LE SSERAFIMはなぜライブで楽曲を再構築するのか 『PUREFLOW』横浜公演に見た5人の進化

LE SSERAFIMが、2度目のワールドツアー日本公演『2026 LE SSERAFIM TOUR 'PUREFLOW' IN JAPAN』の神奈川公演を、7月30日、8月1日、2日の3日間にわたりKアリーナ横浜で開催した。2nd Studio Album『PUREFLOW』pt.1の世界観を軸に、最新曲から代表曲までを大胆なアレンジと演出で再構築した、2時間超のステージとなった。

Rolling Stone Japanでは、その初日公演をレポート。これまでLE SSERAFIMのライブを継続して見届けてきたライターのMINORIが、5人のパフォーマンスに表れた変化と成長、そして”FEARLESS 2.0”が示す現在地を考察する。

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KIM CHAEWON、SAKURA、HUH YUNJIN、KAZUHA、HONG EUNCHAEの5人からなるLE SSERAFIM。2022年のデビュー以降、「ANTIFRAGILE」「UNFORGIVEN」「EASY」「CRAZY」など、既存の価値観に臆することなく前進する姿勢を楽曲とパフォーマンスで表現してきた。2026年5月には、約3年ぶりとなるスタジオアルバム『PUREFLOW』pt.1をリリース。「恐れを知っているからこそ、より強くなれた」というメッセージを掲げ、新章”FEARLESS 2.0”をスタートさせた。今回の公演は、その現在地を伝える2度目のワールドツアーの日本公演にあたる。

開演前、ステージに現れたのはメンバーではなく、奇妙な被り物を身につけた”Creature”たち。”Creature”たちはステージから客席へと降り、観客の間を練り歩く。まだ本編は始まっていないはずなのに、会場にはハロウィンパーティーのような怪しさが漂い始める。やがて炎が上がり、客席の熱が少しずつ高まっていく。

「CELEBRATION」のイントロとともに5人が登場すると、Kアリーナ横浜は紫の照明とレーザーに包まれた。赤と黒を基調とした煌びやかな衣装、舞い上がる銀テープ。1曲目からクライマックスのようなボルテージだ。続く「Creatures」ではダンサーを交えた密度の高いパフォーマンスを展開。なかでもHUH YUNJINは、楽曲のムードに合わせて一瞬ごとに変化する表情で観客を引き込んでいく。青い照明の中で披露された「Eve, Psyche & The Bluebeards wife」は、トライバルやダンスホールを思わせるアレンジへと変貌。

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今回の公演では、リリースされた楽曲をそのまま披露するのではなく、大胆なアレンジを施したステージがいくつも用意されていた。「HOT」は軽やかで開放的なバンドアレンジに。「Perfect Night」にはロックの質感が加わり、「Blue Flame」はムーディーなシティポップやハウスを思わせるサウンドへと姿を変える。「EASY」では歪んだギターが鳴り響き、スタンドマイクを握る5人の姿は、アイドルというより、ロックバンドのフロントに立つボーカリストたちのようだった。大胆に再構築された楽曲は、普段から音源やMVに親しんでいる人ほど、意外に感じたり、戸惑いを覚えたりした人もいたかもしれない。原曲で明快だった盛り上がりどころが、別の形へと置き換えられた場面もあった。しかし、そうした”違和感”も含めて、今回の公演では「ライブでしか聴けないものを届ける」という意思が一貫していたように思う。

その姿勢を象徴していたのが、中盤に披露された「Saki (feat. Aliyah's Interlude)」だ。気がつけばステージから姿を消したSAKURAにHONG EUNCHAEが携帯電話をかけるというコミカルなMCを挟み、サングラス姿のSAKURAがメインステージの下から登場。HUH YUNJINのラップやKIM CHAEWONの伸びやかな高音など、それぞれの個性が短い楽曲の中に凝縮されていく。そして何より、この日のSAKURAの歌には驚かされた。声にこれまで以上の太さと推進力があり、歌唱、ダンス、表情のすべてから自信があふれていた。単に技術が向上したというだけではない。自らがステージの中心に立ち、観客の視線を受け止めながら、その場を支配するような強さがあった。この日の公演を通して、SAKURAの歌唱表現は、ひとつ上の段階へ進んだように感じられた。「Saki」は、その変化が最も鮮明に表れた瞬間だった。

後半は、LE SSERAFIMの身体能力とスタミナが正面から試されるような展開が続く。座禅を組むダンサーとともに登場した「BOOMPALA」では、祭壇とサウンドシステムを混ぜ合わせたようなセットを背景に、グルーヴィーでスピリチュアルな世界を作り出す。イントロで見せたKIM CHAEWONの表情だけで、客席からは大きな歓声が上がった。そこから「ANTIFRAGILE」「Irony」「CRAZY」「SPAGHETTI (Member ver.)」と、激しいダンスを伴う楽曲がほぼ間を空けずに続いていく。レーザーや火花、重低音に包まれながら、5人は動きを緩めない。「CRAZY」ではこの日最大級の歓声が上がり、KAZUHAの妖艶な表情が楽曲の異様な高揚感を増幅させる。「SPAGHETTI」では床に寝転がった状態からのシンクロダンスやダンスブレイクを披露し、HONG EUNCHAEは激しい動きの中でも表情を次々に変えて観客を楽しませた。これほどハードなパフォーマンスが連続しても、振りが乱れないだけでなく、歌声の迫力も表情の密度も落ちなかった。特に印象的だったのは、そのパフォーマンスに余裕すら感じさせる安定感が備わっていたことだ。大規模なステージやワールドツアーを重ねてきた経験が、5人の身体に確実に蓄積されていることが分かる。

ダンスセクションを終えた5人は、ステージ上に崩れ落ちるように座り込んだ。「汗がやば〜」「何曲続いた? 5曲?」と口々に漏らし、HUH YUNJINは「体が燃え尽きました!」とひと言。KIM CHAEWONが「FEARNOTも大丈夫ですか? 暑くないですか?」と客席を気遣うと、SAKURAは「みんなで一緒にあおいでもらっていいですか?」と呼びかけた。ファンがメンバーの顔写真入りのうちわを一斉に動かすと、ステージまで風が届いたのか、HUH YUNJINが「涼しい〜」と笑顔を見せる。息を切らし、汗をかき、ファンに風を送ってもらう。その姿を隠さないことも、今回のライブを象徴していたように思う。完璧な存在として振る舞い続けるのではなく、限界まで踊った人間の姿まで、そのままライブの一部として差し出していた。そのまま5人はステージに座り、話題は日本で過ごした時間へ。大阪公演後にはもんじゃ焼きを食べに行ったそうで、SAKURAは「私が知らないお店にEUNCHAEが案内してくれました。食べ方まで教えてくれた」と明かす。激しいダンスセクションから一転、メンバー同士の気のおけないやり取りが続く。

さらに、以前Kアリーナ横浜でイベントに出演した際、HONG EUNCHAEが披露した「かわいいだけじゃだめですか?」の話になると、再演を求める声が上がった。続いてHUH YUNJINも挑戦するが、メンバーからの反応は今ひとつのようだった。SAKURAに「ちょっとむかついた(笑)」、KIM CHAEWONに「ちょっと怖かったです」と評されると、本人も「私はかわいいこととはちょっと遠い」と苦笑した。やがて客席からSAKURAコールが起こった。HUH YUNJINが「これからかっこいいステージが続くので、かわいい表情を見せてあげられるのはここしかないんです」と背中を押すと、SAKURAはアイドルとしてのキャリアを凝縮したような完璧な愛嬌を披露。KAZUHAも「かわいい表情を見せる機会があまりないので、今日は特別にお願いします」というHONG EUNCHAEのリクエストを受け、普段はなかなか見せない愛嬌とウインクを披露。SAKURAからは「ちょっとウケ狙いじゃない?」、HUH YUNJINからは「夢に出てきそうです」とツッコまれ、会場を沸かせた。一方、KIM CHAEWONの愛嬌は、「また今度お見せすることにします」と次の機会までお預けとなった。ステージ上で繰り広げられる5人の自然体のやり取りに、客席からは何度も笑いと歓声が上がった。

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楽曲が始まれば空気は一変。「UNFORGIVEN」から「Fire in the belly」へと突入すると、オレンジと赤の照明の中で再び激しいパフォーマンスを展開。「Fire in the belly」では、KIM CHAEWONが掛け声に「かわいいだけじゃだめですか?」を織り込み、会場を沸かせた。「FEARLESS」を終えると、メンバーは一人ずつ、会場を埋めたFEARNOTへ言葉を届けた。

KAZUHAは「少し不安もあったけど、上のほうの奥までFEARNOTがいっぱいでうれしかったです。みなさん、ちゃんと見えていましたよ」と客席を見渡した。そして、迷いを抱えることもあると率直に明かしながら、「舞台に上がると、”今この瞬間を全力で楽しもう”という気持ちに変えてくれる。FEARNOTは、前に進む力をくれる存在です」と語った。

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KIM CHAEWONは「一人ひとりが大切で、心から感謝しています」と伝え、「今日がみなさんにとって素敵な思い出になるようにステージに立ちました。普段のストレスも、私たちのステージを見ている間は忘れて楽しんでくれていたらうれしいです」と続ける。

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HUH YUNJINは、過去にもイベントや年末のステージでKアリーナ横浜を訪れたことに触れながら、「今回の『PUREFLOW』も、みんなの記憶に長く残る公演にしたくて一生懸命頑張りました」と話す。「ステージから見たみなさんの声、熱気、そのすべてが私たちを輝かせてくれました。この瞬間を私は絶対に覚えています。また絶対会おうね!」と力強く約束。

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SAKURAは、会場いっぱいに広がるFEARNOTを見ていると、さまざまな感情が湧いてくると話した。「毎日、頑張っていることや、つらいこともあると思います。その中で私たちに会う時間を作ってくれたことが、本当にうれしいです。行動で示してくれることに愛を感じます」。さらに、「みなさんにとって、人生の楽しみのひとつになれたらうれしいです。ポジティブな感情だけを届けられるようになりたいです」とまっすぐに言葉を重ねた。

SAKURA (P)&(C) SOURCE MUSIC

HONG EUNCHAEも、「忙しい平日の大切な時間を割いてくださり、ありがとうございます」と感謝を伝えた。ファンが投稿する感想やVlogを見ているそうで、「私たちに向けてくれる感情がどれほど温かいかを知って感動しました。そんなFEARNOTに素敵なステージをお見せしようという、前向きな力をたくさんもらいました」と語った。

HONG EUNCHAE (P)&(C) SOURCE MUSIC

K-POPのステージでは、歌、ダンス、衣装、映像、照明まで精密に組み上げられた完成度がしばしば評価される。もちろんLE SSERAFIMも、その水準を満たす高い技術を持っている。ただ、今回のステージで5人が見せたのは、きれいに整えられた完成形だけではない。息を切らしながら力いっぱい踊ること。気持ちを込めた歌声を張り上げること。原曲を壊すほど大胆にアレンジすること。限界まで踊ったあとには、その疲れさえもファンと共有し、笑いに変えること。今回のライブで重視されていたのは、完璧に見せること以上に、”今ここでエネルギーを爆発させる”ことだった。もちろん、その熱量を成立させていた背景には、5人の歌唱、ダンス、表情、スタミナの大きな成長があるのだろう。確かな技術があるからこそ、原曲の枠組みを思い切って壊し、新たな形へと再構築できる。

最後のセクションで、新アルバムの人気曲「iffy iffy」が披露されると、会場が軽やかな雰囲気に包まれた。ライブの定番曲「No Celestial」では「Down to earth!」の掛け声が会場に響き、花道いっぱいに広がった5人は、最後までパワフルに歌い踊った。

ステージに立つたびに楽曲を更新し、自分たち自身を更新しながら、ライブという生ものを本気で作ろうとしているLE SSERAFIM。Kアリーナ横浜で私が目にしたのは、”FEARLESS 2.0”という言葉にふさわしい、恐れを乗り越えた上で、さらに大胆に前へ進む5人の姿だった。

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