『離婚弁護士』が第2シリーズまで放送されるヒット作になったのは、林宏司による脚本の高い完成度によるところが大きい。
ネットが普及するなど、人々の思考や行動が変わる中、何度も再放送され、そのたびに称賛を集めるのは、各話のエピソードに普遍性があり、共感させられるからだろう。配偶者によるモラハラ、親権争い、未成年者の結婚と不動産契約、ストーカー、遺産相続、内縁の妻、不倫の慰謝料、失踪した配偶者との離婚、上司からのセクハラなど、誰の身にも起こりうる身近なエピソードがピックアップされた。
それらの結末が単純な勧善懲悪ではないことも強みの1つだろう。正論を振りかざすような解決方法ではなく、視聴者にほどよく考えさせる余韻を残した結末が感動につながっていた。
しかもそれらのエピソードに出演したゲスト俳優のキャスティングが絶妙。宮崎美子、中越典子、河合美智子、りょう、MEGUMI、吉田日出子、戸田菜穂、南果歩、鈴木紗理奈らが悩み苦しむ女性たちを好演した。
また、それぞれ宮崎は山路和弘、中越は林隆三、河合は吹越満、MEGUMIは平田満、吉田は藤村俊二、戸田は津川雅彦、南は小木茂光、鈴木は岡田眞澄や西岡徳馬ら名優と対峙する各シーンは見応え十分。
さらに、身近でリアルなテーマを選び、名優たちが演じるリーガルドラマでありながらも、終始ライトな感覚で見られることも支持を得たポイントの1つだろう。
有能ながら抜けたところのある主人公や、愛すべきチームメンバーの描き方、身近なエピソードと登場人物を筆頭に、これほどライトな感覚で見られる法律ドラマは希少。法廷シーンが少ないことも含め、リーガルドラマというよりヒューマンドラマの印象が濃い作品となった。
最近は特別な設定の弁護士ばかり
最後に、弁護士が主人公のドラマ全般に言及すると、このところジワジワと増えたこともあって、差別化を狙うような主人公の設定が目立っている。
最近3年間を振り返ると、『イグナイト』(TBS系)は訴訟をたきつける弁護士、『法廷のドラゴン』(テレビ東京系)は女性プロ棋士から転向した弁護士、『モンスター』(カンテレ・フジ系)はゲーム感覚で法廷に挑む弁護士、『JKと六法全書』(テレビ朝日系)は現役女子高生弁護士、『弁護士ソドム』(テレ東系)は詐欺加担者専門弁護士、『勝利の法廷式』(読売テレビ・日本テレビ系)は元天才子役の弁護士という設定が選ばれた。
また、今夏もアーティストのGACKTが「嘘を武器に真実を暴く一級建築士との二刀流弁護士」を演じる『ブラックトリック~裁きを操る弁護人~』(フジ系)、吃音がある新人弁護士が得意のラップで法廷に挑む『リーガルビート -逆転の法廷-』(テレ東系)が放送されている。
しかし、『離婚弁護士』の主人公・間宮貴子にはこれらの特別な設定がなく、普通の女性として描かれた。さらに「普通の女性が悩み苦しむ女性たちに寄り添う姿を見せる」ことに徹したシンプルな制作スタンスが時代を超えて名作と言われる理由ではないか。
ここまで「女性弁護士の再生物語」「法律事務所メンバーでのチーム戦」「身近なエピソード」「ゲスト俳優の絶妙なキャスティング」「特別な設定に頼らないシンプルな制作スタンス」という5つの魅力をあげてきたが、いかにキャストとスタッフの力が融合した作品だったかがわかるだろう。
余談だが、第2話に星野源がわずかにゲスト出演している。再放送の際は必ずネット上に驚きの声があがるが、動画配信サービスの充実でこのような楽しみ方ができるのも「今、平成ドラマ」を見る理由の1つとなっている。
日本では地上波だけで季節ごとに約40作、衛星波や配信を含めると年間200作前後のドラマが制作されている。それだけに「あまり見られていないけど面白い」という作品は多い。また、動画配信サービスの発達で増え続けるアーカイブを見るハードルは下がっている。「令和の今ならこんな見方ができる」「現在の季節や世相にフィットする」というおすすめの過去作をドラマ解説者・木村隆志が随時紹介していく。