Michiganderが語る、人生が過ぎ去る前に好きなことを選ぶ理由

米ナッシュビルを拠点に活動するシンガーソングライター/マルチプレイヤー、ジェイソン・シンガーによるインディーロック・プロジェクト、ミシガンダー(Michigander)。2025年のセルフタイトル作から約1年という短いスパンで完成させた2ndアルバム『Over Before You Know It』には、親しみやすいメロディの奥で、創作を続けることの難しさや、時間の流れ、変わりゆく人間関係が刻まれている。

野心に突き動かされながらも、立ち止まり、今ある人生を受け入れようとする視点は、Michiganderの新たな成熟を伝えるものだ。7月31日のアルバムリリースを前に、制作を支えた仲間たち、成功に対する考え方、音楽とコミュニティの関係について、Rolling Stone Japanがメールインタビューで話を聞いた。

―7月31日に、2作目のフルアルバム『Over Before You Know It』がリリースされます。作品を完成させ、いよいよ世に送り出す今はどんな心境ですか。また、このアルバムは現在のあなたの人生やキャリアにおいて、どのような位置を占める作品になりましたか。

これまでのリリースのなかで、今が一番ワクワクしているし、同時に一番緊張もしている。作品を発表するたびに、期待しすぎないよう自分を抑えようとはするんだけど、その一方で、これは自分の最高傑作だとも感じているんだ。

ただ、こんなに落ち着いた状態で音楽をリリースするのは今回が初めてだと思う。とにかく早くアルバム全体を聴いてもらいたいし、聴いた人それぞれが、自分と重なる何かを見つけてくれたらうれしい。

―公式バイオでは、2025年のセルフタイトル作『Michigander』が人生やキャリアを大きく変える作品になると期待していた一方、実際には思い描いていたほどの変化を感じられなかったと振り返っています。当時は何が変わることを期待していたのでしょう。また、その経験を経て、あなたにとっての「成功」の意味はどのように変わりましたか。

もっと多くを求めてしまうのは、人間の本能なのかもしれない。特にアメリカでは、常に規模を広げ、成長し続けることが重視される。何年も同じことを続けているのに、目に見える成長がないと、本当に疲れてしまうんだ。

でも、この1年で、そもそも自分がこうして音楽を続けられていること自体、とても幸運なんだと気づいた。もっと歩みを緩めて、その過程を楽しまなくてはいけない。結局のところ、僕たちにあるのは、その道のりだけだから。

―前作は約1年かけて制作されましたが、今作はJeremy Lutito、Collin Pastore、Jake Finchら親しい仲間たちと、ナッシュビルで短期間のうちに書き上げ、レコーディングしたそうですね。制作のスピードを上げたことで、前作にはなかったどんな自由や勢いが生まれましたか。

アルバム制作に明確な締め切りがあったのは今回が初めてだったけど、それがすごくよかった。自分の直感を信じざるを得なかったし、みんなで考えすぎることもなくなったから。

彼らと一緒に制作する時間は、これまで経験したなかでも特に素晴らしく、自由を感じられるものだった。彼らは僕が最も自分らしい状態でいられるよう背中を押してくれる。そういうときにこそ、魔法が起きるんだ。

―Michiganderはあなたを中心とするプロジェクトですが、アルバムは「Starting A Band」という曲で幕を開けます。なぜこの曲を1曲目に置いたのでしょう。現在のあなたにとって、「バンドを始める」という言葉にはどんな意味がありますか。

この曲における「バンドを始める」という行為は、人生を大きく変えようとしているすべての人に向けた比喩なんだ。夢を追いかけ、高い目標を掲げることで、あとになって「あのとき挑戦していたらどうなっていただろう」と自問せずに済む。

最近気づいたのは、本当の意味で「安全な道」なんて存在しないということ。それなら、自分が心から好きなことをやったほうがいいよね。

―今作には、「Taxi」の軽快なポップ感、「Good Things」の大きなロックサウンド、「OH GOOD!」のダンサブルなビート、タイトル曲のパワーバラード的な広がりまで、さまざまな音楽性が共存しています。それぞれのサウンドは歌詞の内容から自然に生まれたものですか。それとも、Michiganderの音楽的な幅を意識的に広げようとしたのでしょうか。

いい質問だね。今回は、どんな選択についても考えすぎず、最初に浮かんだ直感やアイデアを全面的に信じようと思っていた。

それぞれの曲が最終的にどんなサウンドになるかを、意識的に考えていたわけではないんだ。曲ごとに少しずつ違いはあるけれど、結果として互いをうまく引き立て合っていると思う。

―アルバム制作中によく聴いていたアーティストや作品があれば、いくつか挙げてもらえますか?

Oasisのライブを観ることができたんだけど、それはかなり大きな影響を与えていると思う。それから、Geese、MJ Lenderman、Yo La Tengo、Wilcoもよく聴いていたよ。

―「Freaking Out」は今作のために最初に書かれた曲であり、アルバム全体のテーマの核でもあるそうですね。なかでも「This is what it feels like to be alive」という一節を、アルバムを象徴する言葉として挙げています。この言葉には、現在のあなたのどんな人生観が表れていますか。

人生には、良いことと悪いことが同じくらいあるんだと思う。どちらか一方だけを手に入れられるとは期待できない。すべてを含めて人生の一部なんだ。

だからこそ、歩みを緩めて、今この瞬間を楽しむことがとても大切なんだと思う。

―公式バイオでは、数年にわたりトークセラピーやEMDRに取り組み、現在は大人になってから最も健やかな状態にあると紹介されています。差し支えない範囲で、以前よりも安定した場所から過去の自分について書くことが、今回の歌詞にどんな変化をもたらしたのか聞かせてください。

音楽そのものに集中し、曲を作ることに伴う外からのプレッシャーを考えずに済むようになった。

以前は、ストリーミングで数字が伸びる曲や、ラジオでヒットする曲を作ろうと、いつもどこかで考えていたと思う。でも今回は、自分自身の心に響く曲だけを作り、できる限りソングライティングという営みに誠実であろうとした。ただ音楽が通っていくための器になろうとしていたんだ。

―「YYY」では、失われた友情を振り返りながら、関係が壊れたことに自分にも責任があったのではないかと問いかけています。この曲を書くことで、「自分らしく生きること」と「自分の振る舞いを省みること」の関係について、どんなことに気づきましたか。

年齢を重ねるにつれて、誰もが僕のことを気に入ってくれるわけではないし、それで構わないと思えるようになってきた。

僕の人生には、心から大切にしたい素晴らしい人たちがたくさんいる。彼らを大事にして、必要なときにはそばにいたい。誰かと気が合わないことがあっても、それはそれでいいんだ。僕の周りには素晴らしいコミュニティがあるから、できる限り多くの時間をその人たちに注ぎたい。

Photo by Noah Torralba

―アルバム後半では、「Outlive」「Float」、そしてタイトル曲を通して、目の前の問題だけにとらわれないこと、愛する人と支え合うこと、人生の短さを受け入れることへと視点が開かれていきます。音楽業界への苛立ちや自分自身への疑いから始まった作品を、最終的にこの場所へ着地させたのはなぜでしょう。また、日本のリスナーには、今のMichiganderについて何を感じ取ってほしいですか。

このアルバムの流れに気づいてくれたのは、あなたが初めてだよ。取り上げてくれてありがとう。

この構成は、長いあいだ僕が感じてきたことをよく表していると思う。年齢を重ねるにつれて、時間があっという間に過ぎていくことを実感するようになった。昔からいろいろな人に「そうなるよ」と言われていたけれど、まったく信じていなかった。でも、本当にその通りだった。

この曲を聴いた人が、少しでも安らぎを見つけ、自分の気持ちをわかってもらえたと感じてくれたらうれしい。曲とつながることで、少し歩みを緩め、今いる道のりを楽しんでほしいんだ。

―7月20日に公開されたドキュメンタリー『Nothing Really Matters』では、今作の舞台裏が映像で描かれています。なぜこのタイトルを選んだのでしょう。また、楽曲だけでは伝えきれない、自分自身やアルバムのどんな側面を残したいと考えましたか。

このアルバムと対になるような作品を作りたかった。僕が今、人生のどんな場所にいるのかをリスナーに伝えることで、曲のことをより深く理解してもらいたかったんだ。

タイトルは、アルバムの表題曲にある〈nothing really matters in the end〉という歌詞から取っている。僕たちが日々心配していることも、いつかはすべてなくなってしまう。何も、そして誰も、永遠には続かないということを表現したかった。

―秋の全米ツアーではHeadCount、Concerted USAと連携し、投票登録の支援や、地域の非営利団体でのボランティアを通じてライブに参加できる仕組みを取り入れています。今回、ツアーと社会参加を結びつけようと考えたのはなぜでしょう。あなたにとってライブ会場は、音楽を届ける以外にどんなコミュニティを生み出せる場所ですか。

どんな形であれ、発信できる場を持っているなら、それを活用するべきだと思う。自分の暮らすコミュニティや、その外の世界で何が起きているのかを、多くの人に知ってもらうことに強い思いがあるんだ。

僕自身、人生の大半を通して、社会で起きていることを十分に理解していなかった。ほかの人たちには、同じようになってほしくないと思っている。

このバンドを取り巻くコミュニティが、以前の自分とのつながりを見失ってしまった人にとっても、家のように感じられる場所になってほしい。

―ジャケットには、広い空と芝生のなかに小さな家が一軒だけ写っています。このイメージは、アルバムタイトルや収録曲のテーマとどのようにつながっているのでしょう。また、Katie ReahlとNoah Torralbaとは、作品のビジュアルについてどんな言葉を共有しましたか。

NoahとKatieは、このアルバムのビジュアルを作るうえで、本当に素晴らしい仕事をしてくれた。それから、映像制作を担当してくれたTyler AppelとBrandon Houserにも、ぜひ感謝を伝えたい。こんなにも素晴らしい人たちに囲まれていることを、とても幸運に思っている。

あの家は、自分が築き上げている人生を表している。そして、その人生が周囲の世界と比べれば、とても小さなものであることも示しているんだ。家が地面へ沈み込んでいるのは、時間がそれをのみ込んでいく様子を表現している。

『Over Before You Know It』

Michigander(ミシガンダー)

TOTALLY NORMAL

7月31日配信

配信リンク:https://michigander.ffm.to/overbeforeyouknowit

Tracklist

1. Starting A Band

2. Taxi

3. YYY

4. Freaking Out

5. Let Go Of You

6. Good Things

7. Outlive

8. OH GOOD!

9. Float

10. Over Before You Know It

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