
近年世界的に広がりを見せている、フィリピン発のポップミュージック・P-POP。その先駆者である5人組ボーイズグループ・SB19が、サマーソニックに初出演する。日本のBE:FIRSTや台湾C-POPの女王であるJOLINなど、アジアアーティストとのコラボも活発に行う彼ら。新たなチャプターに突入した現在地について、グローバル進出に駆ける思い、そしてサマーソニックやロラパルーザへの意気込みを聞いた。
※SB19は新曲「LAWLESS」を本日リリース
※この記事は2025年6月25日発売の『Rolling Stone JAPAN vol.35』内に掲載されたものです。
Photograph by Louis Duran
アルバムを経た「進化と成熟」の新章
─3月にリリースしたアルバム『Wakas at Simula』は「終わりからの始まり」というタイトルの通り、これまでのSB19にひとつの区切りを付け、新たなチャプターの幕開けを告げる作品になっていますね。
パブロ:人としてもアーティストとしても、僕らの現在の立ち位置を強く反映した作品です。SB19として活動し始めて8年が経ちましたが、ひとつの時代が終わるたび、僕たちは新たな学びを得てきました。今の僕たちは、さらに大きなグローバル展開を見据え、世界規模で存在感を放つことを目指しています。メンバー全員で、今後どのように進むべきか、フィリピンの音楽シーンを背負ってどう世界に届けるかについて考える。ここからの新章は、そんなチャプターですね。
パブロ
─なるほど。アルバムへは世界中から熱い反響が寄せられていますが、リアクションをどう受け止めましたか?
ステル:SNSを見ていると、海外のファンやカジュアルなリスナーの方々は、以前とは異なるSB19のサウンドにしっかりと気づいてくれているように思います。僕らが音楽を通して打ち出すメッセージや社会問題への思い、グループの成熟したアーティスト性などに反応し、今まで以上に僕らの良さをわかってくれている印象を受けますね。自分たちらしい音楽性やアーティスト性を大切にしつつ、さらにメッセージ性や社会性の高い音楽を作り続け、グローバルファンやフィリピンのA'TIN(ファンネーム)に喜んでもらえる音楽を届けたい。そして、僕らに共感してくれる人を増やしたい。SB19だけでなく、他のフィリピンのアーティストのことも応援してもらいたいです。

ステル
─『Wakas at Simula』の収録曲をライブでパフォーマンスするなかで曲を変化させた部分や、新たに発見したことはありますか?
ジャスティン:『Wakas at Simula』では大物アーティストとのコラボや初めてのプロデューサーと一緒に作った楽曲もありましたが、その経験から学んだことは、すぐにライブに取り入れました。逆に、2021年リリースのEP『Pagsibol』から再録した6曲については、ライブで培ってきた表現を反映して新たにレコーディングしたんです。だから原曲からアドリブやメロディが少し変わっている部分もあって。僕のパートでいえば、「MAPA」が特徴的ですね。〈あなたはいつも褒めてくれるけど、今度は僕が恩返しする番じゃないかな〉という歌詞は、以前は「そうできたらいいな」という迷いを含んだニュアンスだったのですが、「これからは僕に任せて。ちゃんと面倒を見るから」と、両親を安心させるニュアンスに変えたんです。
─「MAPA」は両親への深い愛情を歌った楽曲ですね。成長した今の自分の姿を反映して、歌詞をアップデートしたと。
ジャスティン:はい。リリース当時はまだ駆け出しだったので、本当に両親の面倒を見られるのか自信が持てなかったのですが、今はいろんな経験を経て、自信を持って「任せて」という言葉をかけられるようになりました。

ジャスティン
─明かせる範囲で大丈夫ですが、次作はどのような作品になりそうですか?
ジョシュ:多くの人がSB19の音楽を聴いてくれていますが、まだ自分たちの全てを見せきれていないと思うんです。僕たちは自分たちの核となる音楽性を表現できるように努力してきて、デビューからずっと進化を続けてきたし、より進化できる方法を模索しています。まだ多くは語れませんが、次の作品では、誰も見たことがないような、リスクも臆せず取った恐れを知らないSB19の新バージョンをお見せしたいと思っています。同時に、自分たちらしさやアイデンティティは必ず守り続けます。

ジョシュ
P-POPを背負い、世界に挑む覚悟
─かつて「GENTO」がグラミー賞のエントリー作品にノミネートされたこともありましたが、受賞したいアワードや立ちたい舞台など、グローバル進出の具体的な目標はあるのでしょうか。
パブロ:もちろんあります。グラミー賞を受賞できたらもちろん光栄ですが、僕たちの目標は、フィリピンを代表して大規模なインターナショナルイベントに出演し、フィリピン人としてのパフォーマンスとクリエイションを世界にお見せすることです。トロフィーや賞、国際的なステージ以上に僕らが本当に目指しているのは、多くの人々に自分たちのストーリーをお届けして、たくさんの人を勇気づけること。それはフィリピンの音楽シーンにとっても、東南アジアのアーティスト全体にとっても良いことだと思います。東南アジアのアーティストの活動を、もっと世界に知ってもらいたいです。
ジョシュ:他の真似ではない自分たちらしさ──フィリピンらしさをしっかり表現したいし、それが僕ららしく世界に爪痕を残す方法だと思っています。SB19の曲を聴いたら「あ、これはフィリピン・サウンドだ! SB19だ! P-POPだ!」と認識されるようになりたいです。
─P-POPを背負う存在として多くの期待を受けるSB19ですが、その期待をプレッシャーに感じることもありますか?
ケン:期待はもちろん僕らのモチベーションにもなっていますが、同時にプレッシャーでもあります。僕らはグローバルシーンに挑戦しようと大きな一歩を踏み出したけど、それほど大きなことを成し遂げるのは、簡単じゃないとわかっているから。でもフィリピンの他のアーティストや新人アーティストに、道を示せる存在になりたいです。

ケン
─P-POPの認知度もかなり高まってきましたが、SB19から見て、今のP-POPシーンならではの面白さはどこにありますか?
パブロ:P-POPは本当にワクワクする存在です。近年の面白さは、ひとつのサウンドやイメージに縛られておらず、様々なコンセプト、色、ストーリーがあることだと思います。フィリピンは7000以上の島で成り立っているので、使われる言語も様々な種類があるんです。主な言語はフィリピン語、タガログ語、英語ですが、それ以外にもビサヤ語など様々な島の少数言語があります。だからフィリピンアーティストは1曲にいろんな言語を落とし込んでいて、それがすごくユニークなんですよね。P-POPというフォーマット以上に、皆さんにフィリピン人がどんな風に作品を作り上げていくのか、世界観をどう作り上げていくのかをお見せしたいです。僕らもメンバーと8年も一緒に活動しているけど、違う島の出身のメンバーの新しい面を知って、驚くことが未だにあるんです。異なるバックグラウンドのメンバーが集まって1つになり、自分たちの良さを表現し合う。それがP-POPのユニークさに繋がっているんだと思います。
─例えば最近は、どんな驚きがありましたか?
パブロ:やはり顕著に出るのは単語ですね。同じ単語なのに意味が違うものがあったりするんですよ。例えばランガムはタガログ語でアリという意味なのですが、ビサヤ語では鳥を意味するんです。「え? 響きは同じなのに意味は違うの?」と、今でも新鮮で驚きますね。
─フィリピンの若いアーティストたちの中には、SB19を見て音楽を始めた世代も増えていると思います。そんな後輩たちに深い愛情を注いでいることも伝わってきますが、今注目すべきフィリピンの若手アーティストがいたら教えてください。
パブロ:身内びいきに聞こえてしまうと思いますが……僕らの1Z Entertainmentから、XONARAという7人組ガールズグループが5月にデビューしました。SB19と同じトレーニングを受けてきた彼女たちは、自分たちで楽曲制作をし、振付も手がけています。まさに彼女たちは様々な出身地からメンバーが集まっているので、フィリピン人が彼女たちの曲を聴くと、1曲にいろんな言語が混ざっていてびっくりすると思います。すごく有望な子たちです! ……まあ、僕はバイアスがかかっていると思いますが(笑)。
BE:FIRSTとの共演秘話、サマソニの展望
─台湾のJOLINや日本のBE:FIRSTなどアジアのアーティストとのコラボが目立ちますが、P-POPのみならず、アジア圏の音楽シーン全体を先導して盛り上げていきたいという意識はありますか?
ステル:もちろん! フィリピン人はすごく才能豊かだし、僕たちは自分たちのスキルを最良の方法で表現したいと思っているので、海外アーティストたちとのコラボには大きな意味があると思っています。グローバル進出に向けても、SB19の露出を増やす機会になりますし。僕らだけでなく、他のフィリピンアーティストにもこういう機会が巡ってきてほしい。今こそ僕らフィリピン出身のアーティストの才能が、世界的にもっと知られるべきだと思っています。
JOLINとのコラボ曲「Emoji」
─今後も日本のアーティストとのコラボは期待できそうですか?
ステル:はい、またそういう機会が巡ってくることを願っています! 日本以外にも欧米のアーティストやインドのアーティストなど、様々な国や地域のアーティストとコラボすることによって、SB19の名前を世界中に広げたいと思っています。
─ちなみに、最近好きな日本のアーティストは?
ジャスティン:ONE OK ROCKを聴いているメンバーは多いですね。もし彼らとコラボできたらすごく面白いと思います。なにせ彼らはバンドで、僕らはダンス&ボーカルグループ。もしコラボしたらいったいどんな曲、どんなパフォーマンスになるのか……考えただけでワクワクします。
─BE:FIRSTとはコラボ楽曲「Toyfriend」をリリースし、日本とフィリピンのイベントで一緒にステージに立ち、パフォーマンスを披露しましたね。
パブロ:BE:FIRSTは本当に素晴らしいグループです。日本のアーティストと初のコラボだったので、僕は最初、すごく緊張していたんです。「Toyfriend」のダンス練習でBE:FIRSTと初めて会った時、はじめはすごくぎこちなかったけど、数分後にはすぐ、SB19の仲間内で話しているような感覚になりました。会った瞬間からジョークを投げかけてくれるなど、彼らはかなり個性的で面白いけど、責任感があってプロ意識が高く、一緒に仕事がしやすかったですね。特にLEOはおしゃべりでした(笑)。パフォーマンス面では、動きにキレがあってエネルギッシュで、ハードなトレーニングを積んでいることがよくわかりました。そして──僕はアニメソングなど日本語の楽曲が大好きだから、これまた贔屓目かもしれませんが──日本語の歌が本当に美しいし、パフォーマンスに自分らしさを入れているのがすごく良いです。嘘偽りなく、等身大の彼らなんです。そんな彼らの姿は、SB19の姿と重なります。
ジョシュ:パブロが言うように、SB19とBE:FIRSTは共通点が多いと思います。あまり休んだりしないタイプで、いつも仕事や成長について考えている。彼らとは「どんなステージに立ちたいか」なども話しましたが、本当に努力家で、自分たちの仕事に真剣に向き合っていることがわかりました。一方でちゃんと楽しむことも忘れない。多くの時間を楽しく過ごしましたが、すごく刺激も受けました。
─4月18日にマニラで行われた『Wakas At Simula: The Trilogy Concert Finale』にBE:FIRSTがゲスト出演した際の、印象深かったエピソードを教えてください。
ステル:一緒にご飯を食べる機会があったのですが、フィリピンの伝統料理がずらりと並んでいて、中には僕らでも苦手に感じるほど、かなりディープなフィリピン料理もあったんです。なのにBE:FIRSTは全部美味しそうに食べていました。伝統的な内臓料理もすべてキレイに平らげていてすごく驚いたし、日本人の礼儀正しさを感じましたね。最初に日本で会った時におすすめしていたチキンアドボはもちろん、パブロのお母さんが作るシニガンもすごく気に入ってくれて、追加でライスも頼んで(笑)。本当に忘れられない思い出です。その夜はずっとBE:FIRSTのみんなが「あ、うまい! 美味しいです!」と絶賛していました。また一緒にご飯に行きたいですし、彼らのお勧めの日本食も試してみたいです。
─SB19は情熱的なライブパフォーマンスに定評があります。サマーソニックは日本最大級の音楽フェスですが、当日はどんなステージを見せたいですか?
ジャスティン:一番大事なのは、お客さんにパフォーマンスを楽しんでもらうことです。さらに、僕たちを初めて観るお客さんもいるので、SB19の存在を新たに知ってもらえるきっかけとして大事にしたいですね。彼らの興味を引くような、ユニークでパワフルなパフォーマンスを披露したい。SB19とP-POPに興味を持ってもらいたいですから。
─SB19を初めて観る人に一番注目してほしいポイントは?
ステル:まずはフィリピン人の才能を、実際に観て感じてほしいです。そして僕らのパフォーマンスの熱量も感じてもらいたい。僕らは準備万端ですよ。ステージに立つのはSB19だけだけど、フィリピンを背負って立つぐらいの気持ちでいます。
ジョシュ:海外のステージに立つたび、フィリピンを代表していることを誇りに思います。僕らはそうした瞬間をずっと夢見て、自分たちの好きなことをやり続けてきました。緊張したり、考えすぎたりすることもあるのですが、自分たちが楽しんで、さらに見に来てくれている人たちも楽しめるような舞台にしたいです。
ステル:サマーソニックでのパフォーマンスをとても楽しみにしていますし、A'TINにお会いできるのもとても楽しみです! SB19をたまに聴いていた方たちも、これを機会にA'TINになってくれたら嬉しいです。そして今後はサマーソニック以外の日本のフェスにも出演してみたいですね。
─サマーソニックでは同日にBE:FIRSTも出演するので、再共演への期待の声も多く聞こえてきます。もし自由にコラボができるとしたら、どんなことをやってみたいですか?
ケン:実はBE:FIRSTと、「すべて日本語歌詞のコラボ曲を作るのはどうだろう?」と話していたんですよ。実現できたら最高だし、日本のファンにも、フィリピンのファンにとっても面白いと思います。
ステル:必ず実現させたいです! そのために、もっと日本語を勉強します。
─楽しみです。そして、来日時にはBE:FIRSTと一緒に美味しい日本食を食べないといけないですね。
ステル:はい。BE:FIRSTがおいしそうなラーメン屋さんをたくさん勧めてくれるので、食べに行くのを楽しみにしています!
─7月には、アメリカ・シカゴで行われるロラパルーザへ、フィリピンアーティストとして初出演します[日本時間7月31日(金)早朝に出演]。Allianz Stageでの1時間のステージという大舞台ですが、意気込みを教えてください。
パブロ:ロラパルーザに招待されるなんて、いまだに信じられない気持ちです! 相当大きなステージなので、僕らがフィリピンアーティストとして初めてそこに立つことの重みをしっかりと感じています。プレッシャーはすごくあるけど、良いプレッシャーですね。あのステージで演奏できることは、自分たちだけの次元に留まらない意味があると感じます。感謝の気持ちでいっぱいでワクワクしているし、緊張もあって。ロラパルーザに参加される方々には、SB19が何者なのか、どこから来たかをしっかりと見せたい。SB19にとっての節目というだけでなく、フィリピンの音楽全体にとって重要な、お祝いのような瞬間になると思います。
Photography by Louis Duran, Gaffer: JB Regala, Camera Assist: Jaybert Rima, Editor: EJ Navarro, Lana Forbes
Details & Styling by Iji Montalbo, Base Jackets by Francis Libiran, Head Associate Stylist: Heroshi Sera Jose, Styling Team: John Renz Abadin, Emeric Vega, Mark Aldrin Zureta, John Rae Angelo, Dhale Harold, Kyle Maranan, Jasfer Blanco, James Carl Calizo, Rio Cacnio
Head Make Up Artist: Mac Igarta, Assistant Make Up Artist: Angelo Torralba, Rod Rubia, Hailey Salas
Head Hair Stylist: Mark Daniel Familara, Assistant Hair Stylist: Jodi Flong Katalbas, Ciandro Ponce Abellanosa, Jericho Panotes Valenzuela, Miggy Carbonilla
SUMMER SONIC 2026
2026年8月14日(金)・15日(土)・16日(日)
東京会場:ZOZOマリンスタジアム & 幕張メッセ
大阪会場:万博記念公園
※SB19は8月14日(金)大阪会場、15日(土)東京会場に出演
公式サイト:https://www.summersonic.com/
チケット購入:https://www.summersonic.com/tickets/tokyo/

SB19
『Wakas at Simula | ワカス・アット・シムラ』
配信中
【国内盤(完全生産限定盤)】
2026年8月5日(水)リリース
¥4,620(税込)
2枚組CD 歌詞・対訳付
日本盤のみのボーナス・トラック2曲収録
スペシャル36PフォトZINE(雑誌)封入
フォトカード [限定盤ver.](全5種のうち1種ランダム封入)
購入:https://smji.lnk.to/SB19WakasatSimulaJPNCDLimitedAWRRS

ZINE(完全生産限定盤に封入)
【国内盤(通常盤)】
¥3,520(税込) 2枚組CD
歌詞・対訳付
日本盤のみのボーナス・トラック2曲収録
初回仕様:フォトカード [通常盤ver.](全5種のうち1種ランダム封入)
※完全生産限定盤と通常盤のフォトカードのデザインは異なります。
購入:https://smji.lnk.to/SB19WakasatSimulaJPNCDAWRS

SB19ファンミーティング
"I WaS THERE" THANKSGIVING FANMEET 2026
2026年8月18日(火)KT Zepp Yokohama
開場:18:00/開演:19:00
チケット購入:https://eplus.jp/sb19/

