フェラーリ・アマルフィ スパイダーをいち早く海外試乗|ローマ スパイダーからの進化点は?

グローバルデビューの約2週間後、3月25日に日本でも披露されたフェラーリ・アマルフィ スパイダーの初のテストドライブの舞台はギリシャ。海沿いの白と青の風景が想起される彼の地だが、今回は主に内陸の山岳地帯で、そのステアリングを握ることとなった。

【画像】より洗練され、よりスポーティーになったアマルフィ スパイダー(写真14点)

改めて陽光の下で対面したアマルフィ スパイダーのデザインは、”La Dolce Vita”を謳ったエモーショナルなローマに対して、シンプルさやクリーンさが前面に押し出されていると感じられた。敢えて目ヂカラで表情を作らない、無機質とも言えるクールな印象は、最近のフェラーリに共通するもので、あのローマからずいぶんうまく雰囲気を違えてきたなと改めて感心させられる。

ソフトトップは従来通りの5層構造のアコースティックファブリックを用いたもので、優れた耐候性と遮音性を誇る。走行中でも60km/hまでなら開閉可能で、その所要時間は13.5秒とされる。

インテリアの景色も、やはりこれまでとはまったく異なる。一番の注目点と言えば物理スイッチへの回帰だろう。使いやすさもそうだが、スタートボタンやステアリングスイッチの類は、触れること自体が喜びのはずであり、この変更、あるいは回帰に反対という人は、きっと皆無に違いない。

デザインはデュアルコクピット的な演出が更に強調され、センターディスプレイは他のモデルと同様の横型に。シフトセレクターやキーフォブ用のスロットはアルミ削り出しのセンターブリッジに置かれている。ローマのインテリアがふたりの世界だったとすれば、アマルフィは2人それぞれのための世界が構築されているようにも思えた。

走り出して、まず好印象を抱いたのは快適性の高さだった。サスペンションは決してソフトなわけではないはずだが、舗装の荒れたところでも適度なストローク感とともに入力を丸め、しなやかな乗り心地をもたらしている。「スポーツカーにしては」という前置詞抜きで、乗り心地は上々だ。

高いボディ剛性も、その一因であることは間違いない。実際、クローズ時とオープン時で、剛性感について大きな差を実感することはなかったのである。

異なるのは開放感、そして風の巻き込みということになるが、アマルフィ スパイダーにはローマ スパイダーと同様に、後席バックレスト内蔵の可動式ディフレクターが用意されており、これを展開させれば巻き込みは想像以上に抑えられる。特に日本の速度域であれば、高速道路でのオープンエアドライビングも十分にエンジョイできるはずだ。

各部の軽量化、制御系の一新、ターボチャージャーの最高回転数の引き上げなどによって、ローマに対して20cv増の最高出力640cvを得たV型8気筒4.0・ツインターボエンジンは、ピックアップがより鋭さを増した印象で、ピーキーなわけではなく右足の動きにまさにジャストで追従。パワー、トルクともに不満などあるはずはなく、刺激的なダッシュと伸びを楽しめる。

その際に奏でられるエグゾーストサウンドは従来よりも炸裂感が抑えられ、粒の揃った伸びやかさが前面に出ている。主に、厳しさを増す騒音規制に対応するための変化だが、個人的には却って気持ちの良いサウンド、もといノートが楽しめるアマルフィの方が好みだと感じられた。

この時代にあって敢えて搭載された、電動化の助けを借りないピュアな内燃エンジンのこうした旨味を存分に堪能できるのは、優れたシャシーあってこそ。街中や高速道路で快適な乗り心地をもたらしたサスペンションは、ワインディングロードに入れば優れたロードホールディングに貢献していて、無類の安心感の下にペースを上げていくことができる。

ターンインではフロントが逃げる素振りなど微塵も見せず、立ち上がりでは後輪が強烈なトラクションで車を前に進める。車から伝わるインフォメーションの濃さもあり、気づけばどんどんペースが上がってしまう走りっぷりである。

SF90以降、順に採用されてきたABS Evo.と呼ばれる電動ブレーキシステムは、ローマからの最大の変更点と言ってもいいかもしれない。ストローク短く剛性感あふれるタッチ、4輪の制動力を個別に、そして緻密に制御することによる安心感に満ちたブレーキング性能は、止めるためにも曲げるためにも素晴らしい効果を発揮してくれるのだ。

正直に言えば、スペックあるいは新採用アイテムのリストを見ただけの段階では、これも素晴らしい走りを楽しませてくれたローマ スパイダーに対して、一体どれだけの違いを実感させてくれるのかと、訝しい気持ちも無かったわけではない。しかし実際に走らせてみれば、そのアップグレードぶりは想像以上のものだった。

甘い生活を標榜したローマは、実際に乗ると結構荒々しい部分もある車だったが、そこから完成度を飛躍的に高めたローマ スパイダーを経て、アマルフィ スパイダーは一層の洗練、そして同時にスポーティネスを実現した、素晴らしい仕上がりを実現していた。ローマのエボリューションとするのではなく、新しい名前が与えられたのも、その長足の進化ぶりからすれば、大いに納得である。

文:島下泰久 写真:フェラーリ

Words: Yasuhisa SHIMASHITA Photography: Ferrari