ケイティ・ペリー、「民衆のスター」が映画館で見せるキャリアの集大成──『The Lifetimes Tour』徹底解説

9月2日(水)と5日(土)、ケイティ・ペリーの最新ツアーを収めたコンサート映画『Katy Perry:The Lifetimes Tour - Live from Paris』が世界70カ国以上で公開される。日本でもTOHOシネマズ 日比谷をメイン劇場に、全国27都市・35劇場で上映。本作は「The Lifetimes Tour」パリ公演を60台ものカメラで撮影し、SF的な世界観と大掛かりな演出、ヒット曲の数々、ファンとの濃密な一体感まで、ステージの内外を自在に行き交う映像で鮮やかに描き出している。その見どころを、ライター・辰巳JUNKに解説してもらった。

※本記事には映画の内容に関する記述が含まれます。あらかじめご了承下さい

『Katy Perry:The Lifetimes Tour - Live from Paris』予告編

15年ぶりのコンサート映画

日本でも『マイケル』(2026年)が大ヒット中であるように、すっかり映画館の主役となっている音楽映画。その流れでいま熱くなっているのが、ライブの生体験を味わわせるかのような大迫力コンサートフィルムだ。

邦楽では『Mrs. GREEN APPLE // The White Lounge in CINEMA』(2024年)が興行収入17億円を達成して業界を驚かせたばかり。ブームの先駆けとなった『テイラー・スウィフト:THE ERAS TOUR』(2023年)に至っては2.6億ドル(約420億円)以上を達成し、さまざまな記録を塗り替えてみせた。ビヨンセのように、公開後に配信をしないことで劇場体験を徹底するケースもある。

じつは、現代コンサートムービーの潮流にいち早く傑作を残したアーティストこそ、ケイティ・ペリーだった。

高く評価された映画『ケイティ・ペリーのパート・オブ・ミー』(2012年)が追うのは、当時20代だった歌手が「普通の女子」からスターダムを駆け上がっていく姿。ポップアンセム満載の2ndアルバム『Teenage Dream』(2010年)の大成功を受けて、夢いっぱいに世界中を照らしていくツアーはまるでおとぎ話。対して、新婚だった私生活ではつらい現実が降りかかる。家庭に入るよりも多忙な音楽キャリアを選んだ結果、すれ違いが生じていき、最終的に離婚を言い渡されてしまう。

語り継がれる名場面は、ケイティがバックステージで泣き伏せる場面。しかし、舞台に上がった瞬間、笑顔をつくって失恋ソング「The One That Got Away」を歌う──「別の人生だったら、あなたをひきとめられたはず」。熱狂したファンは「愛してる」とチャントして歌姫を涙させる。これこそ、ケイティ・ペリーが本当の意味でスターになった瞬間だった。

それから約15年。NFLスーパーボウルから五輪主題歌、さらに今年のワールドカップの舞台まで経験したケイティは、40代の母親としてベテランの世界的スーパースターに成長した。運命の名曲「The One That Got Away」もリバイバルヒットを記録したばかり。急増したTikTok投稿のうち9割が米国外から発せられたグローバル現象だった。

映画館への帰還として、今ほど絶好のタイミングはないだろう。『The Lifetimes Tour』は、日本公演を含めて100万人を動員したメガツアーであり、なにより映画向きな公演だった。

キャリア最大級のステージで展開されるのは、歌手とダンサーが宙に舞って戦う『マトリックス』(1999年)ばりのSFオペラ。すでに公演を見た人でも、映画館ならではの映像と音響は別体験だ。舞台裏の映像も含めて、新たに気づける仕掛けも多い。

最新アルバム『143』(2024年)の世界観ともつながる物語の舞台は、AIに支配された未来。ケイティ演じる機械人間は、観客から力を借りて悪のAIを倒さなくてはいけない。

ヒット曲がSF世界で生まれ変わる

おなじみのヒット曲も世界観にあわせて変身している。たとえば、冒頭に披露される「Chained to the Rhythm」は、2016年の米大統領選挙のドナルド・トランプのサプライズ当選を背景に、リベラル派のケイティが「世界が実は違う姿だった」衝撃を歌った政治ソング。それが今回のステージでは、発光するディスプレイを乱舞させることでデジタル監視社会の危険性への警告のように演出されている。楽しいポップミュージカルでありながら、時代にあわせて社会の問題や不安に呼応させているのだ。

ノンストップな大ヒットメドレーの第二部に突入すると、ステージを牽引するケイティのMCスキルにも驚かされる。10代のように恋する高揚感を歌う名曲「Teenage Dream」では、観衆にも「自分のティーンエイジ・ドリームを讃えて」と説く。そして「41歳、最高の気分!」と叫び、いまを全力で楽しむ姿を体現。8歳から80歳にまで及ぶファン層が踊れる場づくりを謳っただけあり、エンパワーメントという意味でも「全年齢向け」のステージだ。

同性とのキスの初体験にわきあがるポップロック「I Kissed a Girl」では「愛に決まりなんてない」と宣言し、多様なセクシュアリティの肯定を呼びかけるのも忘れない。

演出の面でも、エンタメ好きや関係者必見の映画と言えるだろう。ゲームをモチーフにした観客参加型イベントとして、会場の熱やリアルタイム投票によってルートが分岐していく。ゆえに、歌手が舞台下に降りる幕間でも盛り上がりが途絶えることがない。

パリ公演の観客によって切り拓かれたボーナスステージでは、それまでのスペクタクルから一変、シンプルな演奏体制でケイティの歌声を味わえる。なかでも際立つのは「The One That Got Away」。前回の映画でも重要な場面を彩った歌が、特別なかけ合いへと花開く。つねにファンとつながることを大切にしてきたキャリアを象徴する瞬間だ。

「The One That Got Away」、『Katy Perry:The Lifetimes Tour - Live from Paris』より

「民衆のスター」の誇りと信念

バトルが最高潮に達する後半、注目したいポイントが「Part of Me」パートのスピーチ。物語のハイライトでありながら、ケイティ・ペリーの音楽性の真髄としても響く。ちなみに、このアンセムで歌われているのは、人間関係の危機にあっても「私の魂だけは誰にも奪えない」誇り。ケイティが人生をかけて守り続けてきた音楽への情熱とも重なる。

もちろん、代表曲「Firework」も披露される。ジョー・バイデン大統領就任式でも歌われ、近年の日本でもNTTのCMに起用されたこの曲が永遠のアンセムになったわけも、この映画を観ればよくわかる。落ち込むときがあっても自分の中の花火を輝かせて、と鼓舞するケイティは、ベテランのスーパースターになった今でも、普通の人々と同じ視点に立っている。だからこそ、ファンの側も歌詞を信じて一緒に歌うのだ。

コンサートが終わっても、席を立たないように。エンドロールでは、クルーを鼓舞するケイティが演説を行う。そこに込められた「完璧じゃない」エンターテインメント論にこそ「The Lifetimes Tour」のテーマ、そしてケイティ・ペリーの作家性が凝縮されている。

がむしゃらなまでに世界最高の舞台で戦ってきたケイティ・ペリーは、どんなときでも、普通の人々とともに走ってきた。そんな「民衆のスター」のキャリアの集大成となったツアーは、映画館を含めた観客が心の底から楽しんで参加することで完成する。その情熱をもって、AI時代にこそ輝く人間の力を打ち上げているのだ。

Photo: ©Cynthia Parkhurst

『Katy Perry:The Lifetimes Tour - Live from Paris』

上映日:2026年9月2日(水)、9月5日(土)

※一部劇場は上映日が異なる

日本公式ページ:https://www.culture-ville.jp/katyperry

監督:ポール・ダグデール

出演:ケイティ・ペリー

プロデューサー:ダニエル・E・カトゥーロ3世、サイモン・フィッシャー、スティーブ・モス、ロブ・レイン

制作プロダクション:10 Lives Studios、SiFi Productions、Silent House Productions

上映時間:132分(劇場公開用独占特別映像を含む)

ジャンル:音楽ライブ・シネマ

上映フォーマット:2D DCP

素材スペック:4K、5.1ch

配給:カルチャヴィル合同会社

鑑賞料金:2800円

※上映スクリーンや座席に特別な規格がある場合、追加料金が発生する場合あり

〈上映劇場〉

北海道:TOHOシネマズ すすきの

宮城:109シネマズ富谷

新潟:ユナイテッド・シネマ新潟

石川:ユナイテッド・シネマ金沢

東京:TOHOシネマズ 日比谷、109シネマズ二子玉川、イオンシネマ板橋、イオンシネマむさし村山、MOVIX亀有

神奈川:109シネマズ川崎、109シネマズ湘南、109シネマズ港北

千葉:TOHOシネマズ 流山おおたかの森、ユナイテッド・シネマ幕張

埼玉:ユナイテッド・シネマ ウニクス南古谷、MOVIX川口

栃木:MOVIX宇都宮

群馬:MOVIX伊勢崎

静岡:MOVIX清水

長野:長野グランドシネマズ

愛知:109シネマズ名古屋、イオンシネマ名古屋茶屋、ユナイテッド・シネマ豊橋18

大阪:TOHOシネマズ 梅田、TOHOシネマズ なんば

京都:TOHOシネマズ 二条

兵庫:塚口サンサン劇場

鳥取:MOVIX日吉津

広島:109シネマズ広島

岡山:TOHOシネマズ 岡南

山口:MOVIX周南

福岡:TOHOシネマズ 天神、TOHOシネマズ ららぽーと福岡

熊本:TOHOシネマズ 熊本サクラマチ

※TOHOシネマズ 日比谷、TOHOシネマズ なんばは9月2日(水)〜9月10日(木)上映

※塚口サンサン劇場は9月4日(金)〜9月10日(木)上映

※109シネマズ広島は9月4日(金)、7日(月)〜10日(木)上映(土・日曜休映)

〈109シネマズプレミアム新宿〉

上映期間:2026年9月25日(金)〜1週間

鑑賞料金:

A席 5400円

S席 7400円

※会員料金適用外

全席プレミアムシート。全シアターに坂本龍一監修の音響システム「SAION-SR EDITION-」を導入

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