作したラジオは持ち帰ることができる。

また、本イベントにはFM三重アナウンサー・清田のぞみさんと、津市出身のシンガーソングライターで防災士の資格を持つ“あつ”さんが出演。イベントを盛り上げた。 清田さんは2011年の東日本大震災でラジオというメディアが大きな注目を集めたことを踏まえ、その特徴や魅力を語った。

「先日も熊本県では最大震度7を観測した地震に見舞われましたが、東日本大震災の被災地の方々へのアンケートでは、“災害が発生してから1週間で最も役に立ったメディア”として1位に挙げられたのがラジオでした。

ラジオは基本的に24時間放送されていて、地域密着という点もラジオの特徴のひとつ。普段から聴いてくれている方々にとっては、いつでも慣れ親しんだ声を聴くことができるメディアです。災害時にいつもの声が聞けて気持ちが軽くなったといった声は、実際に被災された方々からもとても多いんです」

優れた双方向のコミュニケーションメディアでもあるラジオ。SNSでは誤情報が拡散するケースもある一方、ラジオは日頃から番組とリスナーとのつながりがあり、災害時にも地域の細かな情報を得やすい面があるという。

「ラジオは“音だけ”ということも大きな魅力なんです。視覚的にわかりやすい情報を得られるテレビなども重要なメディアですが、大きな災害ではショッキングな映像が繰り返し放送され、心が疲れてしまうということも多くあります。音だけということは言ってしまえば必要以上の情報を受け取らず、情報過多にならずに済むということ。東日本大震災の際は、情報を得るメディアをラジオへ切り替えた人が、実は全国的に多かったんです」

■被災地支援に従事した元消防士が語る地震への備え

そんな災害時にも役立つラジオの魅力が紹介されたところで、さっそく子どもたちは乾電池式の携帯ラジオを手作りすることに。基盤にラジオモジュールなどの電子部品を取り付け、ボリュームや周波数を調整するつまみやスピーカー、各種ケーブルやナット、ワッシャーを使い、ラジオを組み立てていった。

最後は筐体となる白い紙箱に絵を描いたり、FM三重のステッカーなどを貼ったり。自分だけのオリジナルのラジオを思い思いにつくり上げていく。

今回用いられた工作キットの対象年齢は小学校高学年。電気の流れる量を調整する抵抗(抵抗器)や、電気を蓄えるはたらきをするコンデンサといった小さな電子部品も多かったが、スタッフのサポートなども受けながら、40分ほどの作業で全員がラジオを完成させた。

その後はRe.Start社の山本将久氏による講演が実施された。山本氏は東日本大震災の被災地で伊賀市消防本部の消防士として救援活動に従事。職務を退いた現在は、20年以上にわたる現役の消防士としての経験などを活かし、福祉防災事業コンサルタントとして各地で防災に関する講演活動なども行っている。

「東日本大震災の現場でいろんな不幸を目の当たりにし、少し心を壊してしまいまして、11年ほど前に消防士を辞めました。その時は災害や人命に関わる仕事をすることは一生ないと思っていたんですが、自分の経験や生き方を振り返っていくなかで、福祉施設や企業向けの防災・運営支援事業の会社を立ち上げました」

山本氏が東日本大震災の発災直後に派遣されたのは宮城県・仙台市。楽天球場に程近い「つつじケ丘公園」(榴岡公園)を拠点に救援活動を行っていたそうで、写真などを使って子どもたちに当時の被災地の様子などを説明した。

「私が一番伝えたいことは、まず地震はいつでもどこでも起こるということ。そして、そのための準備の大切さです。よく忘れがちなのが、おじいちゃん・おばあちゃんなどの持病の薬ですね。僕も薬を飲んでいますが、お医者さんに少し多めに処方してもらっていて、常に新しい薬と入れ替えながら、2台の車の中にそれぞれ5日分、自宅にも5日分を用意しています」

被災地では電力や通信インフラの障害によって、テレビやスマホが使えないリスクも考えられる。

山本氏によると、実際に被災地で救援活動に従事した際にも、情報収集にラジオが非常に役立ったという。

「もちろん食料やモバイルバッテリーも大事ですし、僕はカセットガスボンベも備蓄しています。家族が離れた場所にいるとき、とくにお互いの居場所が詳しくわからないときに地震に遭うことも想定して、集合場所を日頃から話し合っておきましょう」

■防災食を試食、地元の新鮮野菜のプレゼントも

参加者の子どもたちにはポークチャップや彩りつみれの甘酢あんかけなど3種類の防災食が山本氏から提供され、本イベントでは防災食の試食も実施された。

試食を終えて熊本地震の犠牲者を偲び1分間の黙祷を捧げられた後は、シンガーソングライターの“あつ”さんが、三重県の風習や方言などを歌詞に盛り込んだ「三重県あるある音頭」をライブで披露。イベントを締め括った。

約2時間にわたって盛りだくさんの内容だったが、南海トラフ地震の被災地は広範囲に及び、三重県でも大きな被害が予想されており、本イベントは親子で防災についてより深く考えるきっかけとなったようだ。

「これまでスポーツイベントの協賛、食育関連の施策を行ってきましたが、あまり防災に重点を置いたイベントに三重県では取り組めていなかったことから防災をテーマに据えました」とは、JA共済連三重の德廣智也氏。

「工作キットの説明書とは別に、つまずきそうなポイントを写真付きで説明するファイルも本イベントのために用意しました。スタッフがラジオ工作をスムーズにサポートできるように、FM三重さんと実際に自分たちで工作をする時間を設けるなど、難しいポイントの検証や事前準備は念入りに行いましたね」

参加者には携帯トイレとアルミブランケットがセットになった「車載もできる防災キット」も配布。イベント後はナスやトマトなどJAみえなか管内産の新鮮な朝採れ野菜の詰め合わせも、お土産としてプレゼントされた。

「JA共済連三重では小学生をターゲットとしたイベントは比較的取り組めているんですが、中学生や高校生の世代に向けたイベントが、いま現状だとあまりできていないと感じているので、より上の世代を対象にしたイベントも充実させていきたいと思っています」

当日のイベントのもようは後日、FM三重でも放送されたという。