BINIが語る日本へのリスペクト、サマーソニックの舞台裏、フィリピンの誇りと8人のシスターフッド

フィリピン発の8人組ガールグループ、BINIがサマーソニック2026で初来日を果たした。同国の音楽史に残る快挙となったコーチェラ出演を経て、現在はワールドツアーの真っ只中。サンディエゴ公演を終えた直後に日本へ飛び、大阪・東京の2会場に出演後、すぐに北米ツアーへとんぼ返りするという過密スケジュールのなか、日本での初ステージが実現した。

ステージでは「Pantropiko」「Salamin, Salamin」など、BINIを世界へ押し上げてきた人気曲を次々に披露。とりわけ印象的だったのは、日本のオーディエンスに向けた入念な準備だ。一部の楽曲に日本語詞を取り入れたほか、メンバーそれぞれが日本語のMCを用意。「夜中の3時30分に目が覚めたときも、すぐに勉強を始めた」と振り返るほど、前夜から熱心に練習を重ねていたという。さらに衣装にはフィリピン文化のモチーフを取り入れ、日本の観客に歩み寄りつつ自分たちのルーツを打ち出した。その誠実な姿勢は、グローバルアクトとして着実に成長を遂げるBINIの現在地を象徴しているようだった。

序盤から華やかなダンスと8人それぞれのキャラクターで観客を引き込み、曲が進むにつれてフロアの熱気も上昇。前方に集ったBloom(ファンネーム)の歓声にも驚かされたが、初めて彼女たちを見る観客も次第に巻き込み、終演後のSNS上では歌やダンスの実力を称賛する声が相次いだ。かくいう筆者も、「Cherry On Top」「Zero Pressure」「Out Of My Head」と畳みかける冒頭の流れからノックアウトされ、あまりの素晴らしさに40分のステージが一瞬に感じられたほどだ。8人の鍛え抜かれたパフォーマンスはまさに「レベチ」。なぜBINIが世界規模で支持を広げているのか、その答えがステージに詰まっていた。

P-POPを象徴する存在として世界へ活躍の場を広げる今、彼女たちは自分たちのアイデンティティをどのように捉えているのか。東京公演を終えたばかりのメンバーに、会場内でインタビューを実施。初めて訪れた日本への思い、BINIらしいサウンドとフィリピン人としての誇り、同じくサマソニに出演したSB19へのリスペクト、そして8人を結ぶシスターフッドについて尋ねた。

◆You'll find English version after Japanese one. Here's the link.(英語版はこちら)

サマーソニック東京会場でのパフォーマンス映像

日本語で伝えたリスペクト

―コーチェラに続いて、今回のサマーソニックも、BINIとフィリピンの音楽史にとって歴史的なステージになったかと思います。どんな手応えを感じていますか?

Jhoanna:サマーソニックでのパフォーマンスは、私たちにとって本当に特別なものでした。日本に来ることをずっと楽しみにしていたんです。今回が初めての日本ですが、観客のみなさんのエネルギーを感じて、温かく迎えてもらっていると感じました。だから私たちも、そのエネルギーをそのまま返したいと思って。フィリピンと日本のBloomのみなさんに会えたことが嬉しかったです。応援してくださってありがとうございます。

Maloi:今回が私たちにとって初めての日本なんですが、本当に、ついにここまで来られたことが信じられないくらいです。サマーソニックに出演して、こうしてステージに立てることは本当にありがたいことですし、日本にいられることを心から嬉しく思っています。

Aiah:正直、初めて日本のステージに立つということで、プレッシャーも緊張もありました。でも同時に、みなさんからたくさんの温かさと愛を感じて、それが大きな支えになりました。これからも、何度でも日本でパフォーマンスできたら嬉しいです。

Mikha:それから、日本語のMCについてもかなり意識していました。一人ひとり、しっかり準備してきたので、みなさんが反応してくれるのを見られたのが嬉しかったですし、Bloomのみなさんに喜んでもらえたことも本当に嬉しかったです。

左からMaloi、Sheena、Gwen、Aiah、Stacey、Jhoanna、Mikha、Colet (©SUMMER SONIC All Copyrights Reserved.)

―今日のステージでは、日本語のMCもそうですし、日本向けのサプライズをいくつも用意してくれてたのが嬉しかったです。どんなところにこだわったのか教えてください。

Colet:今回のサマーソニックでは、日本のみなさんとのつながりと、私たち自身の文化をどう表現するかということを特に意識しました。日本の観客のみなさんを驚かせたくて、「Born to Win」と「Salamin, Salamin」の日本語バージョンを披露したんです。

それから、衣装のスタイリングにもかなりこだわりました。今回の衣装のコンセプトは、サリマノック(Sarimanok)。フィリピンのミンダナオ島に暮らすマラナオ族の文化に登場する、神話上の鳥です。日本のみなさんとのつながりを大切にしながらも、ステージ全体にしっかりとフィリピンらしさを込めたいと思いました。

©SUMMER SONIC All Copyrights Reserved.

―「Born to Win」の日本語バージョンについても、ぜひうかがいたいです。みなさんが世界的にブレイクするよりずっと前、同名のデビューアルバムを発表した2021年の時点ですでに日本語版がリリースされていました。これはどういう経緯で制作されたのでしょうか?

Gwen:マネジメント側には、最初からBINIをグローバルに展開していく構想がありました。だから、より多くの人たちに私たちの音楽を届けるために、さまざまな言語のバージョンを作ったんです。インドネシア語やスペイン語、タイ語のバージョンもあります。「Born to Win」は私たちのデビューシングルなので、歌うとすごく懐かしい気持ちになります。何年も経った今、ようやく日本で歌うことができて、デビュー当時の思い出がたくさん蘇ってきました。

Sheena:ワーイ!(手をパチパチ叩きながら)

Mikha:「Born to Win」は、まだいろいろなことを模索していた時期の曲です。当時は、「これがBINIのサウンドだ」と言えるような明確なスタイルもまだありませんでした。この曲には文字どおり、「私たちはステージに立つために生まれてきた」という思いが込められています。それを現実にしていくために、どんなことがあっても前に進み続け、世界へ挑戦して、フィリピンの音楽やフィリピンの人々をできる限り最高の形で代表していきたい。そのために、自分たちにできることは何でもやっていく。そんな決意を表した曲です。

「Born To Win - Japanese Version」サマーソニック大阪会場でのパフォーマンス映像

―「Salamin, Salamin」のサビで日本語詞を歌っていたのも、今回のハイライトだと思います。みなさんの代表曲ですよね。

Stacey:「Salamin, Salamin」は、私たちにとって特別な曲です。BINIらしさをよく表している曲のひとつだと思います。誰かに恋をして、「向こうも自分のことを好きなのかな?」って気になってしまう、そんな可愛らしい気持ちを歌っているんです。すごく楽しくてキャッチーな曲なので、ステージで歌っていると私自身もたくさんエネルギーをもらえます。日本語で歌うのはすごくワクワクしました。日本のBloomのみなさんにも、私たちと同じくらい楽しんでもらえていたら嬉しいです。(日本語で)鏡、鏡、鏡!

Sheena:「Salamin, Salamin」は、本当にBINIらしいサウンドの曲だと思います。恋することについて歌っていて……おとぎ話のような淡い恋心を描いた、すごくハッピーな気分になれる曲です。ミュージックビデオのファッションも90年代っぽくて、あのスタイルはBINIにとってひとつの定番になったように思います。デニムにたくさんのアクセサリーを合わせていて。それにコーチが手がけた振付も、フィリピンではすごくアイコニックなものになりました。つまり、私たちにとって大切な子供のような曲なんです。

BINI、驚くほど素晴らしくて40分のステージが一瞬に感じられた。夏の匂いがする楽曲はポジティブな輝きに満ちていて、8人の鍛え抜かれたパフォーマンスを見てると元気が出てくる。ハードスケジュールなのに日本のために色々と用意してきてくれたのも素敵。「Salamin, Salamin」はマジで名曲。#サマソニ https://t.co/TecC3fyFPp pic.twitter.com/C0aA4PuZCF — 小熊俊哉 (@kitikuma3) August 16, 2026

日本語で歌う「Salamin, Salamin」サマーソニック東京会場にて(筆者撮影)

「BINIらしいサウンド」とフィリピンの誇り

―今日のライブではほかにも人気曲が多く披露されました。これからBINIを知る日本のリスナーに「まずこの曲を聴いてほしい」という曲をいくつか選ぶなら?

Mikha:まずは「Pantropiko」です。2曲目が「Salamin, Salamin」、3曲目は……。

Colet:「Step Back」!

Mikha:4曲目が「Sugar Rush」。5曲目以降は、もう好きな曲を自由に選んでください(笑)。

「Pantropiko」は(2023年に)リリースした頃から、みんなが「あ、これがBINIのサウンドなんだ。ここから新しい何かが始まるんだ」と感じてくれたように思います。それに、すごくトロピカルな雰囲気の曲でもあります。フィリピンにはたくさんの島があって、美しいビーチや自然がありますよね。「Pantropiko」は、まさにそういう景色を思い浮かべさせる曲です。聴いていると、砂浜や木々、美しい自然に囲まれたビーチにいるような気分になれると思います。

―BINIは曲によってサウンドや雰囲気、使われる言語までさまざまですが、それでもみなさんが歌うと「これはBINIの曲だ」と感じられます。自分たちの音楽的なアイデンティティはどこにあると思いますか?

Sheena:BINIの音楽的なアイデンティティは、私たち一人ひとりが受けてきた音楽的な影響やインスピレーションから生まれていると思います。そこにフィリピンらしい要素を掛け合わせることで、BINIならではのものになるんです。

マネジメントも、どんなサウンドが私たちに合うのかを考えながら、音楽作りをサポートしてくれています。バブルガム・ポップ系の曲をきっかけに私たちを知ってくれた人が多いと思いますが、これからもいろいろなジャンルを探求していきたいです。

Maloi:それから、レコーディングではコーチたちも私たちの意見を尊重してくれるので、それぞれが自分のパートに自分なりのタッチや個性を加えることができます。そうやって一人ひとりの表現が加わることで、BINIのサウンドになっていくんだと思います。自分たちがやりたいことを表現できる自由がある。それが自分たち自身から生まれたものだからこそ、よりBINIらしい音楽になるんです。

―世界中のさまざまなステージに立つ機会が増えていますが、海外で活動するようになったからこそ、改めて気づいた「自分たちのフィリピンらしさ」はありますか?

Jhoanna:間違いなくあります。海外でパフォーマンスする機会が増えるほど、フィリピン人であることをより誇りに思うようになりました。それは、自分たちをどう表現するかという部分にも表れています。先ほども話したように、今回のサマーソニックで着た衣装は、サリマノックからインスピレーションを受けています。そうやって、自分たちなりの形でフィリピンの文化を世界のステージに持っていける。そして、それをきっかけに、みなさんがフィリピンについてもっと知りたいと思ってくれたら嬉しいです。

©SUMMER SONIC All Copyrights Reserved.

SB19への敬意、8人を結ぶシスターフッド

―先日、アメリカ滞在中にSB19とコラボ動画を撮影していましたよね。BINIとSB19は、それぞれ違った形でP-POPを世界へ広げてきた仲間だと思いますが、みなさんにとってSB19はどんな存在ですか?

Aiah:私たちはずっと、SB19のみんなを「kuya」(タガログ語で”お兄さん”の意)のような存在だと思っています。彼らがこれまで成し遂げてきたことを心から誇りに思っていますし、これからさらなる高みへ突き進んでいってほしい。彼らはフィリピン全体を代表している存在でもあるので。

同じフィリピン人が成功し、より多くの人たちに知られ、さらに大きなステージへ進んでいく姿を見られるのは、本当に嬉しいです。これからもずっと彼らのさらなる活躍を願っていますし、私たちも彼らを尊敬しています。すごく努力家で才能にもあふれているので、いつも大きな刺激をもらっています。

Stacey:あの動画は応援してくれているみなさんに、「私たちは仲がいいし、何も問題ないよ」って伝えるためのものでもあるんです。私たちは親友だし、家族のような関係です。このファミリーに争いなんてありません。

@bini_ph

―みなさんはこれまで、BINIの核にあるものとして「シスターフッド」を何度も挙げていますよね。長い時間を一緒に過ごし、さまざまな成功や困難を経験してきた今、8人にとって「シスターフッド」はどんな意味を持つ言葉になっていますか?

Colet:今の私にとって、シスターフッドとは「言葉にしなくても通じ合えるシナジー」だと思います。何年もの間、一緒に暮らして、成長して──もちろん今もまだ成長の途中ですけど、トレーニングやパフォーマンスを重ねてきたことで、今では言葉に頼らなくてもコミュニケーションできるような絆ができています。ちょっとした視線やニュアンス、空気感だけでお互いを理解できるんです。それだけで相手が何を考えているのかわかる。それが今の私たちにとってのシスターフッドだと思います。

―8人組という大所帯ですが、どうやってみんなでいい関係を保っているんですか?

Stacey:私たちは、とにかくよく食べます! みんな食べることが大好きなんです。今日もパフォーマンスのあとにラーメンを食べました。アイスクリームも(笑)。そうやって一緒に食べることが、私たちの絆につながっているんだと思います。それから、オフの日にはみんなで映画を観たりもします。

Gwen:最初からすぐに仲良くなれたわけではなくて、誤解が生まれることもありました。私たちはフィリピンのいろいろな地域から集まっていて、育ってきた環境もそれぞれ違うので。でも、一緒に過ごしていくなかで、少しずつお互いのことを理解できるようになりました。私たちは一緒に成長してきたんです。

Colet:同じ家で4年近く一緒に暮らしていたことも大きかったと思います。そのなかで、お互いに合わせたり、譲り合ったりすることを覚えていきました。

Jhoanna:私たちはもう7年間ずっと一緒にいます。この関係は、これからもずっと続いていくと思います。

日本へのメッセージ「恋しちゃいました」

―ラーメンの話が出ましたが、日本滞在中に何か楽しむ時間はありましたか? 「ディズニーシーに行ってみたい」と話しているのも見かけましたが。

Colet:そうなんです! ディズニーシーに行きたかったんですけど、今回は残念ながら時間がなくて。

Stacey:また日本に戻ってくる理由が増えたよね。

Maloi:5日間じゃ全然足りないので、また日本に来ようってみんなで話しています。

Jhoanna:実は今夜、全部終わったあとに渋谷のスクランブル交差点へ行って、動画や写真を撮りたいと思っています。

Mikha:昨日はみんなでヴィンテージ・ショッピングに行きました。

Maloi:それから、本場のラーメンも食べました。和牛、焼肉も。全部おいしかったです。日本はどこを見てもきれいで、どのアングルから見ても絵になると思います。

―BINIの曲を聴いていると、どこか日本の音楽にも通じるような情緒を感じます。みなさんは日本の音楽もお好きですか?

Sheena:はい。私は藤井 風をよく聴きます。一時期、本当に彼の曲ばかり聴いていたことがあって。特に「まつり」とか。

Mikha:アニソンからの影響も大きいと思います。『鬼滅の刃』や『君の名は。』とか。

Jhoanna:私はPSYCHIC FEVERが好き!

Maloi:私はLampと青葉市子が大好きです。

―最後に、日本のBloomへメッセージをお願いします。

Colet:日本のみなさん、そしてBloomのみなさん、私たちBINIの音楽やカルチャー、エネルギーを受け入れてくださって、本当にありがとうございます。私たちとみなさんとの旅は、まだ始まったばかりです。また近いうちに日本へ戻ってこられたらと思っています。

Aiah:こんなに温かく迎えてもらえて、本当に嬉しいです。グループ全員で日本に来るのは今回が初めてなので、私たちにとって特別な意味があります。これから日本のいろいろなステージでパフォーマンスできるのを楽しみにしています。

Stacey:日本のBloomのみなさん、本当にありがとうございます。これからもっと私たちの音楽を聴いて、もっとBINIを好きになってもらえたら嬉しいです。

Maloi:大好きだよ(日本語で)。いつも応援してくださってありがとうございます。これはまだ始まりにすぎないと思っています。これから何度も日本に戻ってこられると信じています。日本のことが大好きになりました。恋しちゃいました!

Mikha:最後に一言。待っていてください。私たち、また日本に戻ってきますから。

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