視覚的スピードが聴覚的スピードを遥かに上回る! 新型アウディA6シリーズの快適車内空間

現行アウディにおいて最もエレガントなシルエットをもつのが新型アウディA6シリーズである。車格としても間違いなくアウディの核を担うミドルサイズ・エグゼクティブカーであるA6。その第9世代(C9)の試乗会に参加した。会場は通い慣れた富士スピードウェイホテル。新型A6のアバント TDI クワトロは、流麗なスタイリングだけに留まらず、走りや静粛性、そして居住性といった自動車としての根本的機能が飛躍的な進歩を遂げた一台である。

【画像】滑らかなフィーリングと静粛性が魅力の新型アウディA6シリーズ(写真7点)

試乗車に施された新色ミッドナイトグリーンメタリックは、一見すると引き締まった漆黒のように見えながらも、光の当たり方次第でメタリックの深いグリーンが美しく浮かび上がるとてもエレガントなカラーであり、余計なプレスラインを削ぎ落とした滑らかな面構成のボディデザインと完璧な調和を見せている。ボディサイズに関しては旧型と比べて全幅が5mm小さくなっているものの、ロングホイールベースを活かしたアウディらしい伸びやかでスポーティなシルエットを描く。新型A5と比べてホイールベースの差はわずか5cm程度と説明されるが、実際に後席に乗り込んでみると膝周りのゆとりや頭上空間を含めて数値以上に格段に大きく広く感じられる巧みなパッケージングが施されている。

この新型A6アバントに乗って何よりも圧倒されるのは、桁外れの静粛性である。まるで車体がまったく空気抵抗を受けていないかのような滑らかなフィーリングであり、ステーションワゴン形状でありながらCd値0.25という極めて優秀な空力性能を達成したボディ設計と、前後席に採用されたアコースティックガラスの遮音効果によって、高速走行時であっても気になる風切り音や空気抵抗による騒音が一切聞こえてこない。その結果、視覚的にスピードメーターの数字を見るとかなり速い速度が出ているにもかかわらず、耳から入ってくる聴覚的な速度感ははるかに遅く感じられるという実に面白いミスマッチが生じるほど、車内は至高の快適空間に仕上がっている。

パワートレインに搭載されたTDIディーゼルエンジンは、ガラガラ音を含む特有のノイズが見事にシャットアウトされており、アクセルを踏み込んでトルクが湧き上がる瞬間にのみ力強いバイブレーションとしてドライバーへ心地よく伝わってくる絶妙なチューニングが施されているうえ、新開発の48Vマイルドハイブリッドシステム「MHEV plus」による強力な電動アシストの恩恵によって、低速域や街乗りではあたかもEV(電気自動車)で走っているかのように滑らかで静粛性の高い走りを見せる。

長いホイールベースのおかげで高速道路では抜群の直進安定性とフラットで気持ちの良い乗り心地を提供してくれる一方で、いざコーナーに差し掛かると巨体を感じさせないほどスッと軽快に鼻先がターンインしていく心地よいアジリティを備えており、走行シチュエーションに応じてアウディドライブセレクトのモードを切り替えることで走りの表情は一変する。

高速道路をゆったり巡航するのに適した「バランス」モードではまったりとした上質な乗り心地を堪能できるのに対し、「ダイナミック」モードを選択するとアクセルレスポンスが一気に鋭くなり、踏み込んだ分だけダイレクトかつ軽快に車体を押し進めてくれる素晴らしい走りを披露する一方で、サスペンションの動きがやや大きく路面によっては身体が上下に揺さぶられる感覚の残る「コンフォート」や、極端に感覚が変わらないものの案外悪くない「エフィシェンシー」といったモードと比較しても、このクルマの魅力を最も引き出してくれるのは「ダイナミック」であり、ドライバーがステアリングを握る歓びと同乗者が寛げる快適性を極めて高い次元で融合させた最高峰のグランドツアラーとして完成されている。

短い時間であったがガソリンエンジンを搭載したアウディA6TFSIクワトロにも試乗する機会を得た。パワーは200kWとディーゼルより大きく、Cd値も0.23とレーシングカーのような数値を叩き出している。ディーゼルほどのトルクはないものの、さらに静かでしなやかな走りは総合的にも高く評価できるものであった。ただ個人的にはディーゼル固有の走りやすさが気に入ってしまった。面白い車であるし、800万円台から選べる車種構成は、この為替状況をかんがみればバーゲンともとれる。ぜひ試乗をしてみてほしい。

文:堀江史朗(オクタン日本版) Words: Shiro HORIE (Octane Japan)