塩野義製薬は8月7日、夏の感染症に関する意識調査の結果を発表した。調査は2026年7月10日~7月12日、20~60代の男女10,000人および、この1年以内に風邪の症状を感じた時にAIに相談したことがある20~60代男女1,000人と、一般病院および医院・診療所・クリニックで治療に当たる医師100人を対象にインターネットで行われた。

  • 風邪症状時のAI利用と医療受診に関する調査

    風邪症状時のAI利用と医療受診に関する調査

生活者1万人のうち、42.7%が月1回以上AIを利用

20~60代の男女1万人にAIの利用頻度を調査した結果、14.1%が「ほぼ毎日」、17.6%が「週に数回」、11.0%が「月に数回」と答え、全体の42.7%が月に1回以上、AIを利用していた。

月1回以上AIを利用する人における、過去1年以内にAIに相談した内容は、「勉強や仕事の補助として、調べものやわからないことなどについての問い合わせ」(71.8%)が最も多く、次いで「体調不良時の自身の症状や対応策に関する相談」(46.7%)となり、20代(51.6%)・30代(53.7%)では半数を超えた。

また、発熱・のどの痛み・咳・鼻水・倦怠感などの「風邪の症状を感じたときの症状や対応策に関する相談」でAIを利用する人は38.0%と約4割で、こちらも20代(49.0 %)・30代(47.5%)の若い世代の利用率が高くなった。

  • AIの利用頻度/AIに相談する内容

    AIの利用頻度/AIに相談する内容

風邪症状時におけるAI利用の実態

この1年以内で、発熱、のどの痛み、咳、鼻水、倦怠感など風邪の症状を感じたとき、症状や対応策に関して「AIに相談したことがある」と回答した20~60代の男女1,000人に調査した。

風邪の症状を感じたとき、最初にとる行動に関する質問では、最も多かったのがChatGPTやGeminiなどの「AIに相談する」(31.5%)、次いで「熱を測る」(22.3%)であり、熱を測る前にAIに相談する人が一定数いる結果となった。

年代別に見ると、50代(27.5%)・60代(30.0%)はまず「熱を測る」の回答が最も多かったのに対し、20代(39.0%)・30代(41.5%)は「AIに相談」の回答が最も多い結果だった。なお、風邪の症状を感じた時に、「AIに相談したことがある」と回答した人の約7割は「相談相手として、AIより医師の方が信頼できる」(70.2%)と回答している。

  • 風邪の症状を感じたとき最初にすること/相談相手としてAIより医師の方が信頼できる

    風邪の症状を感じたとき最初にすること/相談相手としてAIより医師の方が信頼できる

AIに相談して「医療機関の受診の判断」をする人も

AIに相談する目的を聞くと「自宅での対処法を知りたい」(37.2%)、「どんな疾患の可能性があるか知りたい」(34.5%)、「相談して安心したい、不安を軽減したい」(31.5%)などが上位に挙げられた。「医療機関を受診すべきか判断したい」(28.9%)や「医療機関を受診しなくてすむ方法をみつけたい」 (21.1%)という目的でAIに相談する人も見られた。

  • AIに相談する目的

    AIに相談する目的

AIがコロナの可能性を提示も、医療機関を受診しない人が一定数存在

発熱、のどの痛み、咳、鼻水、倦怠感など風邪の症状を感じAIに相談した際に、感染症の可能性を提示された経験についての調査結果では、62.1%が「風邪」、30.6%が「インフルエンザ」、21.5%が「新型コロナ」の可能性を提示された経験があった。

それらの症状の可能性が提示されたときの気持ちを聞くと、「風邪」の可能性を提示された人は「安心した」(25.6%)や「不安な気持ちが軽減した」(21.9%)などの結果であったのに対し、「インフルエンザ」や「新型コロナ」の可能性を提示された人は「医療機関で受診した方がよい」「検査をした方がよい」など異なる回答結果だった。

  • AIから感染症の可能性を提示された経験/AIから感染症の可能性を提示されたときの気持ち

    AIから感染症の可能性を提示された経験/AIから感染症の可能性を提示されたときの気持ち

しかし実際に「医療機関を受診した」のは、「風邪」20.6%、「インフルエンザ」38.2%、「新型コロナ」37.2%であり、AIから「風邪」の可能性を提示された人の約8割(79.4%)、「インフルエンザ」(61.8%)や「新型コロナ」(62.8%)の可能性を提示された人では、それぞれ6割以上が医療機関を受診しなかったという結果だった。「新型コロナ」の可能性を提示されたが、医療機関を受診しなかった人の一部では、症状の長期化や悪化等に関連する回答があった。

  • 医療機関を受診した人/受診しなかった結果

    医療機関を受診した人/受診しなかった結果

「受診行動にAIが影響」医師68.0%

ここからは、一般病院および医院・診療所・クリニックで治療に当たる医師100人に聞いた。

生活者の日常にAIが浸透することによる患者の医療機関受診行動への影響を調査した結果、24.0%が「そう思う」、44.0%が「ややそう思う」と回答し、医師の68.0%がAIは患者の受診行動に影響があると答えた。具体的な影響として、「自分の状態をAIの情報をもとに自己判断する人がいる」と答えた医師が58.8%と最も多くなった。

  • 医療機関受診に関するAIの影響/AIによる医療機関受診に及ぼす影響

    医療機関受診に関するAIの影響/AIによる医療機関受診に及ぼす影響

「感染症はAIへの相談だけで正確に判断するのは難しい」医師8割超

風邪の症状を感じた患者が受診前にAIに相談することについて医師の意見を聞くと、「感染症は似ている症状が多いため、種類や重症度をAIへの相談だけで正確に判断するのは難しい」が84.0%、「いろいろな感染症の可能性が考えられるので、すぐに医療機関を受診してほしい」が66.0%だった。また、医師の58.0%は、受診前のAI相談は「医療機関への受診遅れにつながる」と回答した。

  • 患者さんが風邪の症状を感じたとき、受診前にAIに相談することに対する医師の意見

    患者さんが風邪の症状を感じたとき、受診前にAIに相談することに対する医師の意見

患者の望ましいAIの使い方は

生活者が自身の体調管理にAIを活用する場合、望ましい方法や望ましくない方法を医師に聞くと、おおむね望ましいとの回答が得られたが、「薬を飲むかどうかの判断に使う」(64.0%)「疾患の自己判断のために使う」(61.0%)は、6割を超える医師が「望ましくない」と答えた。

  • 望ましいAI活用方法

    望ましいAI活用方法

AIによる体調管理は「有効」だが「参考程度」に

体調管理のためにAIを利用することに対する医師の回答結果では、74.0%が「生活者が体調管理でAIに相談することは有効」、76.0%が「風邪の初期症状時、患者は医師よりAIの方が相談しやすい」と答え、生活者が体調管理にAIを活用することを支持する回答が一定数みられた。

しかし、「体調管理や健康管理でAIの意見をうのみにせず、参考程度にしてほしい」(88.0%)が約9割であり、72.0%は「受診前、AIに相談した場合、AIに相談した内容を医師に伝えた方が良い」と答えた。

  • AIでの体調管理に対する医師の意見

    AIでの体調管理に対する医師の意見

調査結果を受け、本調査を監修した、いとう王子神谷内科外科クリニックの院長・伊藤博道氏は次のように述べている。

「AIは早くて従順なアシスタントです。しかしながら、一般的な生成AIは、医療の専門家による診察や検査に代わるものではなく、提供される情報には限界があり、また、その責任をAIは負ってくれません。例えば、AI相談で強く受診を勧められず、様子を見た結果、病状が悪化、後日受診して新型コロナと診断されるケースなど、時に誤った情報や不正確な回答を示すこともあります。そのため、AIの回答だけで診断や治療方針を判断することには限界があります。特にCOVID-19やインフルエンザでは、発症早期の適切な検査・診断・治療が重要です。我々医師は、症状だけでなく、診察や検査で得られる多くの情報を総合して診断しています。生活者の皆さんには、AIを参考情報として上手に活用しつつ、気になる症状がある場合は、早めに医療機関への相談をご検討ください」(伊藤博道氏)