しずる、ライス、サルゴリラの実力派コント師3組に、作家の中村元樹を加えた7人組演劇チーム「メトロンズ」。同期ならではのあうんの呼吸と、芸人の枠を超えた演技力で、公演を重ねるごとに動員数を伸ばしている。
そんな彼らの第11回公演「金持ちに好かれなくちゃ!」が、2026年9月2日(水)から9月20日(日)まで上演される。今回のテーマは、誰もが抗いがたい魅力を感じる「お金」。なぜ、この普遍的でありながら生々しい題材を選んだのか。そして、結成から約6年、前身から数えれば10年という歳月を経て、彼らの舞台づくりはどのように進化しているのか。
脚本を担当するしずるの池田一真、ライスの田所仁、サルゴリラの児玉智洋の3人に話を聞いた。
見知らぬ人から100万円を渡される…!? お金の前で現れる人間の本性を描く
──現在、稽古の真っ最中とのことですが、みなさんのSNSを見ると、熱量の高い現場であることが伝わってきます。メトロンズとしての活動は皆さんにとって、どのような存在なのでしょうか。
田所:一言で言えば、本当に楽しい期間ですね。もちろん、稽古期間中はほかの仕事をセーブして、メトロンズの活動を優先するので、正直なところ生活が少し大変になる部分もあるんです(笑)。でも、それ以上に、この場所でしか味わえない刺激があります。
──第11回公演となる今回のタイトルは「金持ちに好かれなくちゃ!」。ストレートで、欲望に忠実な響きがありますが、このテーマはどのように生まれたのでしょうか。
池田:見に来てくれるお客さんと、何を一番共有できるかを考えたのがきっかけです。人間に共通していて、なおかつ生活から切り離せないもの……。そう考えると、やっぱり「お金」だなと。お金って、誰もが使っている共通の尺度なのに、その価値観や使い方は驚くほど人によって違いますよね。そこをテーマにすれば、お客さんも自分のこととして、ストーリーにグッと入り込めるんじゃないかと思ったんです。
──物語は「見知らぬお金持ちから100万円を渡される」というシーンから始まります。
池田:理由もなく100万円をくれる人がいたら、普通は怖いと思いますよね。でも、中には「ラッキー!」と手放しで喜ぶ人もいるかもしれません。総資産が何十億円もある人からすれば、100万円なんて誤差のようなものかもしれないし。そんなふうに、お金を目の前にしたときに、受け取る側の人間性があらわになる瞬間を描きたかったんです。
劇中には6人のキャラクターが登場しますが、全員、お金に対する考え方も使い方もバラバラです。その中の誰かしらには、きっと自分を重ねられる部分があると思います。
児玉:僕は自分が演じるキャラクターを見て、「ああ、実際にこうなりたいな」と思いました。でも現実には、村上(しずる・純)の役みたいに、「それは良くないよ」なんて格好をつけながら、実はおろおろしてお金を欲しがってしまうような、中途半端な自分もいたりして。見終わった後に、「笑ってたけど、実は私、あのキャラクターと一緒だ……」と、自分自身に突きつけられるような作品になるんじゃないでしょうか。
児玉の爆発的表現力は舞台のプロからも高評価
──今回は2公演ぶりに、ほかの俳優が参加しない“メトロンズのメンバーのみ”で構成される舞台とのことですが、制作体制に変化はありましたか。
池田:今の僕らが出せる最高傑作だという手応えがありますね。脚本を書く上でも、メンバーをイメージして書く「当て書き」はあえて避けているのですが、自然とそれぞれの個性が役になじんでいくのが、メトロンズの面白いところです。
──脚本制作の過程では、メンバー間でかなりストレートな意見交換が行われるそうですね。
池田:僕は言語化するのがあまり得意ではないのですが、田所はそこが的確なんですよ。読解力がすさまじくて、台本を一度読んだだけで「ここ、整合性が取れていないんじゃない?」とズバッと指摘してきます。図星すぎて、家に帰ってから「ああ、あいつの言ってたことは正しかったんだな」と反省することもしばしば。ただ、稽古場ではイライラして、つい怖い顔をしちゃいますけど(笑)。
児玉:池田のあの顔は本当に怖い(笑)。でも、池田は僕らの意見をすごく柔軟に取り入れてくれるんです。僕は田所みたいに論理的な指摘はできませんが、「ここでこのキャラクターが転んだら面白くない?」といった、感覚的なアイデアを出すようにしています。僕の意見はいわば、すり傷を治すようなもので、それに対して田所の意見は大手術になることが多いですね。
田所:児玉は、自分は読解力がないと言っていますが、実はメトロンズの核となる爆発力を持っているんですよ。稽古の最初はくすんでいるというか、「大丈夫か?」と思うほどひどいんですが(笑)、物語を自分の中に落とし込めるようになると、とんでもない笑いの爆撃を起こすんです。同期としては正直、悔しいくらいですよ。
あえてコントのような笑いは取りに行かない
──コントと演劇。似ているようで異なる2つのジャンルの間で、苦労することはありますか。
田所:これは最大の課題ですね。僕らは20年近くコントをやってきているので、どうしても「この言い方をすれば笑いが取れる」というポイントが反射的に分かります。でも、コント的な笑いを優先してしまうと、物語のリアリティが崩れてしまいます。
池田:物語を止めてまでボケたいという衝動、いわば「お笑いの発作」ですね。でも、80分、90分の演劇でそれを連発すると、見ている側は疲れてしまいます。メトロンズでは、あくまでその状況から生まれる「ニヤニヤしてしまうような面白い雰囲気」を大切にしています。今回、11回目にしてようやく、そのあたりの我慢というか、演劇ならではの笑いの作り方がメンバー全員に浸透してきた気がします。
──同期だけで構成されているからこそ、甘えが出るのではなく、むしろお互いに厳しく磨き合える環境があるのですね。
児玉:誰かが上に立つわけではなく、フラットな関係で意見を言い合えていますね。僕らが暴走しそうになったとき、同期でもある中村元樹が「それはやりすぎ」とブレーキをかけてくれます。この絶妙なバランスは、ほかの劇団やユニットにはない強みだと思っています。
家具を買うために預けた10万円でスロット台を購入!?
──今回のテーマは「お金」ですが、プライベートでは池田さんが一番の倹約家だと聞きました。
池田:家の電気はこまめに消しますし、手数料を払いたくないので、コンビニではお金を下ろしません。でも若い頃は、変な意地を張って、田所に僕のお金でスロットを打たせて、8万円も使ったことがあります。
田所:お金がなくなるたびに、池田が無言で1万円を渡してくるんです。あのときは本当に恐怖を感じましたよ(笑)。あとは、僕の実家がリサイクルショップをやっている縁で、池田から「10万円でいい感じの家具を買ってきてくれ」と頼まれたこともあります。なのに、僕が何を血迷ったのか、そのお金でスロットの実機を買ってきちゃって……。
池田:家具って頼んだのに、巨大なゴミ(笑)が届いたときは絶句しましたよ。でも最終的には、その台をスロットを愛してやまない先輩のLLR・福田恵悟さんが引き取ってくれて。10万円を預けるバカと、それでスロット台を買っちゃうバカ、そしてそれを引き取るバカ。……振り返れば、僕らの周りにはそんなバカげた話ばかりです。
児玉:そういうバカバカしい、でもどこか憎めない人間のあり方って、今回の舞台にも通じるところがありますね。劇中に出てくるキャラクターたちも、みんなそれぞれの「バカさ」を持っていて、それが愛おしくもあり、滑稽でもあります。僕らの実体験が作品のエッセンスとして染み込んでいるのかもしれません。
メトロンズを見ないと人生、損する
──どのような方に足を運んでほしいですか。
田所:はっきり言い切れます。今、お笑い界で最も熱い演劇チームは僕らメトロンズです。同期の絆、実力派コンビとしてのプライド、そして中村元樹という演出家――すべての条件がそろっているこのユニットは、唯一無二。見ないと人生、損をすると断言できます。
池田:YouTubeで過去の作品を無料公開しているので、まずはそれを見てみてください。実はお笑い初心者の方でも入りやすい、特殊で面白いことをやっている自負があります。映像で見て興味を持ったらぜひ、劇場に生の舞台を見に来てください。
児玉:生でしか味わえない空気、そして僕らが1か月間かけて磨き上げた爆発力を体感してほしいです。9月、劇場でお待ちしています!
公演情報
メトロンズ 第11回公演「金持ちに好かれなくちゃ!」
日程:2026年9月2日(水)~9月20日(日)
脚本:池田一真(しずる)
演出:中村元樹
出演:赤羽健壱(サルゴリラ)、池田一真(しずる)、児玉智洋(サルゴリラ)、関町知弘(ライス)、田所仁(ライス)、純(しずる)
会場:赤坂RED/THEATER
チケット情報
▼劇場での観劇
【料金】前売・当日共 6,000円|U-22 3,000円 ※FANYチケット前売りのみ
▼配信での観劇
【料金】3,000円
※販売期限:9月28日(月)12:00まで
※視聴期限:9月28日(月)23:59まで
詳細についてはFANYチケットをご確認ください。




