取材をして大きく変わった認識の一つが、花火師の“1年”だった。花火大会は夏だけではなく、8月頃から12月まで毎週のように続く。冬の間に花火玉を作り溜めておき、シーズンになると週末の大会へ向け、1週間かけて玉を筒へ入れていく。その作業を延々と繰り返していた。
しかも雨や湿度、乾燥具合によって仕上がりが大きく左右されるため、単純な作業でもない。鳥居Dは取材の合間、花火玉を筒へ入れる作業や梱包を体験したが、「見ているよりやっぱり難しいです」といい、そのうえ作業場は「冬はめちゃくちゃ寒くて、夏はめちゃくちゃ暑い」。この過酷さを知るほど、現場にいる人たちの“花火愛”の強さも見えてきた。
「その作業は当たり前のことで、仕事が終わった後も自主的に技術を磨いたり、飲み会でもいつも花火の話をしているんです」
デジタル化や効率化が進み、「タイパ」「コスパ」という言葉が飛び交う中で、手間のかかる世界へ飛び込む若者たちを、「本当に好きでやりたいことをやっているんだなと思いました」と受け止めた鳥居D。その姿には、「今どきじゃない会社で夢みる僕と私の新入社員物語」(2026年3月22日・29日放送)で取材した「ゾス!」の叫びが飛び交うベンチャー企業の新人たちと、どこか共通するものを感じたそうだ。
「テレビもそうでしょ?」 花火師と番組制作に感じた共通点
何カ月も時間を費やして作った花火も、打ち上がればほんの一瞬で消えていく。その仕事を見つめるうち、鳥居Dは自身のテレビ制作との共通点を感じるようになった。
その感覚を決定づけたのが、ベテラン職人・佐々木さんとの会話。「口癖のように“花火という商品を作ってる”とおっしゃるのですが、その中で“テレビもそうでしょ?”と言われたんです」。
佐々木さんが意識しているのは、花火職人や熱心なマニアだけが喜ぶものではなく、年に1回ほど花火大会に足を運ぶ大多数の観客を楽しませること。「だから、選曲もお客さんが喜ぶならベタなものでもいい」と割り切っているそうだ。
その考え方が腑に落ちて、「一瞬で終わる花火は、1回の放送で終わるテレビと、どこか似てるなとも思いました」という鳥居D。
一発の大玉も、冬の「星(火薬の粒)作り」から長い時間をかけて準備し、本番では一瞬で消える。ドキュメンタリーも、膨大な時間をかけて取材・撮影し、編集を重ねながら、一度の放送へ向けて完成させる。その過程を知ったからこそ、花火師の仕事に共感する部分も増えていった。
花火師へのリスペクト…映像で“本物の色”に近づけるために
花火を題材にする以上、その映像にはこだわりをもって番組を制作した。普段の密着取材の撮影は鳥居D自身がハンディカメラで行ったが、花火大会の場面では専門のカメラマンが入り、観客、花火、職人たちと複数の場所に分かれて撮影したという。
さらに、「引きのきれいな花火映像のほとんどは、山崎煙火製造所さん専属のカメラマンの方から協力いただいて、映像を使用させてもらいました」とのこと。職人たちは花火の色に強いこだわりを持つが、肉眼で見た光とテレビ画面に映る光を完全に一致させることはできないことから、少しでも近づけられるように組み込んだ。そこには、花火師たちへのリスペクトが込められている。
約1年の取材で知られざる舞台裏を見届けた鳥居D。その目を通して職人たちの思いを知ったことで、花火を見上げた時、以前とは違うものが見えるようになったそうだ。

