「笑顔で夢ある街づくり」を掲げ地域に貢献 創業119年 前川建設が受け継ぐ理念とAI/DXの挑戦
TOKYO FMグループの「ミュージックバード」が制作し、全国のコミュニティFMで放送中のラジオ番組「デジタル建設ジャーナル」(毎週日曜 15:00~15:55)。建設経営の伴走型AI/DX共創により、全国の中小工事会社の経営課題解決を支援するクラフトバンク株式会社が、全国各地で活躍し、地域を支える建設業の方をゲストにお迎えするインタビュー番組です。建設業界の魅力と可能性を、全国のリスナーへ広く伝えます。

6月28日(日)の放送では、兵庫県を拠点に事業を展開する前川建設株式会社(以下、前川建設)に注目。専務取締役の前川真一郎(まえかわ・しんいちろう)さんと経営企画室長の前川桂恵三(まえかわ・けいぞう)さんをゲストに招き、事業承継の経緯や企業のデジタル活用について話を伺いました。

(左から)パーソナリティのクラフトバンク株式会社 金村剛史、前川建設株式会社 専務取締役 前川真一郎さん、経営企画室長 前川桂恵三さん

◆家業承継と街づくりへの思い

前川建設は、1907年創業、今年で119周年を迎える地域密着型の総合建設会社です。建築を中心に、土木、住宅、リフォーム、不動産、土地活用まで幅広い領域を手がけています。

同社では、土地の選定から建築計画、設計、施工、アフターサービスまでを一貫して提供するワンストップ体制を強みとしています。社員数は約135名で、真一郎さんは「みなさんのニーズにお応えするよう、“笑顔で夢ある街づくり”をスローガンに、地域発展に貢献しようと日々頑張っております」と紹介します。

建築分野では、近年は関西エリアでコンクリート価格の高騰が続いていることもあり、鉄骨工事の比率が高くなっているといいます。なかでも、スーパーマーケットなどの大型店舗の建築案件が多く、そのほかマンション建設にも取り組んでいます。

住宅分野では、「幸木之家(こうぼくのいえ)」という独自ブランドを約10年前に立ち上げました。理想とする住まいのあり方を形にし、顧客へ提案・提供する取り組みを続けています。桂恵三さんは、住宅事業に加え、木造の中大規模建築にも取り組んでいると説明します。

前川建設は、長男である真一郎さんをはじめとする3兄弟が経営の中核を担っています。真一郎さんは、新卒で家業に入るのではなく、まず大手ゼネコンに就職し、建築現場で現場監督としての経験を積みました。入社後4〜5年ほど経った頃から家業への合流を促されていたものの、上司から「何の恩返しもせずに帰るのはだめだ」と言われ、自身が主となるマンション案件を担当したあとに前川建設へ戻ったと振り返ります。

一方、桂恵三さんも大学で土木を学び、卒業後に真一郎さんとは別の大手ゼネコンへ入社しました。ダム建設の現場で測量や法面設計などに携わり、約2年間勤務した後に退職。その後、松下政経塾へ進み、前川建設に加わっています。

松下政経塾へ進んだきっかけは、真一郎さんからの連絡でした。真一郎さんは、テレビ番組で大企業を辞めて政経塾へ進む人物の特集を見たことをきっかけに、桂恵三さんへ情報を伝えたといいます。

当時、九州のダム建設現場に赴任していた桂恵三さんは説明会へ参加。そこで触れた松下幸之助の「無税国家論」や、日本人の価値観・文化に関する考え方に関心を持ったと振り返りました。また、もともと街づくりや公共性のある分野への関心があり、その延長線上で入塾したと明かしました。

◆建設業の可能性を広げるAI/DX戦略

建設業界でも働き方改革や人手不足への対応が進むなか、前川建設では、デジタル技術やICTを現場運営や業務効率化に取り入れています。

建築分野では、施工管理業務の負担軽減を目的に、施工管理アプリを導入。若手を含め基本的に全社員が活用できる体制を整え、業務時間の短縮や情報共有の効率化につなげているといいます。一方、土木分野ではICT建機を継続的に導入し、自社でICT施工を完結できる体制づくりを進めています。もともと前川建設は元請け中心で、重機の直営オペレーション部隊を持つ会社ではありませんでしたが、将来的な活用も見据えて設備投資を進めてきました。

ICT建機導入のきっかけは、真一郎さんが参加した建設業界の会合でした。国土交通省による建設現場の生産性向上や働き方改革を目的とした国家プロジェクト「i-Construction」の開始前にICT施工に触れ、その可能性を感じて試験導入を決意。実際に活用できたことで社内評価も高まり、翌年には購入に踏み切ったといいます。その後も設備導入を継続し、現在の体制につながっています。

背景には、災害時における建設会社としての社会的使命があります。かつては重機の保有が経営事項審査でマイナス評価となる側面もありましたが、制度変更や災害対応の課題を踏まえ、自社で設備を持つ重要性が見直されてきました。真一郎さんは、地域インフラを支える立場として、「設備がないからできません、というのは本来の建設業の役割を果たしているとは言えない」と断言します。

こうした設備投資の考え方は木造建築分野にも通じています。桂恵三さんによると、CLTへの取り組みも、災害時に地域の森林資源を活用し、簡易的でも迅速に建設できる仕組みを見据えたものだといいます。

また、業務支援ではAI活用も始まっています。現在は主にChatGPTを利用し、文書作成のたたき台や情報整理に活用。真一郎さんは、考えや要件を箇条書きにするだけで文案をまとめられるため、専門家に確認を依頼する前段階の効率が上がっていると説明しました。

桂恵三さんは採用業務でもAIを活用し、求人情報の分析や市場調査に役立てていると話します。公開されている求人をもとに、給与設定や制度設計の背景にある意図を仮説検証し、複数の視点から検討するための材料を得ているといいます。真一郎さんは、AI活用によって業界での一般的な考え方や分析手法に触れる機会が増え、「世の中は何を考え、どう動いているのかを逆にAIから学ぶことができる」と語りました。

<番組概要>

番組名:デジタル建設ジャーナル

放送日時:毎週日曜日 15:00~15:55

パーソナリティ:中辻景子・田久保彰太・津吉沙織里・金村剛史(いずれもクラフトバンク株式会社)

番組Webサイト:https://musicbird.jp/cfm/timetable/kensetsu/