アキの物腰の柔らかさは肉体的な強さが理由?

――このお話を聞いて、より舞台に興味が湧きました。

ぜひ観に来てください。感動してもらえる自信があります。

――ぜひ観に行かせていただきたいです。話は少しそれるのですが、今日インタビューをさせていただいていて、アキさんの物腰の柔らかさに感動しました。本当に強い人の余裕を感じるといいますか。

ホンマですか(笑)?

――そんな大人になれたらカッコいいなと思うのですが、意識されていることはありますか?

意識はないですね。ただ、昔から、結局、人は中身やろと思っています(笑)。服にもあまり興味がなくて、ずっとジャージでいいと思っています。男の人でも、服がかわいいとか、かっこいいとか言うじゃないですか。いや、それよりトレーニングせえと思いますね(笑)。

高校時代は柔道部と空手部に入っていて、柔道着と空手着を大きなバッグに入れていました。朝から空手の早朝練習をして、学校が終わったら柔道の練習をして、それが終わったら夜は空手でまた戦う。ちょっと頭がおかしいというか、スイッチがおかしいんですよね。

格闘技は、死ぬか生きるかの瞬間があるものなので、人生が変わるぐらいのものでもあります。だから、人とは少しスイッチが違うのかもしれません。

自己研鑽していないように見える後輩たちに思うこと

――純粋に強さを追い求めた結果の余裕だったんですね。簡単に習得できるものではなかったです(笑)。後輩にそういった話をされることはありますか?

後輩に背中を見せようという意識もないです。ただ、暇つぶしのようにゲームをしているとか……それも自由でいいですし、もともとそんなことは言わないんですけど、「そんなことしてる暇があったら、もっと自分を磨いたり、ドラマや映画を観たり、本を読んだりして、自分の中にもっと引き出しを増やして磨かないと、この世界ではやっていかれへんで」とは思っています。

「新喜劇の若い子たちを育ててあげてください」と言われることもありますけど、この世界は育てて育つものじゃないと思うんです。(明石家)さんまさんの弟子に入ったら、さんまさんみたいに面白くなるわけではない。全部、センスや努力だと思います。見て盗むしかない。だから、言わないんですけど、心の中では厳しいかもしれません。

僕自身、ずっと格闘技をやっていて、しかも太秦に飛び込んで、厳しさの究極を味わっているのですが、それを後輩に分かってほしいとも思わないし、分からないだろうとも思っています。でも、笑っている目の奥では、「お前、そんなことじゃ半年後や1年後にはどんどん抜かれるぞ」と思っている、ちょっと冷めたところはあります。

――全員が全員というわけにはいかないと思いますが、アキさんの背中を見て、それを感じ取っている人もいるのではないでしょうか。

感じ取れる人は、感じ取ればいいと思います。何回か言ったことはあるんです。例えば、1200人のキャパの会場で、「(観客席の)後ろまで見に行ったか?」と聞くと、誰も見に行っていないことがある。

僕は舞台袖から2階席まで見て、こう見えているんだなと確認します。例えば、「僕じゃないです」と言うセリフがあるとして、小さい劇場なら伝わっても、大きな会場では伝わらないことがあるんです。新喜劇でいうと、舞台上に8人、10人いるわけですから、「僕じゃないです」と言っても、誰が言ったのか分からないことがある。

そこまで分かった上で、劇場を確認して、上(かみ)も下(しも)ももちゃんと計算して絵にしないとあかんで、と。僕はそう思うんですけど、やっぱりなかなか……。でも結局、危機感のある人は自分でちゃんと学習して登ってくるんですよね。

――アキさんから直接このお話を聞けて、気持ちが引き締まりました。では最後に改めて『時が来た』の見どころを教えてください。

主役、準主役、エキストラという立場はありますが、そこは関係なく、全員が熱いです。僕らもそこまで引っ張っていきますが、それを言葉では全く言わないです。僕はずっとニコニコ笑っています。でも、芝居に入ったらスイッチが切り替わる。稽古に入りましょうとなったら、みんな目が変わるんです。

芸人は「ここは本気でいくぞ」というスイッチを持っていて、それを感じた役者さんもピリッとする。無言の圧力みたいなものもありつつ、全員の熱さが伝わってきます。舞台を観に来られた方にもその熱さを感じていただいて、それが皆さんの楽しい明日につながればいいなと思っています。

■プロフィール
アキ
1969年8月22日生まれ。大阪府岸和田市出身。1992年、ケンとお笑いコンビ・水玉れっぷう隊を結成。2014年、吉本新喜劇に入団。2023年、吉本新喜劇の座長に就任する。2022年から2024年に「吉本新喜劇座員総選挙」で3年連続1位を獲得し、2025年には殿堂入りを果たした。